Hondaの「乗り味」ってどんな味?どうやって作るの?

「Honda味」の受け継ぎ方

「ソリッド&タイト」「線形性の高さ」は、「Honda味」の特徴。では、この「Honda味」、どのように受け継がれていくのでしょうか。たとえばの話、数値化したり、マニュアルにしたりすることはできないのでしょうか?

「その瞬間、瞬間のことであれば数値化はやっているので不可能ではないです。でも、クルマの運動というのは瞬間のできごとではなく、連続的なもの。そのすべてを数値化することはできません。なので、こればかりは、一緒にクルマに乗り合わせて『感覚』を合わせていくしか方法がないでしょうね」

「たとえば、和田さんが試作車を運転しながら『ゆるいなあ』と言ったとします。どんなステアリング操作で、どのくらいのコーナーを曲がりながらそう感じたのか。事例のひとつひとつを自分の中に蓄積していくことで、和田さんの感覚を自分のものとして身につけていく……言葉とか数字ではなく、『挙動』を受け継いでいくというか……」

まさに「秘伝のタレ」にも似た、職人芸の世界です。クルマに乗ったときの「感覚」という、どこまでも抽象的なものを感じ取り、実際のハードウェアに落とし込んでいく「開発ドライバー」の仕事。いったい、どんな能力が求められるのか、気になります。

「運転が得意な人が乗るかもしれないし、苦手な人が乗るかもしれない。自分の『好み』ではなく、客観的にクルマを判断する能力は絶対に必要です。よく『レーシングドライバーとは違う能力なのか』と聞かれることもありますが、市販車は『速ければいい』というものではありません。車の動き方の過程を感じながら『気持ちよさ』への繋がりをフィーリングを感じるセンサーも求められるという点で、ちょっと違う能力が求められるでしょうね」

「車両評価」をできるようになるには?

運転好き、クルマ好きとして気になるのは、そんな「クルマを感じ取る能力」をどうしたら身につけられるのかという点。Honda車に限らず、レンタカーで借りたクルマや友達のクルマ、仕事で乗るクルマまで、その善し悪しを判断できたら楽しそうですが……?

「社内で評価ドライバーのスキルを判断するときも、テストコースを一定のラップタイムで周回できるか……といった点だけでなく、『ドライバーの操作の仕方』を観察しています。月並みな言葉で申し訳ないのですが、やっぱり『クルマと対話をする』ことに尽きるのではないかと思いますね」

「これもよく言われることですが、ステアリングをゆっくりと、丁寧に操作するというのも、重要なポイントだと思います。あまり速く操作すると、本来感じ取れるはずのことも、感じられなくなってしまいますから。その上で、いろいろなクルマに乗ってみて、自分の中にある『いいクルマ』……というより『こうありたいという想い』との『差』が何なのかを見つめてみる。それが、『車両評価』を楽しむコツではないでしょうか」

「2000年代前半の頃、世界的に『乗り味』がドイツメーカー的な方向に収束していった時期がありました。でも、それから年月が過ぎて、どのメーカーも『いいクルマ』の要件を満たした上で、それぞれの『味』を追求してきています。もちろん、私たちの『Honda味』を気に入っていただけたら最高ですが、クルマを乗り比べるには楽しい時代になってきたと思います。ぜひいろいろと試して、『車両評価』を楽しんでみてください!」

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