S2000 20th Festival

研究所スタッフへの質問コーナー

終日賑わいが絶えなかったのがピットに設置された研究所スタッフへの「質問コーナー」だった。車体開発、シャシー・サスペンション開発、ダイナミック性能開発、トランスミッション開発、エンジン開発、電装開発、エクステリアデザイン開発、インテリアデザイン開発の各コーナーごとに、開発内容の解説ボードが設置されていた。そのボードの前に、担当した開発者が立ち、参加者からの質問を受けるというスタイル。愛するS2000を生み出した開発者と直接話せるのは、オーナーにとってきわめて貴重な機会だろう。

  • 電装開発コーナーの稲川さん。上原さんから「余計な電装品はいらない。軽量化に貢献しろ!」と言われ、開発部品が少なく仕事は楽だったとのこと。

  • 車体開発コーナーの中野さん。オープンボディーで、クローズドボディー並みの高剛性を実現したハイXボーンフレーム骨格をつくり上げた。

  • サスペンション設計コーナー船野さん。初代NSX、S2000、アコードやシビック、HSV 010ベース車、NSX-GTなどのサスペンションを開発。Hondaの走りを支えてきたと言っても過言ではない。現在所有のS2000は3台目。

  • トランスミッション開発コーナー、テストのプロジェクトリーダーを務めた石原さん。初代レジェンド、初代NSX、BEAT、S2000、2代目インテグラTYPE RのMTのテストを行った人物。操る喜びを感じられるMTにするのが信条。

  • エンジン開発コーナーの唐木さん。エンジンをフロント車軸の後ろに置くため、小さく、軽く、強いエンジンにした。世界に誇る性能を実現するだけでなく、末長く愛されるよう品質を大切にして設計を行った。

  • エクステリアデザイン開発コーナーの澤井さん(左)。S2000の開発に弾みをつけたコンセプトモデルSSM(1995年 東京モーターショーに出展)もデザインした人物。

  • 電装開発コーナー川口さん。オープンで雨の中を走っても大丈夫な電装づくりにこだわった。カッパを着て台風の雨の中を走って検証したこともあるという。

  • ダイナミック性能開発コーナーの和田さん。ダイナミック開発のエキスパート。初代NSXのサスペンション開発に参画してから、S2000、2代目NSXとHondaスポーツの走りをつくり上げてきた人物。

  • サスペンション開発コーナーの柿沼さん。S2000をはじめ、初代と2代目のNSX、シビックTYPE Rなどスポーツカーの車両運動性能の開発に携わり続けている。現在のシビックTYPE Rの開発責任者。

  • 研究スタッフへの質問コーナー全景。各パネルは、このイベントの発起人である塚本氏ら研究所スタッフが手作りしたものだ。

イベント参加オーナーの言葉

この記念すべきイベントに参加されたオーナー数名にお話を伺ったのでご紹介したい。みなさん、S2000に惚れ込んだ素晴らしきオーナーだった。

  • 竹内さん 愛知県 2007年型AP2 ムーンロック・メタリック。「中古で5年ほど前に入手しました。父がHonda党で、昔から家にはHonda車しかない環境でした。スポーツカーが好きで、HondaのVTECを積んだFRはこれしかないので、S2000は昔から欲しいと思っていました。エンジンありきのクルマだと思っていたけど、所有してみると、ボディーの曲線美が美しくて惚れ惚れするし、運転しても楽しく、オープンにもなるしで満足しています。今98,000kmで、マウント類など、壊れる前にちょっとずつ変えています」

  • 中島さん 埼玉県 1999年型AP1 ニューフォーミュラレッド。「SSMを見てから発売を待っていました。とにかくHondaさんの50周年記念車で、オープン2シーター、FR、これでもう決めていました。それから20年、今も大切に乗っています。4月のTAFミーティングほか、年に数回、イベントに参加しています。朝早い涼しい時間、オープンで、風を切って走るのが大好きです。S2000、絶対に手放しません」

  • 田口さん 茨城県 2003年型AP1 ライムグリーン・メタリック。「ゲームの『グランツーリスモ2』でこの色があることを知りました。緑がいいと思い、いろいろと探しまわり巡り会うことができました。2013年に購入して今年で6年目。このイベントは、ツイッターで知りました。20年という記念すべき年に、できるなら参加してみたいと思って応募しました。こんなにたくさんの、様々な色のS2000が一同に会している姿はとても感慨深いです。S2000は、もちろん一生ものです。大切にします」

  • 白井さん 茨城県 AP2 ニューインディイエロー・パール。「今年、2019年の6月に買ったばかりです。映画『ワイルドスピード2』のピンクのS2000をかっこいいと思って以来、10年ぐらいずっと欲しいと思っていて、ピンクはないので明るい黄色を買いました。マニュアルは実家のクルマや知り合いのS2000で練習しました。念願のクルマなのでワクワクが止まりません。一生乗り続けます」

  • 高須さん 群馬県 AP2 ベルリナブラック。「小学校の頃から欲しくて、社会人3年目の2015年に、3年間貯めたお金を全部投入して買いました。このクルマを買わないと手に入れられないエンジンですし、シャシーも専用設計で作られているところがやっぱりいいなと思いますね。今では絶対にできない贅沢なつくりだと思います。なのでNSXのようにリフレッシュプランがあるといいですね。最近AP1も購入してサーキット仕様にしています」

  • 滝沢さん 栃木県 AP2 Type Sシンクロシルバー・メタリック。「2018年の秋に購入しました。このクルマが好きだったこともありますが、これから価値が上がっていくと考えられることも購入の決め手になりました。幌が傷んでいたのでハードトップにして、タイヤも新しくしました。とても走りが気持ち良く、所有欲を満たすクルマです。地元の同じS2000乗りとの交流も始まり、これからこういうイベントに参加していきたいです」

参加したパートナーズのみなさん

この20周年イベントを盛り上げるために、7つのパートナーズさんにピットを開放。場所代不要でスペースを自由に使い、S2000オーナーとの交流を楽しんでもらうというスタイルだった。参加されたパートナーズは、Honda Cars野崎、無限、SACLAM、ASM、Honda Style+Honda Cars三重、STUDIO 6 ZERO、Honda Access。パートナーズブースに展示されたパーツを興味深く眺めたり、S2000について語り合っていた。やはりイベントは、こうした出展があると賑やかになる。

  • Honda Cars 野崎は、シビックTYPE Rをメインに扱う販売店。S2000もHondaスポーツのベストハンドリングカーとして扱っている。店長の松本さんは、無限に在職中F1エンジンを設計していた。販売だけでなく高度なメンテナンスを行う技術屋集団。

  • レカロシート専門ショップASM。Hondaの50周年イベントで走行したS2000のプロトタイプの走りを見たことがきっかけになり、デビュー後にすぐ購入。パーツショップASMを創立した。購入したS2000はタイムアタックカーとなり、NA筑波最速の記録を打ち立てた。デモ走行を行ったのはそのマシンだ。

  • チューニングショップSACLAM。元無限の技術者が興したパフォーマンスパーツの開発を中心に行うショップ。当日はS2000の風洞実験モデルを作ったときの型やマスターモデルなど、貴重なものを展示していた。

  • STUDIO 6 ZERO。本田技術研究所に所属していたときはシートなどの開発を担当しており、60歳で退職したとき、さまざまなクルマで自身が作ったシートの表皮が傷んでいるのを見て、何とかしたいと、NSXやBEAT、S2000などのシートを扱う会社を設立したという。

15:30~クロージングセレモニー

たっぷりと2時間の時間をかけた参加オーナーによる体験走行も終了し、あとはクロージングセレモニーを残すのみとなった。ここからは、船橋さんに加え、佐藤ともみさんが司会を務めた。
最初にスタッフとしてこのイベントを支えたオーナー有志のみなさんを紹介し、一年間この日のために準備を重ねたことに対し感謝の意を表した。そして、手弁当で参加されたパートナーズのみなさん、S2000開発チームを紹介し、参加者のコメントを伺い、上原さんの挨拶により解散となった。
好天にも恵まれ、終始和やかな雰囲気のイベントだった。まさに「クルマ好きは集まるだけでも楽しい」を実践したイベントであり、開発者との語らいとサーキットの体験走行などのスペシャルな体験もできた、参加者にとって嬉しいイベントだったのではないだろうか。参加者、スタッフとも、満面の笑顔でツインリンクもてぎをあとにした。

  • 開催を支えたオーナー有志のみなさん。月に一度集まり、どうしたら参加者に喜んでいただけるかを一年間かけて詰め続けたという。

  • 参加者は、スタッフのみなさんに惜しみない拍手を送り、司会の佐藤さんのパワーに押されながらもイベントに参加した喜びを笑顔で語った。

  • このイベントをやろうと言い出したのは、研究所の塚本さんだった。20周年は一度しかないし、「大変だろうけどやりたい」との意思を持ち、多くの協力のもと無事開催し終えることができた。

  • 最後は、開発責任者を務めた上原さんの挨拶。スタッフの労をねぎらい、またみなさんとどこかでお会いできるのを楽しみにしていますと締めくくった。

イベントを企画した本田技術研究所の塚本さんは、「今回のイベントの主役は、開発者ではなく、S2000であり、それにお乗りいただいているオーナーのみなさんです。そのみなさんに一日Hondaスポーツを楽しみ、喜んでいただけることだけを考えて計画してきました。S2000は、広く参加者を募る大きなイベントがこれまでなかったので、一度しかない20周年に集まりたいと思ったのです。まだ現役の開発者もいますし、オーナーのみなさんと直接触れ合えることで、刺激をいただくことにもつなげたいという思いもありました」と、今回のイベント開催の意図を語った。そうしたスタッフの思いが実り、和やかな雰囲気のとてもいいイベントだったと感じた。今後、25周年、30周年と、S2000オーナーの熱き思いは続いていくことだろう。

文中・映像内にある「ツインリンクもてぎ」は当時の名称。現在は「モビリティリゾートもてぎ」です。

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