
PRELUDEは、1978年の初代から1996年の5代目まで、時代を先駆けるスペシャリティクーペとして進化し続けてきました。そして2025年、新たなステージへの序曲を奏でようとしています。
そこでSPORTS DRIVE WEBでは、ホンダコレクションホールの協力のもと、テストコースを用いて歴代PRELUDEの走行を行い、その模様を動画で記録することに挑みました。加えてこのページでは、歴代モデルについて紹介します。
CVCCエンジンを搭載してデビューした初代 1978年
自動車の普及に伴い、1970年に米国で大気浄化法が改定され、いわゆる“マスキー法”が発効されました。そのクリアすべき排出ガス浄化の基準は高く、世界の自動車メーカーが達成不可能と主張するなか、HondaはCVCCエンジンを開発して世界で初めて基準をクリアしたのです。
CVCCエンジンは、1973年にファミリーカーであるCIVICに搭載されましたが、時代はよりパーソナルなクルマを求め始めていました。そこでHondaは、「個性化時代の要請に応えて、スポーティータイプ小型乗用車『ホンダ プレリュード』を発売する」とし、1978年にCVCCエンジンを搭載して初代PRELUDEを登場させました。
国産車初の電動式サンルーフを標準装備し、ワイド&ローでロングノーズショートデッキのデザインを採用した2ドア・スペシャリティーカーです。この初代で、独立したトランクルームを持つ2ドアクーペというPRELUDEのスタイルが誕生しました。
インテリアは、フロント席に十分な空間を確保してパーソナルユースを重視したデザインとし、スピードメーターとタコメーターを同軸上に配置した「集中ターゲットメーター」を搭載するなど、先進かつ快適な居住空間を生み出しました。
ボディーでは、Honda独自のサイドパネル一体式モノコックボディーでサブフレームを一体化し、車両重量890kg〜915kgと軽量・高剛性を実現。直列4気筒のCVCCエンジンを横置きに搭載し、最高出力90馬力(MT車)を発生させ前輪を駆動しました。
ハンドリングはきわめて軽快かつスポーティーでありながら、快適な乗り心地も実現。スペシャリティークーペとして世界で高い人気を獲得しました。
日本では、Honda第1期F1で1勝を挙げた元F1チャンピオンのジョン・サーティース氏がCMに登場し、初代PRELUDEをドライブ。「車は自らの主張そのものであるべきだ」と語っていました。-
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初代PRELUDE主な諸元
- 全長×全幅×全高
- 4.090×1.635×1.290 m
- ホイールベース
- 2.320 m
- トレッド
- 前:1.400/後:1.410 m
- 重量
- 890〜915 kg
- 乗車定員
- 4名
- エンジン
- CVCC 水冷直列4気筒OHC 1,750cc
- 圧縮比
- 8.0
- 最高出力
- 90PS/5,300rpm(MT車)
- 最大トルク
- 13.5kg・m/3,000rpm
- サスペンション方式
- マクファーソン・ストラット方式独立懸架(スプリングオフセット方式)
Honda独自の先進技術を搭載し、よりエレガントになった2代目 1982年
日本では1970年代後半からスーパーカーブームが沸き起こりました。そのようななか、HondaがF1に復帰参戦する前年、1982年に登場させたPRELUDEは、フロントフードの高さを“スーパースポーツ並みに低くする”ことを社内の目標としました。
フロントにエンジンのないミッドシップスポーツより低いボンネットを、フロントエンジン・フロントドライブ(FF)のクルマで達成するのは難題でした。エンジン高を低くしても、走りのために採用にこだわったフロントダブルウイッシュボーンサスペンションが、開発当初はどうしても収まらなかったのです。
担当エンジニアは、寝ても覚めてもサスペンションのことが頭から離れず、フロントサスペンションのレイアウトを考え続けました。そして苦難の末、ワイド・スパンレイアウトとツイステッド・アッパーアームという独自設計を生み出したのです。このレイアウトでコンパクト化に成功し、FFでは他に例を見ないほど低いボンネットの中にダブルウイッシュボーンサスペンションを収め、リトラクタブルヘッドライトを採用した美しいプロポーションとともに、俊敏な操縦性と優れた高速安定性を両立しました。
さらに2代目PRELUDEは、その他にも数々の先進技術を採用しました。エンジンは、全域でスムーズな吹き上がりを発揮するCVCCデュアルキャブ12バルブ直列4気筒エンジンを搭載。排気量1,829ccで125馬力の高出力を発生させながら、13.0km/Lの優れた燃費性能を達成しました。
また、先進のエレクトロニクス技術を駆使してHondaが独自開発した日本初の4輪アンチロックブレーキを採用するなど、独創的なメカニズムでFFスペシャリティカーにふさわしい魅力を追求しました。インテリアは、機能的にレイアウトされたインストルメントパネルやホールド性に優れたフル・バケットシート、小径太グリップのステアリングホイールなどにより、スポーティーな走りの喜びを追求しました。前年の1981年、 “トールボーイ”として人気を得たCITYに続き、2代目PRELUDEは、いわゆる“デートカー”として若者の人気を獲得しました。-
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2代目PRELUDE主な諸元
- 全長×全幅×全高
- 4.295×1.690×1.295 m
- ホイールベース
- 2.450 m
- トレッド
- 前/後:1.470 m
- 重量
- 955〜1,000 kg
- 乗車定員
- 4名
- エンジン
- CVCC 水冷直列4気筒OHC 1,829cc
- 圧縮比
- 9.4
- 最高出力
- 125PS/5,800rpm(MT車)
- 最大トルク
- 15.6kg・m/4,000rpm
- サスペンション方式
- 前:ダブルウイッシュボーン式
後:マクファーソン・ストラット式(スプリングオフセット方式)
世界初 舵角応動タイプの4輪操舵システムを搭載した3代目 1987年
日本経済が未曾有の活況へと向かうなか、Hondaは1987年に第2期F1でダブルタイトルを獲得。その同じ年に3代目PRELUDEを誕生させました。ワイド&ローのフォルムをさらに突き詰め、全長・全幅を拡大した超偏平エアロスタイルです。また、エンジンの徹底したコンパクト化と18度後傾させて搭載するレイアウトの採用により、先代モデルと比較して30mmも低い、超低ボンネットを実現。これによりエレガントなデザインとしました。
エンジンは全車2.0L化。Siタイプは、DOHC16バルブとし電子制御燃料噴射装置PGM-FIを採用。エンジンレイアウトにより、低フロントフード高を実現するだけでなく、抵抗の少ないストレートな吸・排気系設計を実現し、145馬力と大幅なパワーアップとレスポンス向上を実現しました。
また、高次元のハンドリング性能を実現するため、ステアリングを操作する量に応じて、後輪を前輪と同方向及び前輪と逆方向に操舵する舵角応動タイプのホンダ4輪操舵システム、ホンダ4WSを世界初搭載。4輪ダブルウイッシュボーンサスペンションとともに、優れた操縦性能とフットワーク特性を生み出しました。真っ赤なPRELUDEの前輪と後輪が同時に動くところをリアから捉えたTVCMを放映し、話題を獲得しました。-
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3代目PRELUDE主な諸元
- 全長×全幅×全高
- 4.460×1.695×1.295 m
- ホイールベース
- 2.565 m
- トレッド
- 前:1.480/後:1.470 m
- 重量
- 1,050〜1,160 kg
- 乗車定員
- 4名
- エンジン
- 水冷直列4気筒SOHC/DOHC 1,958cc
- 圧縮比
- 9.4(DOHC車)
- 最高出力
- 145PS/6,000rpm(DOHC車)
- 最大トルク
- 17.8kg・m/4,500rpm(DOHC車)
- サスペンション方式
- 前/後:ダブルウイッシュボーン式
3ナンバーの大胆なスポーツクーペスタイルを採用した4代目 1991年
Hondaは、NSXを誕生させ、世界にスーパースポーツの新価値を提案した翌1991年、4代目 PRELUDEを登場させました。1991年は、フラッグシップクーペともいえるLEGENDクーペや、軽自動車初の2シーター・ミッドシップオープンカーのBEAT、6代目CIVICを登場させた年でした。そのようななかPRELUDEは、スペシャリティカーとは何かを原点から考え、これからの時代をリードするクルマとして独自の魅力を際立たせることに挑んだのです。
エクステリアは、生きるものの躍動感や走る姿をイメージした“生体感”をテーマにデザインし、よりワイド&ショートで個性的なスタイリングを創造。先代モデルよりワイドで低く短くしたボディーは、引き締まったキャビンとあいまって、迫力ある台形フォルムを実現しました。
インテリアは、前席優先と割り切った2シーター感覚のスポーティーなインテリアとし、サイドに回り込むラップラウンド形状と、ワイドに広がるバイザーレスタイプのメーターパネルの採用により、未来的な非日常感を演出しました。
エンジンは、新開発の2.2L DOHCで、最高出力200馬力のDOHC VTEC高性能スポーツエンジンと160馬力のDOHC16バルブエンジンの 2タイプを設定。低振動、静粛性に優れた2次バランサー機構や幅広い領域で高い出力特性を発揮する可変吸気システムを採用し、走りの喜びを追求しました。
サスペンションは、しなやかでスポーティーな乗り心地と高い限界性能を実現した新設計4輪ダブルウイッシュボーンサスペンションとし、新開発の電子制御電動式4輪操舵システムハイパー4WSを採用。PRELUDE独自の魅力を研ぎ澄ましました。CMでは、当時のF1ドライバー、アイルトン・セナ選手に「気持ちよく走り続けること、それこそがゴールだと思う」と語ってもらいました。-
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4代目PRELUDE主な諸元
- 全長×全幅×全高
- 4.440×1.765×1.290 m
- ホイールベース
- 2.550 m
- トレッド
- 前:1.525/後:1.515 m
- 重量
- 1,210〜1,340 kg
- 乗車定員
- 4名
- エンジン
- 水冷直列4気筒DOHC/VTEC 2,156cc
- 圧縮比
- 10.6(Si DOHC)
- 最高出力
- 200PS/6,800rpm(Si VTEC)
- 最大トルク
- 22.3kg・m/5,500rpm(Si VTEC)
- サスペンション方式
- 前/後:ダブルウイッシュボーン式
5代目は先進テクノロジーを結集したスペシャリティクーペ 1996年
1996年Hondaは、スペシャリティーカーとして独自のポジションを築いてきたPRELUDEを、ダイナミックでソリッドなノッチバッククーペスタイルを採用して5代目へと進化させました。
この新しいスタイルのPRELUDEには、マニュアルシフト感覚のAT、Sマチック(シーケンシャル・スポーツシフト)や、世界に先駆け導入し熟成を重ねてきた4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションや4WSシステムをさらに進化させて搭載しました。
高性能グレードのType Sは、自然吸気の2次バランサー採用エンジンとして初のリッター当たり100馬力となる、220馬力の高出力を達成した2.2L DOHC VTECの専用エンジンを搭載。このエンジンは、11.0の高圧縮比を達成して燃焼効率を向上させたほか、シリンダーヘッド吸気ポートの手動研磨をはじめとする吸気抵抗低減技術や、エキゾーストマニホールド集合部のパイプ形状真円化など、同世代のINTEGRA TYPE Rなどで採用した高性能化技術を採用しました。
また、Type S専用の画期的なシステムとして、左右輪へ駆動力配分を行うトルクベクタリングにより、優れた旋回性能を実現する世界初のアクティブ・トルク・トランスファー・システム「ATTS」を採用。さらに、旋回時に安定したブレーキ性能を実現するType S専用のアクティブ・コントロールABSなどの先進テクノロジーにより、優れた快適性を持ちながらも極めて高い運動性能を実現しました。5代目PRELUDEにはじまったトルクベクタリングの考え方は、2004年に登場するLEGENDの「四輪駆動力自在制御システム SH-AWD」を経て、2016年、2代目NSXの「3モーターハイブリッドシステム SPORT HYBRID SH-AWD」へ発展していきました。-
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5代目PRELUDE主な諸元
- 全長×全幅×全高
- 4.520×1.750×1.315 m
- ホイールベース
- 2.585 m
- トレッド
- 前:1.525/後:1.515 m
- 重量
- 1,220〜1,330 kg
- 乗車定員
- 4名
- エンジン
- 水冷直列4気筒DOHC VTEC 2,156cc(Type S)
- 圧縮比
- 11.0(Type S 5速マニュアル 2WS)
- 最高出力
- 220PS/7,200rpm(Type S 5速マニュアル 2WS)
- 最大トルク
- 22.5kg・m/6,500rpm(Type S 5速マニュアル 2WS)
- サスペンション方式
- 前/後:ダブルウイッシュボーン式