
学校法人ホンダ学園 創立50周年記念チャレンジ企画「ラリー・モンテカルロ・ヒストリック」初代CIVICで世界に挑む!ラリー・モンテカルロ・
ヒストリックに挑戦する「ホンダ学園」#CIVIC #イベント
#メカニズム #RS2026.1.29
学校法人ホンダ学園(以下ホンダ学園)とは、Hondaが母体となる自動車整備士や研究・開発エンジニアを育成する自動車大学校です。1976年の創立で、2026年に50周年を迎え、その記念行事のひとつとして、歴史ある「ラリー・モンテカルロ・ヒストリック」への挑戦を行います。
「技術の伝承」とHondaとしての「挑戦文化の醸成」を目的とし、ボディーが錆びて穴が空いたような状態の2台の初代CIVIC RS(1974-75年)を学生たちがレストア。レーシングドライバーの佐藤琢󠄀磨選手もドライバーに迎えて、2026年2月1日から7日間、欧州の山岳地帯や都市を駆け抜けます。
ラリー・モンテカルロ・ヒストリックとは
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ラリー・モンテカルロ・ヒストリック(以下モンテカルロ)とは、1911年から続く伝統あるラリー・モンテカルロのヒストリックカー版で、1997年から開催されています。速さを競うのではなく、定められた時間内で平均速度を維持する「レギュラリティラリー」形式での開催。参加できる車両は、1911年〜1986年1月までの「ラリー・モンテカルロ」に参加実績のある車種または同等仕様のヒストリックカーで、Honda車では初代CIVICが唯一該当し、ロールケージや4点式以上のシートベルト、消火器を搭載するものの、当時の車両の仕様と整備状態を保持していることが条件となります。

錆びて穴の空いたボディーの修復から始まったレストア
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参戦するのは2台の初代CIVIC RS。オリジナルボディーカラーであるサンセットオレンジをイメージした「サンセット号」と、マドリードレッドをイメージした「マドリード号」です。
サンセット号は、もともと東京大学とホンダ学園のコラボレーションプロジェクトで2018年にモンテカルロに挑んだ車両。マドリード号は、ホンダ学園の企画で2017年にニュージーランドのタルガ・ロトルア・ラリーに出場した車両。出場から年月を経て、ボディーはあちこち錆びており、錆を落とすと穴が空いてしまうような状態でした。
そこで、エンジン、サスペンション、ワイヤーハーネスやメーター類などの電装部品、ガラスも含めてすべて取り外し、各部品を分解・整備するフルレストアを行いました。レストアはすべて学生の手で行われ、授業を終えた午後4時40分ごろから作業を開始。夜に及ぶことや休日も利用して作業を行いました。初代CIVIC RSはおよそ50年前のクルマ。燃料供給装置のキャブレター、サスペンションやブレーキ、電装品類など、現在のクルマにはそもそも存在しないパーツや存在しても異なる構造など、学生にとってレストア作業は未知との遭遇の連続でした。どのように分解し、不具合を見つけて直すのか。教員のアドバイスを受け、模索しながらの作業です。
当然ながら、使えない状態のため交換しなければならない部品もあります。すでに生産が終了している部品がほとんどの状態でしたがインターネットで世界中を探し回り部品を調達。 どうしても見つからない部品はオリジナルでつくり上げてカバーしました。レストアに加え、レースで闘うために必要なラリーコンピュータ※は、2018年にともに挑んだ東京大学を訪ねてノウハウを学び、学生自らの手でつくり上げたものを搭載しています。
Hondaでの技術開発やメンテナンスサービス、さらにF1で世界を転戦するなど、幅広い現場経験を持つ教員たちは、自らの実務経験をもとにアドバイスをするだけです。2台のCIVIC RSは、学生のチャレンジングスピリットとホンダ学園で磨いた技術で復活を遂げたのです。まさに、現場で問題に対処し工夫する能力を育む貴重な実践経験となりました。※ 競技中、走行距離・平均速度・目的地までの到着時間などの情報をベースに、走行速度を計算する装置
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ボディーのみの状態にしてサビを削り落とし、修復箇所を洗い出していく。

完全に錆びていなくても、ハンマーで叩いて弱い部分を削り取って修復。

ボディーの素性を確認するために、サンドペーパーをかけ塗装を剥がす。

ひと通りの修復を終えつつあるサンセット号のボディー。

同じく修復を終えつつあるマドリード号のボディー。

エンジン、トランスミッションもすべて分解して整備。

分解したエンジン。ブロックなどが綺麗に磨き上げられている。

学園の設備であるNCフライス盤を利用してエンジンヘッドを面研。

混合気や燃焼ガスの流れを良くするために、手作業で吸排気ポートを研磨。

いまのエンジンにはない、燃料供給装置であるキャブレター。当時はキャブレターが複数付いていることが高性能車の証でした。 RSは二連装の通称「ツインキャブ」。

燃料タンクも取り出して機能チェックを行い清掃。

サスペンションもパーツごとに分け、状態確認と研磨などを行う。

メーターも取り外して機能を確認。ていねいに清掃も行う。

電線の断線、ショートの確認。車体の各部でどのように配線されているかも記録。
北海道ラリーキャラバンと佐藤選手参加の鷹栖テスト走行
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車両のレストアだけでなく、日本国内での車検取得、FIAからの車両改造の承認、主催者であるモナコ自動車クラブ(Automobile Club de Monaco、ACM)へのエントリー、車両を輸送する船便の手配から宿の手配まですべて学生が行います。2025年4月からレストアをスタートさせ、10月には車両を船に乗せなければなりません。
なんとかレストアを終えて車検を取った2台を待っていたのは、「北海道ラリーキャラバン」という学園内のイベント。埼玉県のホンダ学園を出発し北海道まで走り(八戸〜苫小牧はフェリー)、再び学園に戻るコースを走行します。ラリー本番を模擬するため、カーナビゲーションやスマートフォンを使用せず、コース上の交差点や目印を記載したコマ図に従って、指定された平均速度を維持した上で時間内に走り切るレギュラリティラリー形式で走行しました。コマ図は、教員が実際の行程を自身のバイクで走行して作成したオリジナルのもの。この取り組みだけでも並々ならぬ情熱を感じます。北海道ではHonda鷹栖プルービンググラウンドに向かい実走テストを行いました。ステアリングを握ったのは、実際にラリーに参戦するドライバー。マドリード号は、ホンダ学園関東校の校長である勝田啓輔さん、サンセット号は、このチャレンジプロジェクトに賛同したレーシングドライバーの佐藤琢󠄀磨さんです。
佐藤さんはもともとHondaの技術を継承するホンダ学園に思い入れがあり、入学式などにメッセージを送り、講演で自身の挑戦の経験を学生たちに語るなど縁のある存在です。今回のモンテカルロへの挑戦にあたり、プロドライバーにもステアリングを握ってもらいたいというホンダ学園の思いに、学生たちを知る佐藤さんが、困難に挑む学生のチャレンジングスピリットに共感し、世界で活躍できるエンジニアの育成にもつながると考えドライバーを快諾しました。鷹栖での実走テストでは、ヨーロッパの郊外路を模したテストコースであるEU郊外路を走行。事前にホンダ学園に足を運んでシート合わせは済ませているものの、実際に走行してステアリングを操り、ペダルを踏んだ感覚を反映してドライビングポジションを微調整。そして、高速域で走行してもクルマに不具合が出ないか、競技を想定した速度で走行してのラリーコンピューターの操作性の確認、ロングランをしたときの車両状態の変化など、さまざまな確認を行いました。
うっとりするようなエンジン音を響かせて走行した佐藤さんは、予想以上に扱いやすく快適な乗り味に感激。走行中にブレーキ踏力が変化する課題を残しながらも順調にテストを終えました。 -

鷹栖プルービンググラウンドのEU郊外路を快走するサンセット号とマドリード号。

まるで欧州の郊外路を走っているような雰囲気。直列4気筒Hondaエンジンの快音がこだまする。

本番さながらのブルーシートを敷いての整備。シートを敷くのは、パーツが落ちても見つけやすくするためと地面を汚すのを防ぐため。

佐藤選手のコ・ドライバーを務める学生自らラリーコンピュータを製作した。

ホンダ学園製ラリーコンピュータ。学生がこのシステムをコントロールしてドライバーを導く。

右がマドリード号のステアリングを握る勝田校長。学園からここまでドライブしてきた感触を佐藤選手に伝える。

テキパキと作業を行うマドリード号担当の学生たち。快晴の空の下、ひたむきに取り組む。

教員のアドバイスをすぐにメモに取り記録するサンセット号のリーダー。真剣な表情だ。

この鷹栖でのテストのあと、マドリード号は船便で送るためまもなくの出発となる。あとは本番を残すのみ。

エンジンもキャブレターもピカピカ。配線も美しい。テスト走行を経て、細かな調整を行っていく。

テストも終盤となり、学生の表情がさらに真剣味を帯び始めた。最後まで手を緩めない。

目指すはゴールの瞬間の笑顔。このあと、学生たちの“Hondaスピリット”が海を渡る。
まさに「人間」を育てるチャレンジ
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参加した学生たちは、はじめ「本当にやるのか、できるのか」というような不安を感じながら取り組んでいましたが、クルマ一台をバラバラにしてつくり上げ、ラリー参加という目標に向かってプロジェクトを進める中で、自発的に課題を見出し果敢に取り組む姿勢が醸成されました。
目標を定め、課題と時間に追われながらそこに向かってひた走る経験。自身がメンバーの役に立つことができたという人としての根源的な喜びを感じ、どんどん人間的に成長していく学生たちを見守っていた教員は、「みんな当初とはまったく別人になった」と語っていました。
学生たちも、「自分でレストアできるとは思っていなかったし、こんなに一生懸命になるとは思わなかった」ということを異口同音に語りました。経験が人を育てる。
Hondaは、ホンダ学園の創立にあたり「技術だけでなく、世界に歓迎される 人間を作りたい」との建学の精神を掲げました。今回のモンテカルロチャレンジは、まさにその精神に則っています。
このプロジェクトに熱く共感した佐藤さんは、ラリー競技スタートの10日ほど前から行われるコースの下見とペースノートの作成を行う、通称“レッキ”から参加。走るからには、もちろん「あれ」を狙っているようです。 