いいサスって何?ダブルウイッシュボーンがいいの?トーションビームはダメなの?Vol.2「振動吸収」の深い世界
スプリングの位置がダンパーの動きを左右する?
ちょっと大きいパーツの話に戻りますが、このダンパーとスプリング、よく見てみると何か気づくことはないですか?
……あれ?バネがダンパーの中心からズレてないですか?これで正しいんですか?
あたりです。これで正しいんです。「サイドフォースキャンセルスプリング」っていいます。
ダンパーの中心と、スプリングの中心がズレています!
素人考えだと、中心が揃っているほうがよさそうにも思えますが……これはどういう?
実際の足回りを見てもわかりにくいので、どういう方向の力が入っているのかを図で紹介しますね。
実はクルマにタイヤをつけて地面に置くだけでも、タイヤからサスペンションに向かって、上下の力が加わります。
なんだか専門的ですね。大丈夫かな、理解できるでしょうか……。
なるべく簡単に説明してみたいと思います。いろいろ部品が付いているように見えますが、ここでは大きく分けて2つ、緑の「ダンパー+ナックル」と青の「アーム」にシンプル化してみます。
シンプルになりました。
スプリングはダンパーと同軸に置かれています。タイヤに上下に加わる力によって、緑の部品には点線の向きにしなるような力、モーメントが加わっているのが分かりますか?
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なるほど、そうですね。なんとなくわかります。
こうなるとダンパーの中でどういうことが起こるのかというのを絵にしてみますね。「ダンパーロッド」「ロッドガイド」「ピストン」と、ダンパー内部のパーツに横方向の力が発生し、この力によってフリクションが大きくなります。
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フリクション……摩擦の力ですね。
そうです。フリクションが大きすぎると、ダンパーがスムーズに動かない印象になってしまいます。
ダンパーの中でそんなことが起こるなんて想像してませんでした。
そこで、この「サイドフォースキャンセルスプリング」の出番です。
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待ってました!
スプリングをダンパーの中心軸からズラして配置したり、スプリング自体の巻き方を工夫したりして、タイヤから加わる曲げの力と逆の方向に力をかけているんです。こうすることで「ロッドガイド」や「ピストン」に発生する横力を打ち消してフリクションを減らし、ダンパーがスムーズに動くようになるわけです。
これがわかると、こういう「技術資料」もよく理解できるようになるかもしれませんね。-
Hondaはこのあたりのチューニングには相当こだわっているので、「ちょっとスプリングを変えてカッコよくしちゃおう!」みたいな軽い気持ちでスプリングを交換すると、思った通りの走りができなくなってしまうこともあるので、要注意なんですよ。
うちに帰ったら、足回りをもう一度見直してみます!!
今回のまとめ
「振動の吸収」のために……
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1:いろいろなパーツの特性を使い分けて、いろいろな振動を吸収している
低周波の振動は大きなパーツ、高周波の振動は小さなパーツを使いながら吸収して、タイヤがいつでも路面を捉えられるようにしています。
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2:ダンパーが性能をフルに発揮できるように、スプリングは取り付け方にも工夫が施されている
スプリングが伸び縮みするときの力がダンパーの動作を妨げないよう、取り付け位置も工夫。これによってダンパーがしっかり性能を発揮できるようになります。
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次回は「いいサス」の条件その2、「リアサスがしっかり力を出せる」についてです。どうぞお楽しみに!