
従来のスーパースポーツが強いてきた緊張からドライバーを解放したNSX。人を中心に置いて設計するという、それまでにないコンセプトでスーパースポーツを革新し、世界の注目を集めセンセーションを巻き起こした。NSXに乗った著名モータージャーナリストは「スポーツカーの基準を変えなければならない」と評した。NSXのコンセプトは世界に高く評価されたのだ。
しかし一方で、「スポーツカーにしては乗り心地が良過ぎる」とか「スパルタンさに欠ける」といった評価も出ていたのも事実。 そうした評価を一蹴するインパクトを与えたのが、1992年に開発された初代NSX-Rである。ベースとなるクーペに対し120kgもの軽量化を成し遂げ、ドイツ・ニュルブルクリンクを中心に世界のサーキットで徹底的に走りを鍛えた“サーキットベスト”のNSXだ。上の写真は、NSXオーナー情報誌『NSX Press』掲載のために、ニュルの近くで早朝に撮影したカットである。チャンピオンシップホワイトのボディカラーと赤いエンブレムはNSX-Rの専用色。Hondaの熱きチャレンジの源であるHonda F1 RA272に由来する。“日の丸ホンダ”と呼ばれ1965年のメキシコGPで初優勝したRA272 のボディカラーと日の丸をイメージしたものである。

初代NSX-Rが発売されると、軽量化と専用セッティングのサスペンションなどによるレスポンスに優れた走りが評価される一方で、今度は「あまりにサスペンションが硬くスパルタン過ぎるのでは」という声も聞かれた。しかし、14年が経過した2006年でも、NSXの集まりに出かけると初代NSX-Rを愛するオーナーの熱い声を聞く。「これでね、鈴鹿を走ると最高なんですよ。この気持ちよさは他のスポーツカーでは味わえないんじゃないかな」。まさにそうしたオーナーのためにつくり上げられた孤高なる一台。それが3年間限定生産の初代NSX-Rなのだ。