
サーキットベストのNSX-Rが誕生した翌1993年は、NSXのレース活動が始まった年だ。同年にスタートしたドイツのADAC GT-CUPというツーリングカー選手権に、NSX-Rをベースにしたマシンが参戦した。ステアリングを握ったツーリングカーレースの辣腕ドライバーであるアーミン・ハーネは、第3戦に優勝しシリーズ3位を獲得している。 その年に開催されたスパ24時間レースにもNSXが出場。それが、ここにご紹介する写真である。この年、スパ24時間レースにはターボエンジン搭載車が参戦できなくなり、エントリーの中心となったのは、欧州のツーリングカーレースの参戦車。トップクラスはポルシェのワンメイク状態で、そこにNSXがほとんど単独で挑む格好となったのだ。ドライバーは、NSXオーナーズ・ミーティングの特別講師を務める清水和夫とADAC GT-CUPでNSXをドライブするアーミン・ハーネ、元F1ドライバーのベルトラン・ガショー。マシンは、スプリントレースのADAC GT-CUPのままでほとんど手を加えていない状態。パワーではポルシェ勢に引けを取るものの、スパ・フランコルシャン名物のオールージュに5速のまま突入できるバランスのよさで見事ポールポジションを獲得。そこからのスタートシーンが上の写真である。

そしてこの写真は、天候が悪化するなかポルシェをかわすシーンである。世界のレースの舞台で、NSXが他のスポーツカーを抜き去るのは、それがレースのどんな場面であろうとも理屈抜きにうれしい。パワーで先行するポルシェを4位のポジションから追い上げていく展開となったが、結果は12時間半でリタイアとなってしまった。しかし、やがてル・マンのクラス優勝などにつながるNSXのレースヒストリーがはじまった年の記念すべき瞬間をとらえた写真である。