S2000 HOMECOMINGアメリカホンダで開かれた初のS2000イベント
イベントレポート
S2000オーナーは、アメリカでも熱い。
アメリカホンダが、S2000 Homecomingを開催した理由は2つある。ひとつは、イベントのサポートを望むオーナーズクラブの声に応えること。もうひとつは、新たに登場したS2000 CR(国内ではType S)のプロモーションを兼ねてのことだ。
Webサイト等を通じて参加者を募ったが、スタッフの間では「カリフォルニア周辺からせいぜい50台ぐらいの参加だろう」と踏んでいた。ところがである。アメリカホンダ初のイベントに、予想を超える人数のS2000オーナーが反応を示した。Webでの口コミにより参加応募台数はみるみる増えていき、あっという間に当初の予想は覆された。
その結果、参加台数が500名に達したところで参加応募を残念ながら締め切る形となった。「Unbelievable !」このイベントの運営を担当したアメリカHondaのクリス・マーティンは、あまりの参加者の多さに目を丸くした。
開催当日朝、ボディカラー別に到着したS2000。
参加者が増え、アメリカホンダのスタッフは意気揚々と準備を行った。スタッフは大人数のイベントには慣れているため運営はまったく問題ない。開催場所は、アメリカの本社駐車場。ウイークエンドなのでスペースはふんだんにある。ここに、参加者のS2000をボディカラー別に並べてイベントを開催するのだ。
当日朝、クリス・マーティンを中心に和やかな雰囲気でブリーフィングが行われ、準備は着々と整っていった。と、そのとき、駐車場のゲート付近でスタッフが大声を挙げて手招きしている。駆けつけてみると、何とすでにボディカラー別に隊列を組んだS2000が道路を軽快に駆け抜けていたのだ。これにはスタッフも驚き、しきりにカメラのシャッターを切り感動の叫び声を挙げた。
そのS2000は、今回のイベントで、S2000オーナーズ・クラブ代表としてスピーチを行う予定の「S2K」のメンバーのものだった。事前に別の場所で集まり、会場に移動する際にボディカラー別に隊列を組んだのだ。アメリカホンダのスタッフは彼らに手を振り、オーナーたちも手を振って応える。S2000 Homecomingは、始まる前から大いに盛り上がりはじめた。
イベントはゆったりとした語らいの場。
参加者は、アメリカホンダのあるカリフォルニアを中心に、アリゾナ、ネバダなど西海岸に隣接した州に住むオーナーがほとんどだが、遠くはニューヨークやニュージャージーからロッキーマウンテンを越えてやって来たオーナーもいるという。さらに、このイベントのために台湾から参加したオーナー、あるいは、ゆくゆくはヨーロッパでも今回のようなS2000のイベントを行いたいと、ルクセンブルクから参加した、11台のS2000を所有しているというオーナーの方もいた。
イベントそのものは、アメリカホンダというS2000の“Home”に集まり、ゆっくりと語らい合うというもの。中央のステージ近くには、新しいS2000 CRとS2000の原点ともいえるS600が展示されており、説明員の話を聞くことができる。あとは、バーガーやホットドッグなどを中心としたランチのサービスと、Hondaのピックアップトラック「リッジライン」の荷台に大胆に氷ごと投げ込まれたドリンクのサービスがあった。
朝9時半から集まりはじめた参加者は、スタッフの誘導でスムーズに駐車し、ドリンクを飲みながら、ランチを食べながらゆっくりと語らい合う。クルマ好きは、クルマについて語らっているだけで本当に楽しい時間を過ごせるのだ。ニューモデルであるCRのまわりにも多くのオーナーが集まり、スタッフとあるいは仲間と言葉を交わし合っていた。イベントは会場に流れる軽快な音楽に乗りながら、心地よいリズムで流れていった。-
スペシャル!開発責任者、上原繁が登壇。
たくさんのオーナーと交流することに加えて、参加者にとってスペシャルだったのは、ゲストとして日本から参加した上原繁 開発責任者に会えたことだろう。
上原氏は、イベントの始めから参加しており、たくさんの参加車を見たり、オーナーと話したりしていたが、最初のうちはそれほど話しかけてくるオーナーはいなかった。それは、多くのアメリカ人オーナーにとって、紹介されない限り上原氏だとすぐに確信できなかったからではないだろうか。
ところが、昼食前に中央のステージに上原氏が上がりスピーチをすると、そのあとは昼食もゆっくりとれないくらい、上原氏はオーナーからサインと写真撮影を求められることとなった。
アメリカのオーナーにとって、自分の愛すS2000の生みの親-遠い日本のHondaに所属する本人と直接会えるなんて奇跡に近いことだ。しかも今年、定年でHondaを離れてしまうことも知っている。まさに最後のチャンスである。(実は、このイベントの3日前に退職していたが、アメリカンホンダの招待で、特別ゲストとして参加した)
S2000のオーディオリッドを外し、自らの愛車に直接上原氏のサインを刻み込もうと願うオーナーや、大切にしまっていたカタログにサインをもらい一緒に写真を撮りたいオーナーなどが長蛇の列をつくってしまうほどの人気。「まるでムービースターのよう」と言いながら、アメリカホンダのスタッフは長い列の整理を行っていた。-
アメリカのS2000オーナーも熱い。
S2000は、オープンカーのなかでは異彩を放つ、まさにHondaならではのクルマである。アメリカのオーナーも、S2000のHonda独特のオープンエアモータリングのコンセプトに心から満足していた。
「オープンカーなのに、走りはまさにリアルスポーツ」
「高回転まで突き抜けるように回るVTECエンジンは、最高に気持ちいい」
「クイックなハンドリング、何とも言えない一体感だよ」
「気持ちよく入るMT。精緻なメカニズムがHondaの魅力だね」
「そのままサーキットに行き、存分に走りを楽しめ、安全性能も高い水準にあるオープンカーって他にあるかい?」まさに心酔。ここに参加するほどであるから当然かもしれないが、S2000に惚れ込んだ人たちだ。そして、S2000を中心として生まれるフレンドリーな仲間たちを讃える声も多く聞かれた。
「S2000に乗って、クラブに入って、たくさんの友達ができた。他のクルマのクラブに入ったことがあるけど、居心地がよくなかったんだ。S2000のクラブの人は、自分のクルマを愛していて、走るのが好きで、気さくでいい人が多い。月に1~2回だけど、集まって他愛のない話をするだけで本当に楽しいんだ」
「仕事や学校といった普段のフィールドでは知り合えない、バラエティに富んだ仲間ができたよ」
S2000のオーナーは、20代の若者から歳を重ねた方まで実に幅広い。参加者は所属しているクラブの垣根を超え、このイベントで出会ったさまざまなオーナーと語らい、S2000と仲間との時間を楽しんでいた。
アメリカホンダで開催された初のオーナーイベント、S2000 Homecomingは、あえて盛り上げを狙ったようなプログラムもなく、クルマ好きにとってゆったりとした、とてもいい雰囲気のイベントだった。-