
2024年11月24日(日)〜25日(月)。およそ年に一度、1泊2日のゆったりとしたスケジュールで開催されるオープンエアを楽しむミーティング。「2024 SUZUKA S2000 Driving Meeting」に、30台のS2000が集まりました。
このミーティングは、2000年から2018年まで行われていたHondaの「S2000 Driving Forum」に参加されていたオーナー有志の“継続したい”との熱い想いを、鈴鹿サーキット交通教育センターが受けて2019年にスタートしたものです。今年は、コロナ禍による2年の休止を経て4回目の開催。S2000が誕生してから25年の記念すべき年に開催された、S2000オーナー至福の2日間をレポートしました。
S2000のオープンエアの素晴らしさを味わう
こうしたミーティングは、日中の時間を有効に使うために早朝に始まるのが通例ですが、2日間にわたるこのミーティングは、鈴鹿サーキット交通教育センター(STEC)で行われる開会式が12時30分スタートという、ゆとりのタイムスケジュールです。参加された30台のうち、初参加は4台。さまざまな年代の参加者がいらっしゃいました。
STECの熟練のスタッフがS2000オーナーと同伴者の皆さんを迎えます。特別講師は、レーシングドライバーとして活躍し、いまもレース運営などに関わり続けるベテランの岡田秀樹さん。Hondaでは、NSXやINTEGRA TYPE R、CIVIC TYPE Rなどのスポーツカーミーティングの講師を当初から長年務め続けています。また、S2000の開発に携わったHonda OBの塚本亮司氏が、S2000誕生25周年の特別ゲストとして参加しました。開会式のあと、岡田さんと塚本氏のレクチャーをじっくりと聞けることもこのイベントの魅力です。-
笑いと教訓に満ちた岡田特別講師のレクチャー
岡田さんは、レースの裏話で参加者を笑わせながら、いつもセーフティードライビングにつながる貴重な話をしてくれます。今回も、マカオグランプリにまつわるエピソードに始まり、日本の若手ドライバーがイギリスで活動していた際、ロードカーに乗るトレーニングでベテランドライバーの助手席に乗ったとき、ショックを受けた話に至りました。そのショックとは、ベテランドライバーはすべての運転操作がゆっくりとしていて、タイムはほぼ同じでありながらクルマの動きがスムーズで、自分が運転したときとまったく違うことを目の当たりにしたことでした。岡田さんは、この例を引き合いに出しながら、ドライビングでは、丁寧な操作で、できるだけクルマに急な動きをさせず、4つのタイヤをしっかりと接地させて性能を高く使いながら安定して走ることがセーフティードライビングの基本となることを参加者に語りかけました。そして、S2000は、まさに意のままに操ることができ、パワーもあり、コントロールが本当に楽しいクルマで、自分として一番好きなクルマであると、心からの感想を述べていました。
S2000の企画が立ち上がっていく経緯を語った塚本氏
塚本氏は、S2000の開発に至る企画段階のさまざまな話題を語りました。そもそも研究所のデザイン室で、好きなクルマをデザインしようと検討を進めていくなかで生まれたデザインが役員の目に留まり、SSM(スポーツ・スタディー・モデル)として東京モーターショーに出展したことがひとつのきっかけとなった経緯は多くの方がご存知ですが、そのストーリーの裏話を紹介。そして、SSMの人気が高まり、社内でも“スポーツカーをつくりたい”という熱が高まっていき、創立50周年にふさわしいスポーツカーをつくろうと、S2000の企画がスタートしていったという経緯を紹介しました。
Hondaには、“差ではなく、違いを出せ”という創業当時からの開発ポリシーがあり、さまざまな検討をしていくなかで、開発チームがこれまでにない操る喜びの実現を目指し、運転操作に関わるすべてのレスポンスをよくすることにこだわり、欧州でのサーベイなどを経て、オープンカーでありながらリアルスポーツカーであるという、他にはないコンセプトを持ったS2000が誕生していく経緯を語りました。-
年に一度の基本トレーニングで汗をかく
岡田さんいわく、「年に一度のリハビリ」と位置付けた、スポーツドライビングの基本操作のトレーニングからドライビングプログラムが始まります。このトレーニングはすべてオープンエアで走行することができます。
60・70・80km/hからのフルブレーキングでヒール&トゥも行うプログラムは、岡田さんや交通教育センターのインストラクターから、ブレーキが弱かったり、ヒール&トゥの際の踏力変化などに対しアドバイスが飛んでいました。パイロンスラロームでは、S2000のレスポンスのいいハンドリングを思う存分味わい、皆さん楽しそうでした。
濡れた低μ路面で、安全に限界時の操作を楽しむスキッドコントロールでは、インストラクターの「思いっきりスピンさせて学んで!」「うまい!」といったコメントで盛り上がりながら、前後重量配分が50:50のS2000の挙動コントロールをたっぷりと楽しんでいました。-
国際レーシングコースを
オープンエアで走る貴重な機会
基本トレーニングを終え、鈴鹿サーキットホテルで特別講師とゲストを交えてのディナーを楽しんだ翌朝は、貴重な走行プログラムから始まります。インストラクターの先導により、F1グランプリも開催される国際レーシングコースを、ヘルメットを装着しルーフをオープンにして走行できるのです。通常はレーシングコースでルーフをオープンにしての走行はできませんが、このミーティングのために安全を確保した上で特別に行っており、オープンエアを楽しむミーティングという、S2000 Driving Meetingのコンセプトの核となるプログラムといえます。
サーキット走行経験者から初めての方までが安心して楽しめるよう、前日にクラス分けをし、それぞれのクラスの状況を見ながら、インストラクターが安全な速度で先導します。翌朝、快晴の青空を仰ぎながらの感動的なサーキット走行を、参加者の皆さんが満喫していました。先導走行を終えたあとは、同伴者を助手席に乗せ、ゆっくりと走るオープンエアのパレード走行を楽しみ、プログラムを終えました。-
ショートコースをたっぷりと走り込み
S2000の走りを満喫できるプログラム
走行プログラムの最後は、1周約1キロの南コースを、1台1台自由に走行するトータルトレーニングです。ここは単独のフリー走行でもあるため幌を閉じての走行となります。
最初にインストラクターのクルマに先導され、コースを覚える完熟走行を行ったあと、2組に分かれ、走行組の車両はホームストレートに停車。安全のために周回するのではなくほぼ1周のストップ&ゴーで単独走行を行います。約20分の走行を2セット。走行を終えた皆さんは、気持ちのよい汗をかいていました。無理をせず、前日の基本トレーニングの操作を思い出し、S2000のハンドリングを楽しむ充実の走行プログラムです。
コクピットに座り、ヘルメットを付け、安全な環境でS2000をドライブする喜びは、体験してみないとわかりません。おそらく、誰もが夢中になるほどの喜びに満ちていると思います。-
S2000は、先進の安全性能と環境性能をクリアする社会適合性を達成しながら、鋭いハンドリングレスポンスと高次元の運動性能を実現することに挑んだ、それまでに存在しなかった先進のリアルオープンスポーツです。このコンセプトに世界の多くの方々が賛同し、S2000は、誕生から25年を経たいまも愛され続けています。
今回のミーティングに参加された皆さんは、S2000とのスポーツカーライフを心から楽しまれていました。特別講師の岡田さんは、「クルマの状態に不安がある人は声をかけてください。僕らプロドライバーが乗って診断してあげます」とレクチャーのときに語っていた通り、南コースの走行時に何人かのオーナーのS2000で走っていました。長年続けているこのミーティングは、そんなフレンドリーな雰囲気に満ちています。
S2000にお乗りの方は、次回開催されたらぜひ一度参加してみてください。笑顔になること間違いなしです。
参加者の声
東京都 中山さん
父がPRELUDEを購入しに販売店に行くときに着いて行き、創業50周年を記念して発売したいいクルマと聞いて、S2000のことが記憶に残っていました。それから時が過ぎ、2.0Lのエンジンがなくなるという噂を聞いて、それなら無理してでも買うしかないと思い、2004年に購入しました。もう20年乗っていますが、2010年ぐらいからサーキットに走りに行くようになって、さらに深い運転の楽しみに触れることができました。でもこのようなイベントには参加したことがなかったので、たまたま鈴鹿サーキットのホームページでこのミーティングのことを知り申し込んだのですが、残念ながらキャンセル待ちの状況でした。ですがしばらくして連絡が来て、参加できることになりました。ひとりでサーキットを走るのとは違い、いろいろなS2000のオーナーの皆さんとの交流があって、さまざまな話しをしながら走れて、すごく楽しい体験ができました。
S2000でサーキットを走ると、コーナーでは無理しなくても、ストレートでは思いっきりアクセルを踏めて爽快ですね。サーキットで安全に走ってクルマのことを知れば知るほど一般道では無理をしなくなりますし、より安全だと思います。このようなミーティングは、とてもいい集まりだと思います。
奈良県 青木さん
このS2000は2001年に購入しました。このクルマが出てから、いいなと思いショールームに見に行ったりしていました。私にとっては少し敷居が高い存在でしたが、どうしても欲しいと家内に相談したところ、白いボディーカラーと赤の内装色の組み合わせを家内が気に入ってくれて購入に賛成してくれたのです。それで手に入れることができ、最高の気分でした。地元にはワインディングがたくさんありますので、そういうところをS2000で走ると本当に気持ちよくて、いい気分転換になります。
それで、南コースを走るミーティングなどにも参加しているうちに、このミーティングを推進されている野さんに出会って仲間に入れてもらい、昨年もこのミーティングに参加しました。フルコースをオープンで走ることができ、この上ない気持ちよさを味わっています。
私は、S2000のフェンダーとホイールとタイヤが一体となっているようなデザインが好きで、NSXもデザインされたHondaの中野さんと機会があって話すことがあり、それがきっかけで、もともと憧れの的でもあったNSXも購入しました。好きなクルマで走り、仲間とも交流できる。本当に幸せを感じます。
兵庫県 野さん
S2000には、Driving Forumというミーティングがあり、Hondaさんが主催して20年近く行っていただいていました。それが2018年の9月で終わり、ずっと参加していた方とどうしようかということになり、台数を集めたらSTECさんのプログラムをベースにして実施してくれるかもしれないと思い、私が音頭を取ってお願いに行きました。そうしたところ、何とか受けていただき、最初は2019年に10台ぐらいで集まることができました。その後すぐにコロナ禍となりましたが、我々のチームへの参加資格を「S2000に魂を乗っ取られてること」として勧誘したら、皆さんキラッと目が光り、どんどん参加してくださるようになりました。2022年から再開して、すぐに20数台が集まるようになったとき、STECの方が1泊のコースやりましょうと言ってくださったんです。それから年々参加台数が増えて、2024年は何と30台です。STECの皆さんには本当に感謝しています。やはり、S2000だけでミーティングを開いてもらえることが、参加者はみんな嬉しいんです。2024年は久しぶりにHondaの方にもきていただき感激です。S2000で集まるという同じことを行って20年以上も経つのに、どうして今も参加者が増えていくのか不思議なくらいです(笑)。本当に私は、NO S2000 NO LIFEというくらい、S2000のおかげで充実した人生を送らせてもらっています。
特別講師 岡田さん
年に1回、毎年開催して仲間同士交流するのはいいですよね。もちろん新しい仲間もどんどん加えていきながら。僕は冗談で年に一度の生存確認って言っているんですけど(笑)。それから、S2000というクルマもこのようなイベントも20年以上経っているという歴史があるので、参加者も以前よりは走らなくなっていることもあり、年に1回ぐらいはちゃんと走れてるかということを確認して、リフレッシュしながら楽しむことは安全のためにもいいことだと思います。
参加していただいている皆さんのS2000を見ると、本当に綺麗に乗っているんですよね。クルマを大事にしているということが、我々にもひしひしと伝わってくるので、ちゃんと安全に運転して、大事に乗り続けてもらいたいですよね。そのために微力ながらお手伝いできればと思っています。
元開発者 塚本氏
今回、久しぶりにS2000オーナーの皆さんのミーティングに参加させてもらい、皆さんS2000に惚れ込んでくださっていて、開発した者としてほっとしますし、嬉しい限りです。皆さんに会えるのがすごく楽しみなので、ぜひ今後もこのイベントを続けてもらいたいですね。開催された際には、次回もぜひ参加させていただければと思います。
皆さんのクルマを見て、オリジナルをキープしながら、自分なりのチューンを一部楽しむ乗り方をされていて、とてもいいなと思いました。大事に乗ればクルマはそう壊れるものではありませんので、クルマを労わりながら、自分も楽しみながら、バランスよく楽しんで長く乗り続けて欲しいですね。
このミーティングでは、レーシングコースをオープンで走れるという特別なプログラムがあり、それはルールを守る皆さんとの信頼関係で成り立っていて、S2000のオープンエアのコンセプトにとても合致しているプログラムなので大切に楽しんで、この輪を広げて欲しいと思います。参加されたことのないオーナーの方は、ぜひ参加してみると、これまでにないS2000の所有の喜びに出会えると思います。