スーパースポーツに革新をもたらしたNSX

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#TYPE R #Type S
2025.9.14

Honda が思いを込めて、熱く、理念にまっすぐに、真撃につくり上げたスーパースポーツ。NSXは、世界に驚きをもって迎えられました。1990年の誕生から35年。歴代の主なモデルのデザインやメカニズムについてご紹介します。

[NSX]スーパースポーツに乗るという至福をより多くの人へ 1990年

1985年6月、「Hondaらしい、先進でアイデアあふれるスポーツカーを提案し、長年のHonda Dreamを実現する」をテーマに、NSXのプロジェクトがスタートしました。そして、それまでの概念を超える新世代のスポーツカーとして、高性能と快適性が高次元で両立した「快適F1」というコンセプトを生み出したのです。
NSX以前は「ねじ伏せてこそスポーツカー」という風潮がありました。Hondaが提案するスポーツカーがそれと同じでは“新世代”とはいえません。ドライバーの意志に忠実で、世界トップレベルの運動性能を持ちながら、運転の緊張からドライバーを解き放ち、運転に快適な環境を持たせるべきです。つまり「人間中心」に考えつくり上げていけばスポーツカーを革新できる、誰にとっても使いやすく長く愛していただけるスポーツカーを生み出すことができると考えたのです。

さらに、NSXが目指したのは世界一の運動性能を実現することでした。パワーを求めるだけではクルマは大きく重くなってしまいます。反対に軽量化を突き詰めるだけでは、俊敏なハンドリングがあってもパワーが足りなくなります。そこでHondaは、パワーとハンドリングのバランスに優れたミドルウエイトクラスに着目。スポーツカーとしての利点を数多く持つミッドシップエンジン・リアドライブレイアウトを基本に、量産車世界初となるオールアルミモノコックボディーによって軽量化。パワーとハンドリングを高度に両立させ、乗りやすくて世界トップレベルの性能を実現できるスポーツカーを目指したのです。

1990 NSX 主な諸元

  • 全長×全幅×全高
  • 4.430×1.810×1.170 m
  • ホイールベース
  • 2.530 m
  • トレッド
  • 前/後:1.510/1.530 m
  • 重量
  • 1,350 kg(MT車)
  • 乗車定員
  • 2名
  • エンジン
  • 水冷V型6気筒DOHC VTEC 2,977cc
  • 圧縮比
  • 10.2
  • 最高出力
  • 280PS/7,300rpm(MT車)
  • 最大トルク
  • 30.0kgf・m/5,400rpm
  • サスペンション方式
  • 前/後:ダブルウイッシュボーン式

[NSX-R]運動性能を際立たせたピュアスポーツモデル 1992年

NSX-Rの開発は、NSXの運動性能をより際立たせるチューンを行ったら、どんなクルマになるだろうという開発者の思いから始まりました。
Honda が長年のレース活動で育んできたレーシングカーのチューニング理論を注ぎ込んだファインチューニングモデルの開発です。ベースモデルでも軽量なNSXをさらに120kg も軽量化。そして「性能を高めるのはわかるが、あまりにもサスペンションが硬すぎるのでは」と議論が起こるほど振り切ったサスペンションのチューニングが行われたのです。RECARO 社製フルバケットシートや MOMO 社製ステアリングホイール、チタン削り出しのシフトノブなど操縦性を高め高揚感をもたらすパーツの採用などにもこだわりました。
開発過程でアイルトン・セナ選手にテストドライブを依頼。鈴鹿サーキットを走りクルマから降りてきたセナ選手は、「コンフォート」と語ったそうです。 それを聞いた開発費任者の上原は大きく頷きました。NSX-Rは、サーキットを走ったときに心地よく感じるセッティングを行っていたからです。
HondaがF1への挑戦で初勝利をもたらしたマシン、RA272の真紅のHonda エンブレムとオフホワイトのボディーカラーを纏って、NSX-Rはデビューを果たしました。このとき生まれた"TYPE R”という呼称は、その後 INTEGRAとCIVICにも継承され、Hondaのスポーツモデルのブランド名となりました。

1992 NSX-R 主な諸元

  • 全長×全幅×全高
  • 4.430×1.810×1.170m
  • ホイールベース
  • 2.530m
  • トレッド
  • 前/後:1.510/1.530m
  • 重量
  • 1,230kg(エアコン非装着車)
  • 乗車定員
  • 2名
  • エンジン
  • 水冷V型6気筒DOHC VTEC 2,977cc
  • 圧縮比
  • 10.2
  • 最高出力
  • 280PS/7,300rpm
  • 最大トルク
  • 30.0kgf・m/5,400rpm
  • サスペンション方式
  • 前/後:ダブルウイッシュボーン式

[NSX type S]ワインディングベストの走りを追求 2001年

NSX-R を登場させたあともNSXは進化を続けました。当時のF1マシンに採用されていたアクセルペダルとスロットルを電子的につなぐ技術であるドライブ・バイ・ワイヤ (DBW)の採用などとともに、1995年にオープンモデルのtypeTを登場させる進化です。オープンモデルでもサーキットを十分に楽しめるボディー剛性を確保すべく、各部の板厚アップなどによりボディーを強化。その強化対策を全モデルに展開しました。
そして、1997年。MTモデルのエンジンを3.2Lに排気量アップ、あわせてマニュアルトランスミッションを6速化。より爽快な加速フィールを実現しました。

さらに、ワインディングでの操る気持ち良さを際立たせるtype Sを追加。エアコンなどの快適装備をそのままに、約45kgの軽量化と、よりニュートラルなステア特性を示すサスペンションセッティングを実施。type S専用パーツとして、MOMO社製本革巻ステアリングホイール、RECARO 社製フルバケットシート、チタン削り出しシフトノブ、メンテナンスリッドとサイドインテークに軽量メッシュグリルを採用するなど、スポーティさを高めました。
撮影を行ったのは、2001年モデルの NSX type Sです。NSXは、2001年にそれまでのリトラクタブルヘッドライトを固定式に変更し、フロントとリアのバンパー、サイドシルの形状を工夫することで空力性能を高める進化を行いました。

2001 NSX type S 主な諸元

  • 全長×全幅×全高
  • 4.430×1.810×1.160m
  • ホイールベース
  • 2.530m
  • トレッド
  • 前/後:1.510/1.540m
  • 重量
  • 1,320kg
  • 乗車定員
  • 2名
  • エンジン
  • 水冷V型6気筒DOHC VTEC 3,179cc
  • 圧縮比
  • 10.2
  • 最高出力
  • 280PS/7,300rpm
  • 最大トルク
  • 31.0kgf・m/5,300rpm
  • サスペンション方式
  • 前/後:ダブルウイッシュボーン式

[NSX-R]マイナスリフトでNSXの走りを極める 2002年

2001年のデザイン進化の開発過程で、開発者は空力性能の向上を実感していました。時速 80km/hからの追い越し加速や、高速域でのアクセルに対する追随性が格段によくなり、最高速度も伸びていました。その基本性能が向上したNSXをベースに「TYPE R」開発への意欲が再び湧き上がってきたのです。
性能進化の武器として選んだのはマイナスリフト。「単にマイナスリフトを出すだけじゃなくて、それを操縦性の質を高めるために積極的に利用するやり方は、市販のスポーツカーではまだ手付かずといっていい。TYPERで挑む意義は十分にあると思う」と開発責任者の上原は判断。速さの質を研ぎ澄まし、NSXの走りを完成させることを目指したのです。開発チームは、そのアプローチを“空力操安”と名づけました。

マイナスリフトを発生させるためにほぼ中央に穴を開けたフロントフードと中空のリアウイングはカーボンコンポジット製。マイナスリフトに対応したサスペンションチューニングと、専用開発のハイグリップタイヤ、強力な制動力を生み出すスリット入りブレーキディスクローターと強化ブレーキパッド、綿密な専用シャシーチューニングを実行。エンジンは当時のレーシングエンジン同等以上の高精度なバランス取りやDBWのセッティングが施され、これまでのNSX にはない高レベルの走りの喜びを実現しました。
ドイツ・ニュルブルクリンクのタイムアタックで、7分56秒733というそれまでのNSX最速のタイムをマーク。NSX 最速を実現することも、TYPERの性能目標のひとつだったのです。

2002 NSX-R 主な諸元

  • 全長×全幅×全高
  • 4.430×1.810×1.160m
  • ホイールベース
  • 2.530m
  • トレッド
  • 前/後:1.510/1.540m
  • 重量
  • 1,270kg(エアコン非装着車)
  • 乗車定員
  • 2名
  • エンジン
  • 水冷V型6気筒DOHC VTEC 3,179cc
  • 圧縮比
  • 10.2
  • 最高出力
  • 280PS/7,300rpm
  • 最大トルク
  • 31.0kgf・m/5,300rpm
  • サスペンション方式
  • 前/後:ダブルウイッシュボーン式

[NSX]トルクベクタリングでスーパースポーツの新たな扉を開いた2代目 2016年

26年ぶりのモデルチェンジとなった2代目NSXでも、Hondaはスーパースポーツの新価値を世に問いました。
2代目NSXが目指したのは、世界第一級の速さと、いままでにないほどの“意のまま”感覚の操る喜びの実現です。新開発のV型6気筒ツインターボエンジンをミッドシップにレイアウトし、クランクシャフトと直結したダイレクトドライブモーター(DDM)と9速DCTを組み合わせています。
さらにフロントには、左右独立のツインモーターユニット(TMU)を搭載。モーターの力を加速だけでなく曲がる性能にも活かすトルクベクタリングに用いることで、従来のエンジンのみで構成されたスーパースポーツでは到達できなかったレベルのレスポンスとハンドリングを実現しました。
ボディーは新世代スーパースポーツにふさわしい高剛性と軽量化を達成するために複数素材によるスペースフレームを開発。最新のルーフクラッシュ要件に対応しながらフロントピラー断面を極限までスリム化することで、初代で大事にしてきた優れた視界を確保しています。
2代目NSXの開発責任者は初代NSXに魅了されHondaに入社したテッド・クラウス。クラウスは2代目の開発にあたり、初代NSXの開発責任者の上原を訪ねました。それは、HondaのスポーツDNAを継承するには上原に学び、もっとNSXのことを深く知らなくてはいけないとの思いからでした。クラウスが上原から学んだのは、「人間中心のスーパースポーツ」というスピリット。初代のスピリットをしっかりと継承しながら、スーパースポーツの新価値を実現しました。

2016 NSX 主な諸元

  • 全長×全幅×全高
  • 4.490×1.940×1.215m
  • ホイールベース
  • 2.630m
  • トレッド
  • 前/後:1.655/1.615m
  • 重量
  • 1,780kg(カーボンセラミックブレーキローター装着車)
  • 乗車定員
  • 2名
  • エンジン
  • 水冷V型6気筒DOHCツインターボ 3,492cc
  • 圧縮比
  • 10.0
  • エンジン最高出力
  • 507PS/6,500-7,500rpm
  • エンジン最大トルク
  • 56.1kgf・m/2,000-6,000rpm
  • モーター最高出力
  • 前37PS/4,000rpm(1基当り)、後48PS/3,000rpm
  • モーター最大トルク
  • 7.4kgf・m/0-2,000-rpm(1基当り)、後15.1 kgf・m/500-2,000rpm
  • サスペンション方式
  • 前ダブルウイッシュボーン式、後ウイッシュボーン式

[NSX Type S]2代目NSXの集大成となる一体感を徹底追求 2021年

初代NSX同様、2代目NSXも進化の手を止めませんでした。2018年にはダイナミクス性能を進化。専用タイヤやサスペンションなどの見直しに加え、駆動配分制御を含む各制御を熟成しました。
そして2021年、2代目 NSXの集大成として、これまでのNSXを超えるパフォーマンスとデザインを追求したNSX Type Sを発表しました。
ダイナミクス性能では、2018年モデルで熟成させたアクティブ・ダンパー・システムのセッティングをベースに、ワイドトレッド化と専用タイヤにより、サーキット走行時の限界性能とコントロール性を大幅に高めました。
パワートレーンでは、システム全体の出力・トルクを大幅に向上しています。「インテグレーテッド・ダイナミクス・システム」も各モードともにTypeS 専用にチューニング。

エクステリアでは風洞実験や走行試験を何度も重ねてつくり上げた新デザインを前後バンパーに採用。ワイド&ローなスタイリングをより際立たせるとともに空力と冷却を高次元で両立させるトータル・エアフロー・マネジメントの向上を目指しました。
夜のテストコースで初代NSXを体感して感動したことが今も思い出深く残っていると語ったのは、2代目TypeSの開発責任者を務めた水上。徹底した走り込みを行うことで全速・全域でこれまでのNSXを超える操る喜びを体感できるクルマに仕上げました。

2021 NSX Type S 主な諸元

  • 全長×全幅×全高
  • 4.535×1.940×1.215m
  • ホイールベース
  • 2.630m
  • トレッド
  • 前/後:1.665/1.635m
  • 重量
  • 1,770kg(カーボンセラミックブレーキローター装着車)
  • 乗車定員
  • 2名
  • エンジン
  • 水冷V型6気筒DOHCツインターボ 3,492cc
  • 圧縮比
  • 10.0
  • エンジン最高出力
  • 529PS/6,500-6,850rpm
  • エンジン最大トルク
  • 61.2kgf・m/2,300-6,000rpm
  • モーター最高出力
  • 前37PS/4,000rpm(1基当り)、後48PS/3,000rpm
  • モーター最大トルク
  • 7.4kgf・m/0-2,000-rpm(1基当り)、後15.1 kgf・m/500-2,000rpm
  • サスペンション方式
  • 前ダブルウイッシュボーン式、後ウイッシュボーン式

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