
1995年に登場したINTEGRA TYPE Rが、2025年に30周年を迎えました。
今も多くのファンに愛される”インテグラ”。その魅力をあらためて伝えるには、オーナーの声がいちばんだと思いました。今回は、Honda社内で熱いインテグラ愛を持つオーナーを大募集しインタビューを行いました。愛車を前にオーナーが語る映像もあるのでご覧ください。
答える人
本田技研工業株式会社 四輪開発本部 SDV事業開発統括部
スマートキャビン開発部 スマートコックピットシステム開発課近藤 直人(こんどう なおと)2021年入社。車種開発のオーディオシステムを担当。ACCORDやPRELUDEの開発に携わる。現在は新機種の開発と並行しながら、将来戦略の検討も行っている。
本田技研工業株式会社 試作推進部 車体試作課吉井 良(よしい りょう)2016年入社。試作車の製造現場で塗装工程の技術開発に従事。現在は試作車製造のCAE解析を担当している。
[DC2]幼いころから憧れ続けたINTEGRA TYPE R
HondaがINTEGRA TYPE Rをつくったのは、NSX-Rで好評を獲得したTYPE Rの魅力を、より多くの人に味わっていただきたいという思いからでした。
そして、その背景には、“FFではスポーツカーはつくれない”という一般的な論調に対し、スポーツカーであることと駆動方式は関係ないと、現物をつくって証明することに挑む気持ちもあったのです。Hondaの熱い思いで1995年に誕生したINTEGRA TYPE R(DC2)は、“FFと思えないほど曲がる”との評判を獲得。徹底した軽量化で、車重を1,060kg(3ドア)に抑えたことによる軽快なハンドリングに加え、最大許容回転数時に24.4m/sという当時のF1をも上回るピストンスピードで痛快に回り、リッターあたり約111馬力を発生する1.8L 直列4気筒DOHC VTECエンジンが多くの人を魅了しました。
初代は、3ドアのDC2に加え、4ドアのDB8もあり、家族も納得する日常の使い勝手のよさを実現していたこともHondaらしい魅力でした。オーナーである近藤さんも、1996年式のDC2、96specの軽快さに惚れ込んで購入しました。
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映像のインタビューで語り尽くせなかったインテグラ愛をお聞かせください。
近藤さん:DC2に乗る前、初代FITに乗っていて、軽量なクルマの楽しさを知りました。DC2は現行FITより軽く軽快で、刺激的なVTECエンジンが魅力です。
Hondaに内定してから探し始め、この個体に出会ってひと目惚れしました。2020年の購入時点で走行距離は11万8,000km。2025年の今は15万7,000kmです。5年で4万キロ弱走りました。走行距離は少し少なめですか?
近藤さん:はい。ものごころつく前から好きになったINTEGRA TYPE Rを大切に思うからです。最初にFITに乗ったのも、このクルマの良さをより感じたいと思ったからです。いま通勤ではCR-Zに乗り、あえて週末だけ乗るようにしています。その理由は、毎日乗って慣れて刺激が薄れるのを防ぐためです(笑)。
このクルマで車中泊もされたとか?
近藤さん:鈴鹿にF1を見に行ったときにクルマの中で泊まりました。後席の背もたれを倒し、トランクにかけて足をまっすぐに伸ばして寝ることができます。INTEGRA TYPE Rの魅力は、刺激的なスポーツドライビングを楽しめると同時に、低速域でも気持ちよく、日常の使い勝手もいいことです。
とてもきれいな状態ですね。
近藤さん:はい、実は手に入れてから今が一番きれいな状態なんです。壊れて修理するのではなく、年を追うごとにリフレッシュしていくようなメンテナンスを目指しています。
INTEGRA TYPE R愛がすごいですね。
近藤さん:もともと祖父がHondaのディーラーに勤めていて、父もHonda車好きで親子三代Hondaファンです。僕も幼い頃から影響され、小さい時に見たINTEGRA TYPE Rに乗りたいと思い続けてきました。INTEGRA TYPE Rに乗れるだけでなく、このようなクルマをつくったHondaに入ることができて幸せです。将来は、このクルマのような、軽快で刺激的で“乗ってみたい”と、若い人にも思ってもらえるようなクルマを開発したいという夢を抱いています。
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1995 INTEGRA TYPE R[DC2]主な諸元(3ドアクーペ)
- 全長×全幅×全高
- 4.380×1.695×1.320 m
- ホイールベース
- 2.570 m
- トレッド
- 前/後:1.480/1.470 m
- 重量
- 1,060 kg
- 乗車定員
- 4名
- エンジン
- 直列4気筒DOHC VTEC 1,797cc
- 圧縮比
- 11.1
- 最高出力
- 200PS/8,000rpm
- 最大トルク
- 18.5kgf・m/7,500rpm
- サスペンション方式
- 前/後:ダブルウイッシュボーン式
[DC5]人生で2度出会い、DC5の実車を見てひと目惚れ
INTEGRA TYPE Rの2代目は、2001年に登場したDC5です。
エンジンは2.0Lに排気量アップし、最高出力を220馬力に向上。Honda独創のVTECを、吸気バルブタイミングの位相をエンジン負荷に応じて連続的に制御するVTC(Variable Timing Control)を組み合わせて「i-VTEC」へと進化させ、より痛快な伸びと優れた環境性能を実現しました。トランスミッションは、高回転・高トルク域を有効に活かすクロスレシオの6速です。ドライバーに感動をもたらす空間とすることを追求したインテリアは、スイッチ類をドライバーのリーチにあわせた面上に配置して “囲まれ感”を高めました。
ワイド&ショート、キャビンフォワードのパッケージングを採用したエクステリアデザインも魅力的。車重もエアコン装着車で1,180kgに抑え、軽快かつダイレクトでリニアなハンドリングの楽しさを実現しました。お話を伺った吉井さんは、後期型の2005年モデルのオーナー。はじめはDC2を探していましたが、DC2の横にあったDC5に惚れ込み、Hondaに入社してすぐ、2016年に購入しました。
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人生で2度 INTEGRA TYPE Rに出会ったそうですが。
吉井さん:はい。1度目は、中学生のときにまだHondaもVTECも知らない頃、レースのアーケードゲームで出会いました。そのときはDC2でしたが、VTECの特性を表現していたようで、エンジンの回転の伸びに合わせパワーが倍々になっていく刺激的で玄人向けの車種というキャラクターが印象に残りました。それで、Hondaに入社してすぐにINTEGRA TYPE Rを探して、DC5の現車を見て2度目の感動的な出会いを果たしたというわけです。
DC5のどこに惚れ込んだのですか?
吉井さん:中古車販売店で探していたDC2の隣に置いてあって、ついでに中を見せてもらったんです。そうしたら、コックピットがドライバー中心に作られていて、かっこいいと感動しました。独創的なインテリアデザインに惚れ込んで、そこからDC5を探し始めたんです。
このクルマにした決め手は?
吉井さん:エアロパーツなどを付けておらず、僕の好きな純正仕様のままだったからです。いまホイールを換えていますが、純正のホイールはスタッドレスを装着して保管しています。
かなりの遠出をされるそうですね。
吉井さん:はい。青森まで片道600kmを走り、母の実家にときどき行きます。RECAROシートの座り心地もいいのでしょうが、足回りやエンジンのフィーリングを含め、本当に疲れないんです。他のクルマで長距離走行をしたことがありますが、かなり疲労しました。
このDC5は、長距離移動でも疲れず、車中泊も快適にできるほどトランクが広くて日常でも使いやすい上に、走りも楽しい。購入したときは、3年ぐらいで乗り換えていろいろなクルマを経験しようと思っていたのですが、買い換える理由が見当たらないんです。Hondaで成し遂げたい夢は?
吉井さん:このDC5を作ったHondaで働けて、すごく幸せだと思っています。その気持ちを胸に、もっと世代を超えて愛されるようなクルマをつくっていきたいと思っています。
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2004 INTEGRA TYPE R[DC5]主な諸元
- 全長×全幅×全高
- 4.385×1.725×1.385 m
- ホイールベース
- 2.570 m
- トレッド
- 前/後:1.490/1.490 m
- 重量
- 1,180 kg
- 乗車定員
- 4名
- エンジン
- 直列4気筒DOHC i-VTEC 1,998cc
- 圧縮比
- 11.5
- 最高出力
- 220PS/8,000rpm
- 最大トルク
- 21.0kgf・m/7,000rpm
- サスペンション方式
- 前:マクファーソン式 後:ダブルウイッシュボーン式