長年の夢であったスーパースポーツの開発に着手したHondaは、「過去に例のない、新しい考えと新しい性能を持ったスポーツカーを創造したい」と考えた。旧来の概念に従うのではなく、自ら考え抜き、新しいテクノロジーを確立することで新たな価値を持つスーパースポーツが生み出せるのではないかと。
最も大事にしたのは、「人」を中心に考えるHondaのクルマづくりの原点思想だった。それまでのスーパースポーツのように「クルマが人を選ぶ」、「クルマが必要以上の緊張や疲労を強いる」マシン中心の考え方からの決別である。世界第一級の運動性能と、扱いやすく、より安全・快適で、ドライバーの意志に素直に応答する性能を両立できればそれがスーパースポーツにとっても「真の走りの楽しさ」となるのではないか。
NSXは、スーパースポーツというカテゴリーでも新たな価値の創造に挑んだのだ。
New Sports X。NSXという名は、その頭文字である。未知なる「X」にチャレンジしたNSXこそまさに我々Hondaの技術の結晶ともいえるスポーツカーであった。
このNSXの開発思想は、その後のスポーツカーづくりに大きな影響を与えることとなった。