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誕生秘話

Honda除雪機の開拓者たち
サイズを超えた硬雪破砕性能を目指して
世界初の同軸・同時正逆転除雪機構の開発
硬い雪への対応は除雪機における長年の課題。1台の除雪機で幅広いシーンに対応すべくHondaが送り出したのがクロスオーガ<同軸・同時正逆転除雪機構>です。クロスオーガ搭載除雪機の開発に関わった、LPL<開発責任者>の神原さん、DPL<開発部門リーダー>の諸井さん、設計の松澤さんにお話を伺います。
*文章中の「世界初」については2013年時点、Honda調べとなります。
Pioneers
神原 史吉
神原 史吉
株式会社本田技術研究所
ライフクリエーションセンター アシスタントチーフエンジニア
1987年 Honda入社。設計として耕うん機の開発を皮切りに、2001年発売のハイブリッド機構搭載の「HS1390i」から除雪機の開発に参画。クロスオーガ搭載除雪機においては、設計に加えLPL<開発責任者>として開発全体のとりまとめを務めた。
株式会社本田技術研究所
ライフクリエーションセンター アシスタントチーフエンジニア
1987年 Honda入社。設計として耕うん機の開発を皮切りに、2001年発売のハイブリッド機構搭載の「HS1390i」から除雪機の開発に参画。クロスオーガ搭載除雪機においては、設計に加えLPL<開発責任者>として開発全体のとりまとめを務めた。
松澤 康平
松澤 康平
株式会社本田技術研究所
ライフクリエーションセンター スタッフエンジニア
2010年 Honda入社。耕うん機の設計サポートを担当後、初めての開発プロジェクトとして除雪機のクロスオーガ搭載開発に参画し、主要部品であるオーガの設計を担当した。現在は、ロボット芝刈機の開発でLPL<開発責任者>を務める。
株式会社本田技術研究所
ライフクリエーションセンター スタッフエンジニア
2010年 Honda入社。耕うん機の設計サポートを担当後、初めての開発プロジェクトとして除雪機のクロスオーガ搭載開発に参画し、主要部品であるオーガの設計を担当した。現在は、ロボット芝刈機の開発でLPL<開発責任者>を務める。
諸井 篤
諸井 篤
株式会社本田技術研究所
ライフクリエーションセンター アシスタントチーフエンジニア
2007年 Honda入社。幅広い除雪機の商品性開発を担当。クロスオーガの開発では先行検討の段階から性能評価を担当し、2013年の除雪機のクロスオーガ搭載開発ではDPL<開発部門リーダー>としてテストや商品仕様の取りまとめ役を務めた。
株式会社本田技術研究所
ライフクリエーションセンター アシスタントチーフエンジニア
2007年 Honda入社。幅広い除雪機の商品性開発を担当。クロスオーガの開発では先行検討の段階から性能評価を担当し、2013年の除雪機のクロスオーガ搭載開発ではDPL<開発部門リーダー>としてテストや商品仕様の取りまとめ役を務めた。
※肩書きは2020年9月時点のものとなります。

除雪機の課題を解決する、
硬い雪を退治する新たな技術

Hondaがクロスオーガと呼ぶ機構について教えてください。
諸井
雪かきで大変なのは、降り積もって重みでしまった雪、屋根から落ちた雪など「硬い雪」の処理です。通常、除雪機のオーガ<除雪部の刃>は一定方向に回転しているので、機械の能力を超えると除雪機自体が浮き上がってしまうのです。機械の浮き上がりを抑えるには、速度や除雪部の高さを頻繁に調整する必要があります。
神原
クロスオーガは、除雪機の浮き上がりを抑え、硬い雪への食い込みを向上させるため、雪を飛ばすブロアに雪を取り込むための正回転する刃の両端に逆転する刃を加えた機構で、これを一つのシャフト軸で実現しています。
クロスオーガはいつごろから研究されていたのでしょうか。
神原
ベースとなったのは、1993年に発売した耕うん機「FU650」から搭載を始めて同軸正逆転ロータリー技術です。この技術も土への食い込みを狙ったものです。
諸井
除雪機の浮き上がる時に使えるだろうと、技術としてはかなり前から研究していた技術ですね。
どういったきっかけで耕うん機の技術を除雪機に転用しようとなったのですか。
諸井
正逆転の効果は耕うん機で実証されていましたから、ある設計者が「除雪機にも効果があるんじゃないか」と言い始めて、それでテストチームがオーガを試作して、「あうん」の呼吸で始まったと聞いています。
神原
2000年頃はハイブリッド除雪機の開発を一生懸命やっていた時ですから、量産開発とは別に先行検討をやっていた感じですね。
クロスオーガはHSS760n/970n/1170nと小型の除雪機3モデルに搭載されています。
諸井
オーガを正逆転させることは浮き上がり抑止になりますので、この機構を組み込めばどんな除雪機でも一定の効果はあることは先行検討で分かってきていました。一方で、大きな除雪機は浮き上がりを機械自体の重量で抑えることも可能なので、より小さく重量の軽い除雪機の方がクロスオーガの恩恵が高いだろうと考え、搭載機種を決定しました。

量産に向けて、
現場で技術を磨く

2013年はクロスオーガだけではなく大型除雪機のHSL2511も発売されていますね。
神原
我々、クロスオーガの搭載は、設計数名、テスト数名の小さなチームでしたね。
松澤
しかし、設計の3人のうち1人は、当時は配属されたばかりの私です。
諸井
「HSL2511」は大型除雪機のフルモデルチェンジでしたので、会社も力が入っていましたからね(笑)。クロスオーガは、駆動方式にHSTを採用した定評ある小型除雪機をベースにしているので簡単だろうと思われていたのかもしれません。
2つのチームで開発されていたわけですね。
神原
クロスオーガは、技術的にある程度はできあがっていたので、短期間での開発でした。しかし、除雪機はお客様の購入タイミングが決まっている商品なので、生産時期に間に合わせるよう開発するのは大変でしたね。
諸井
この開発をやっている年は、ちょうど雪が多い時期だったので、何とかして2013年シーズンには間に合わせようとチームのみんなが必死でした。
開発を通してエピソードはありますか。
松澤
私は、このクロスオーガの開発が研究所に配属されて初めて開発チームに入ったプロジェクトでした。そして、最初の仕事がオーガを作っているメーカーさんに2週間行ってこいというものでした(笑)。
配属されたプロジェクトの最初の仕事が出張ですか?それは1人ですか。
松澤
初めての出張でしたけど、1人です。もう、まさにHondaの「三現主義」ですね。現場で現物を前に生産の現実を見ることができました。
神原
1人で行かせるのは、少し可哀そうな気もしてましたが、耕うん機の爪や除雪機の刃で長く付き合いのあるメーカーなので預け先としては安心できる会社です。担当者として責任感をもって貰う意味でも1人で行かせて良かったと思いますね。
オーガを製造する協力メーカーに行かれて、どんなことをされるのでしょうか。
諸井
クロスオーガはバネ鋼で刃をつくることになっていましたので、すでにバネ鋼オーガを採用している「HSS1170i」の部品製造の工程をまず見て貰おう、と。
松澤
まず、製造工程をしっかり見て、工程の状況を反映して設計をすることができました。その後も、メーカーさんと金型を作る段階ですり合わせて、金型が出来てからもう一度すり合わせして。モノづくりの段階それぞれを経験することができましたね。
神原
設計は、モノづくりの方法を知らないと図面は書けません。松澤さんが三現主義を実践したのは良いことだったと思います。最近は生産が海外にシフトしているので、同じような経験が積めるとは限りませんから。
オーガの刃の機構にポイントはありますか。
神原
これまで行っている先行検討は、試作用の「一品モノ」です。商品化には量産を前提とした工夫が必要になります。
松澤
クロスオーガは、左右に正転と逆転の刃が必要で、4組の刃で構成されています。さらに、60cmと70cmの2つの除雪幅があるので、できる限り共用化する最適な構成を考えて設計しています。
諸井
オーガの刃は、雪を砕くだけではなく、雪を中央に集める役割りを持っています。しかし、60cmと70cmを共用化すると、60cm幅の方は刃の螺旋が1周しない。理屈上は、刃が1周しないと集雪性能が落ちるんじゃないかと考えていたけど、テストしてみたら意外と性能が落ちない。そうやって、一つ一つ量産に向けて仕様を固めていきました。
開発では、どんな苦労がありましたか。
松澤
出身が福岡なので「除雪ってなに?」と言うところからスタートでして。初めての耐久テストで、雪の壁を前に何時間もひたすら除雪をして、冬なのに汗だくになりながら「雪国って、こんなに大変なんだな」と体感しました。でも、私以外は経験豊富な人ばかり。私の設計したオーガの刃の形が悪いと言われるわけです。
設計とテストチームでどんなやり取りがあったのでしょうか。
松澤
CAE<コンピューター数値解析>では答えが出ない部分もあり、テストチームから「この形、無駄なんだけど。どこまで削れる?」と、言われて対応するという感じでした。
神原
テストに参加して実際に除雪機を使ったことで、松澤さんも開発の意図が分かってきたと思いますよ。
諸井
日程がタイトだから、こっちも「いいから作れ」と必死でした。クロスオーガを成立させるには重量の増加をいかに抑えるかがポイントでしたので、強度を見極めながら、どこまで削れるか、という戦いです。
松澤
その形状の意味を知らずに開発をしていたわけです。やっぱり現場は大切です。

使えば納得する、
クロスオーガの確かな性能

クロスオーガを搭載した除雪機が発売されて反響はいかがでしたか。
神原
発売後、メディアを集めた雪上体験会がありました。最初に、技術説明をするので皆さんが「技術的に凄いことをやってるな」という頭にはなっているんですね。それで使ってみると「これは、すごくイイね」と、すぐに納得していただける。商品に対して自信を持ちましたね。
諸井
お店の反応も良かったですね。「これは売れる」と言っていただけて。ハイブリッド除雪機を出して以来の大きな新技術でしたので、「さすがHondaだね」と言われたのは嬉しかったです。
クロスオーガの実力を知る体験会を実施。厳しい選択眼の除雪機取扱店もその性能に納得した
新技術で新しい価値を生み出せるのは、開発者冥利に尽きますね。
松澤
この除雪機の開発を通して、お客様の使い方を知り、製造の現場を知り、設計としての基礎を身につけ、開発の流れを理解することができました。商品開発の全てを学べたと思っていますし、これほどうまくいった開発はありません。今、別の商品でLPLを担当しているんですが、チームに同じような達成感を持って貰えるように、このクロスオーガの開発を糧に頑張っていきたいと思います。
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