これからの安全運転普及活動

すべての人に事故ゼロと自由な移動の喜びを

Hondaは、創業100年を超える2050年を見据えて2030年ビジョンを2017年に策定しました。『すべての人に、“生活の可能性が拡がる喜び”を提供する』 ことをステートメントとして定め、世界中の一人ひとりの「移動」と「暮らし」の進化をリードするという想いで事業を進めています。
そのなかでも、「クリーンで安全・安心な社会」を実現することはモビリティ企業としてめざす方向性の一つです。そして、我々安全運転普及本部は、“交通事故ゼロ社会の実現をリード”する活動を続けています。しかし、Hondaがめざしているのは、それだけではありません。バーチャルリアリティ(VR)やインターネットの進化により人が移動しなくても、人と人とのコミュニケーションを図ることや、遠く離れた国や地域の様子を知ることができる、一方でリアルな世界においては、モビリティの安全性能が進化すればするほど、誰もがいつまでも安心・安全かつ自由に移動できる、人々の好奇心をかき立てるような新たな移動の喜びを創り出すことが使命と考えています。

交通事故ゼロ社会の実現をめざして

交通事故は、「人」、「車」、「道路環境」の3つの要素のバランスが崩れた時に発生しやすく、逆にバランスがとれていれば事故は発生しづらくなります。例えば、事故をなくすことだけを目的にすれば、人の自由な移動を抑制することも一つの手段になりますが、Hondaがめざすのは「自由な移動の喜び」と「豊かで持続可能な社会」の実現です。安全技術、安全教育活動をより進化させるとともに、それぞれの強い連携とバランスを図っていくことを目的とし、「人の能力(啓発活動)」、「モビリティの性能(技術開発)」、「交通エコシステム(協働、システム/サービス開発)」を新たに“Honda安全3つの要素”として、安全の考え方をより明確に示しました。
安全運転普及本部が担うのは「人の能力」です。運転技術、認知、判断、周囲に対する思いやりといった、心理・精神面まで含めた交通安全につながる人の能力の向上を、運転者に限らず歩行者や自転車利用者、幼児から高齢者、障がい者など、国内外を問わずますます多様化する交通社会に参画する人に対して教育、啓発していきます。
道路交通事情が国・地域、あるいは社会環境で大きく変化するなか、2030年ビジョンの「交通事故ゼロ社会の実現をリード」をより具体的かつ、プロアクティブに実行・実現することをめざし、今回、安全運転普及活動の基本要件を『 交通事故に遭う可能性のあるすべての人に体系化された交通安全教育を戦略的に提案し地域最適な安心・安全と移動の喜びの共感を広め、交通事故ゼロ社会の実現をめざす』と定めました。“Honda安全3つの要素” のバランスをとりながら、“自由な移動の喜び”を最大化する活動を進めていきます。

持続可能な社会に貢献する安全運転普及活動

安全運転普及本部の活動がスタートして50年の今年、未曾有のコロナ禍で交通安全教育も新たな手法の模索が続いています。社会が“非接触”の新しい生活様式に変化し、人の移動も自動車や自転車等、パーソナルな移動が増加するなかで、これまで取り組んできた「人から人への手渡しの安全」、「参加体験型の実践教育」の活動を基本に、一人ひとりに最適化された「アダプティブラーニング」やヘッドマウントディスプレイを用いたVRを活用した「疑似体験学習」など、時代に先駆けた交通安全教育のさらなる進化に取り組んでいきます。
Stay Homeの状況から人の移動が制限され、交通量、交通事故は世界的に減少しています。しかしWHOが2018年に発表した統計によれば、世界の交通事故死者数は年間135万人に上り、2020年2月にストックホルムで開催された第3回交通安全閣僚級国際会議ではSDGsターゲット3.6達成のため、新たな目標として次の10年で交通事故死者数半減を宣言、8月の国連総会で採択されました。
Hondaはステークホルダーの皆様と喜びを共有するために、時代のニーズを先取りした世の中に役立つ独自技術や教育活動で、モビリティ社会の発展に貢献することをめざしています。この考え方はSDGsの目標の達成にも通じ、Hondaの企業活動全般に関わるものです。安全教育活動においても、人命尊重と、交通事故がもたらす大きな社会的・経済的損失を勘案し、事故のない社会をめざすことが持続可能な社会の実現に貢献できるものと考えています。

自由な移動の喜びを社会全体で育てる

Hondaは50年以上前から製品(ハード)と教育(ソフト)の両面から交通安全の実現に取り組んできました。今や交通安全は社会的な課題として関心が高まり、自動車各社は企業の取り組みとして積極的に発信・訴求するようになりました。確かに「事故ゼロ」は普遍的なテーマですが、Hondaの安全戦略において「事故ゼロ」とは、理想とする交通社会の実現に向けた通過点であり、さらなる未来への新たなスタート地点にすぎません。
Hondaの安全のゴールは、社会と安心・安全を共有し、自由な移動の喜びが社会全体で大きく育ち続け、最大化することです。Hondaの安全教育活動は、そのような豊かな未来の一翼を担っていくものと考えます。

Honda安全3つの要素

Honda安全3つの要素