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「一生に一度でいいから運転してみたい」その夢を、どうしても実現したかった。

クラブツーリズム株式会社 ユニバーサルデザイン旅行センター 渕山知弘さん

ツアーの様子はさまざまなメディアで取り上げられ、注目を集めている

クラブツーリズム株式会社では、障がい者を対象とした国内外のバリアフリーツアーを数多く実施している。中でもこの自動車運転体験ツアーは、毎回キャンセル待ちが出るほどの人気商品だ。企画したのは、同社ユニバーサルデザイン旅行センターの渕山知弘(ふちやま ともひろ)さん。ある視覚障がい者の「一生に一度でいいから自分でクルマを運転してみたい」という一言がきっかけだった。「2005年のことでした。まったく無理だとは思いませんでしたね。すぐの実現は難しくても、ぶつかる心配のない広い場所と補助ブレーキ付きの教習車があれば可能なんじゃないか、とその時点でイメージできていました」。
しかし実際には、受け入れてくれる施設はなかなか見つからず、2010年に茨城県内の自動車学校で第1回目を開催するまでに5年かかった。コースや車両、インストラクション、すべてボランティアで提供してもらい非常にありがたかったと話すが、回を重ねるに連れ、善意に頼るだけでは限界があると感じるようにもなったという。
ボランティアではなく、クラブツーリズムとして商品化し実施すれば、より多くの人に機会を提供でき、参加者一人ひとりへの配慮もさらに行き届かせることができる。ビジネスパートナーを探し始めた渕山さんは、知り合いの仲介でHondaの青山本社へ相談に訪れた。
「話を聞き終えたHondaの方が、突然電話をかけ始めたんです。相手は当時のアクティブセーフティ トレーニングパーク所長の新家さんで、旧知の仲だったようです。その場で協力を取り付けてもらい、私はすぐにツインリンクもてぎへ向かいました」。あまりにも早い展開への驚きと興奮が、当時を振り返る渕山さんの話ぶりから伝わってくる。そこからの新家の奔走は、前述の通りだ。「Hondaの従業員数の多さを考えると、私たちの取り組みに共感し、行動してくれる方とピンポイントで出会えたことは本当に幸運でした。ご縁に感謝しています」。
現在はツインリンクもてぎと業務提携し、プログラムのさらなる充実に取り組んでいる。参加者の反響は大きく、満足度の高さはリピーターの多さからも明らかだという。また、障がい者の移動・宿泊・食事を伴うこのような企画が、旅行・観光関係者への大きな投げかけになり、さまざまな気づきに繋がることも期待している。バリアフリー対応していないから無理と決めつけるのではなく、先入観を取り払ってまずは可能性を探ってほしい、そのためならどこへでも説明に行くし、このツアーもどんどん見学に来てほしいのだと語られた。
「夢を見ることは楽しい。実現するのはもっと楽しい」本田宗一郎のこの言葉を、渕山さんは毎回必ず参加者に紹介している。「夢をしっかり考えているHondaだから、このプログラムが実現できるのだと思います」。

乗る前から笑顔。運転した後も笑顔。喜びがあふれた、充実の2日間。

明るい笑顔が印象的な大脇多香子さん

初運転の感想を話す野地美行さん

昔からのHondaファンという小沢繁之さん

この視覚障がい者向け自動車運転体験ツアーには、これまでに延べ141人が参加。毎回たくさんの応募があるが、安全面や満足度の観点から、1回の定員は16人を上限としている。今年9月に実施された第10回の会場で、参加者に話を聞いてみた。
ご主人が無限RR(ホンダ・シビック・タイプRをベースにした限定コンプリートカー)に乗っているという大脇多香子(おおわき たかこ)さんは、インストラクター同乗車両がシビック・タイプRだと知り、「聞き慣れたV-TECHエンジンの音だとわかります!」とうれしそう。運転中の家族がどんな操作をしているのか、今回初めて知ることができ、その忙しさに感心したそうだ。「クネクネした山道を走るのが好きな主人の気持ちが、少しわかったような気がします」と笑顔を見せる。
同じく初参加の野地美行(のじ よしゆき)さんは、自宅の駐車場に“愛車”を持つほどのクルマ好き。時折乗り込んでは、アクセルをあおって楽しんでいるという。走行中、エンジン音の変化を聞きわけて回転数を当てるという特技で周囲を驚かせた。「ハンドルの軽さやブレーキの感覚が新鮮だった。やっぱり実際に走らせてみないとわからないこともありますね。今までは頭の中で想像して楽しむだけだったのが、本当に運転できたんだと思うとすごくうれしいです」。
参加メンバー15人のうち、リピーターは8人。3度目となる小沢繁之(おざわ しげゆき)さんは、カーブを曲がるコツやスラロームの走り方など、回を重ねるごとに自分なりの上達を実感しているという。今回は窓を開け、風や虫の声を楽しむ余裕もあった。その一方で、「ワクワクする気持ちは何度来ても変わらない。だからまた走りたくなるんです」と、早くも次回への期待を話してくれた。

安心・安全なモビリティ社会を目指して。そして、移動の喜びをこれからも多くの人へ。

2日間のツアー中、どの参加者も楽しそうな笑顔を浮かべていたのが印象的だった。自分で運転できたことはもちろん、インストラクターやスタッフの過剰ではない行き届いた対応や心遣いにも、満足の声が多かった。
視覚障がい者の「自動車の運転をしてみたい」という夢をかなえた世界初のこのツアーは、ツーリズム業界からの注目度も高い。国内外の団体・組織・企業による持続可能な優れた取り組みを表彰する「ジャパン・ツーリズム・アワード」において、ユニバーサルツーリズムの発展への大きな一歩となり、今後のさらなる拡大が期待される取り組みとして評価され、主催するクラブツーリズムは「国内・訪日領域優秀賞」を受賞された。このアワードは国民の観光に対する理解と認識を深めてもらう目的で昨年創設され、第2回となる今回は昨年を大きく上回る158件の応募の中から、特に優れた取り組みが表彰された。

すべての人が、心から安心して、どこへも自由に移動することができる。そして、運転する喜びを誰もが享受し、分かち合うことができる。そんな交通社会の実現を目指すHondaの安全運転教育活動は、これからも幅広い分野で続いていく。
インストラクターの佐藤は言う。「さまざまな安全運転教育を通して、クルマやバイクの楽しさを多くの人に伝えていきたい。そして、健常者、障がい者、すべての人にとって安心、安全な交通社会をつくるために、私たちにできることを継続していきたいと思います」。

左から、アクティブセーフティ トレーニングパーク 佐藤秀徳、鈴木正司


※掲載情報は取材当時のものです。登場人物の所属・役職は当コンテンツ公開時のものも含まれます。