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まずは不安を取りのぞくことから。見えなくても、運転の楽しさを知ってほしい。

ツインリンクもてぎ アクティブセーフティ トレーニングパーク 佐藤秀徳

目が見えない参加者にとって、「ぶつからないか」という不安は非常に大きい。その不安をやわらげるところから運転体験は始まると、佐藤秀徳(さとう ひでのり=ツインリンクもてぎ アクティブセーフティ トレーニングパーク)は話す。「安全運転研修用につくられたコースなので、大きな段差や側溝がなく、緊急時は助手席のインストラクターが補助ブレーキを踏むので心配もない。とても広いので多少コースを外れても大丈夫ですよ、と事前に説明します」。
立体的に描けるペンを使ってコース図をつくり、指でなぞってレイアウトをイメージしてもらう。運転席に乗り込んだら正しい姿勢を指導し、アクセルとブレーキの位置を確認。ハンドルを時計の文字盤に見立て、左手の位置を「9時」「10時」「11時」と指示を出していく。「お客様はインストラクターの声だけが頼り。運転という動作をいかにわかりやすく言葉で伝えられるか、常に意識しています」。
まっすぐ走る、カーブを曲がる、ブレーキで止まる。これらの基本動作に加え、プログラムには急ブレーキ体験も含まれている。公道で運転することはないのになぜ?という疑問に、佐藤は次のように答えた。「健常者のドライバーでも、急ブレーキをかけたのは教習所くらい、という人がほとんどでしょう。しかし万一の時には、交通事故防止のためにクルマを急停車させる必要があります。その時どんなふうにクルマが止まるのか、どれくらいの衝撃があるのか、知っておくことは同乗者にとっても大切です」。参加者はまず助手席で、さらにドライバーとして自らペダルを踏んで、急ブレーキを体験する。正しい運転姿勢やシートベルトの必要性を体感してもらうのも狙いで、普段のクルマ移動の際にもぜひ役立ててほしいと話す。
ツアー参加者の約半数はリピーターということもあり、知識やテクニックには差がある。それぞれの能力を見極め、安全に配慮しながら言葉だけで指導する難しさを語りながらも、佐藤には笑顔がこぼれる。「せっかくの貴重な機会ですから、思いきり楽しんで満足して帰ってほしい。私たちが目指す満足度は、満足ではなく”大変満足”です」と語った。

乗車前に運転ルートをなぞって確認

左カーブでは左手の位置を「9時」から「8時」へ

スラローム走行にも挑戦

冷静に、丁寧に、わかりやすく。言葉だけで伝える難しさは、指導員としての収穫。

ツインリンクもてぎ アクティブセーフティ トレーニングパーク 鈴木正司

インストラクター同士の連携もスムーズ

Hondaが展開している交通安全教育の対象は、白バイ隊員から民間企業、一般の親子や学生など幅広い。高齢者やリハビリ加療中の方向けのプログラムも実施しているが、視覚障がい者に運転を指導するのは初めての取り組みだった。 当然、これまでの指導方法では対応できない。インストラクターの鈴木正司(すずき しょうじ=ツインリンクもてぎ アクティブセーフティ トレーニングパーク)は、「最初に聞いたときは、大丈夫なんだろうか?本当にできるのか?と不安を感じました」と振り返る。ただ、アイマスクを着けて見えない状態を体験しながら指導方法を練習していくうちに、新たに気づくことも多かった。「目の見えない人に伝えるための表現を考えることは、自分のインストラクション技術の向上に繋がると思いました」。
たとえば同じ全盲でも、もともとは見えていた後天性と、生まれつき視力がない先天性とでは、クルマについて持っている情報量が違う。また、日頃乗り馴れているインストラクターと、運転経験ゼロの参加者とでは、「踏む」「押す」などの感覚にもズレがある。知識や経験の差に応じて指導する難しさを、毎回実感すると話した。
特に気をつけているのは、落ち着いた行動、そして落ち着いた声の出し方だ。「お客様は、運転体験に同乗するインストラクターのちょっとした緊張や動揺も、声から敏感に感じとってしまう。アクセルを離すタイミングやブレーキの踏み具合がこちらの指示と少し違っていても、慌てずに次の指示を出します。不安を伝播させることなく安全に運転してもらえるよう、冷静な行動と話し方をいつも心がけています」。
たくさんの人に喜んでもらえることが一番のやりがいだという。「クルマが初めて動いた瞬間のお客様の表情、言葉にならない声、一人ひとりの感激が伝わってきて、ずっと忘れられないですね。目の見えない方がクルマを運転するというのは、健常者が感じるよりもはるかにハードルが高く、まさに夢のような出来事なんだと思います。いきなりジェット機の操縦を任されるような感じかな、などと自分なりに想像して、その夢の体験をサポートできる喜びと責任を感じています」。