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運転を楽しんでいただくために、軽サイズ・オープンスポーツに込めた安心。

S660の走行シーン@ S660の走行シーンA S660の走りのよさと耐衝突性の向上を高度に両立させた高剛性ボディ

S660の走りのよさと耐衝突性の向上を高度に両立させた高剛性ボディ

軽自動車サイズのコンパクトなボディに、エンジンをミッドシップ(座席後方)に搭載し、開放感あふれるオープンスタイルでつくりあげたスポーツカー、S660。2015年4月に発売して以来、多くの方から注目を集めるとともに高い評価をいただいています。
S660が目指したのは、乗り手を選ぶ特別なスポーツカーではなく、誰もが感じることができる走りの楽しさ。交差点でステアリングを切った時、信号待ちからスッと走り出した瞬間、高速道路への合流といった日常のさまざまなシーンで、運転することが楽しいと実感できる気持ちよさです。
このクルマの開発に携わったすべてのスタッフに共通していたのは、乗るたびにワクワクするようなみんなが笑顔になれるクルマをつくりたいという想いでした。それは、走行フィーリングやデザインなど直接お客様に訴えかける分野はもとより、人の目には触れることのない、万一の際の衝突に対する技術開発に関わるスタッフも同じでした。安心が高いレベルで備わってこそ心おきなくドライブを楽しんでいただける。自分たちの力でS660の気持ちいい走りをしっかり支えよう。そんな情熱が注がれました。
すべてのクルマの基本である安心・安全。そしてクルマの基礎であるボディ骨格。その開発には、近年のHondaになかった軽サイズのミッドシップ・オープンボディゆえの新たな工夫やチャレンジがありました。また、Hondaが独自に進めてきた新開発のエアバッグをこのクルマから採用するなど、先進の技術が投入されています。
本田技術研究所 四輪R&Dセンターを訪ね、S660の衝突安全に関わる開発に携わったスタッフに話を聞きました。


●シンプルな構造でボディの剛性と衝突に対する安心を成立させる、「素」のよい骨格をつくろう。

衝突強度・耐久部門のPL 坂元玲

衝突強度・耐久部門のPL 坂元 玲

衝突実験は多くのスタッフにより様々な角度で検証される@ 衝突実験は多くのスタッフにより様々な角度で検証されるA

衝突実験は多くのスタッフによりさまざまな角度で検証される

S660が誕生するきっかけは2010年に遡る。本田技術研究所設立50周年を記念して行われた新商品提案コンペで一台の小さなスポーツカーが選ばれ、商品化が決定したのだ。開発チームの編成にあたっては、各開発部門のPL(プリジェクトリーダー)を社内公募制で募る異例の方式で行われた。15人ほどの募集に、手を挙げたのは150人以上。自分も参加したい、こんなクルマをつくってみたいと、多くの技術者がこのクルマを魅力的に感じていたのだ。
衝突強度・耐久部門のPLに選出された坂元 玲(さかもと れい=本田技術研究所 四輪R&Dセンター)もその一人だった。
「軽でオープン2シーターの企画があると知って、やってみたいと思いました。自分が欲しいと思えるクルマでしたね」
坂元はそれまでアコードやシビック、フィットなどさまざまな機種開発の側面衝突を主に担当してきたが、大きなチャレンジがしたいと思っていたころだったと言う。
衝突安全チームを率いることになった坂元には、常日頃から安全に携わる者としての信念があった。
「お客様にHonda車は安心だと思っていただけるよう、我々はどの機種であっても絶対に手を抜いてはならないのです」。しかし今回は、それだけではないと感じた。
「このクルマの楽しさのために衝突安全技術は目立ってはいけないと考えました」
衝突時の車両が主に衝撃を受けるのはボディ骨格である。同時に、ハンドリングや乗り心地といった走りの資質を左右するボディ剛性においても根幹を成すため、骨格はクルマの性能を支えるうえで重要となる。そのため通常の機種開発の場合、衝突安全、剛性とも基本骨格に補強材を加えそれぞれの効果を高めていくことがある。だがS660の場合は、その方程式では成立しないと坂元は考えたのだ。
ミッドシップのオープンカーというパッケージング特性と優れた運動性能を考慮すると、剛性を高めるために各フレームは太くなる。S660にとって、これは衝突に対しても効果的であった。しかし軽自動車だけにスペースに余裕はなくなる。補強材を加えようとすれば、座席位置や足元のペダルスペースに影響を及ぼしかねないのだ。
「耐衝突性向上のための補強材であっても、運転に違和感を与えてしまうようなことはしたくなかったんです」
剛性チーム、設計チームとの検討が重ねられた。その結果、フロント、サイド、リアのフレームを直線となめらかな曲線で一本につなぐ構造を採用することになった。
「フレームの構成をシンプルにしながら耐衝突性の向上にも剛性の向上にも効果を発揮する、いわば『素』のよいボディをつくろうと考えました」と話す坂元は、チームのスタッフにこのボディは“素うどん”だと説明していたと言う。素の状態がしっかりできていれば、ステアリングや足回りのセッティングなどで走りの味付けの幅が広がる、ということだ。
シンプルにつくることで耐衝突性の向上を成立させよう。走りの「礎」をつくり上げることで運転の楽しさを支えていこう。それがチームの目指す方向となった。ただしそれを実現させるためには、今まで経験したことのない新たな工夫やチェレンジが必要だった。