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パワープロダクツ The Topics

鈴鹿8時間耐久ロードレースで
最初に準備するのは
【発電機】です

「ハチタイ」の愛称で知られるFIM世界耐久選手権・鈴鹿8時間耐久ロードレースは、オートバイファン以外にもその名を知られている、国内外で知名度の高いレース。
真夏の三重県・鈴鹿サーキットで開催される、文字通り8時間を走るレースで、1978年に第1回大会がスタートしてから今年で45回目の開催。世界に誇る日本のビッグレースです。
鈴鹿8耐は、1990年大会の日曜日(決勝レース)だけで16万人の観客動員を記録。2024年大会は猛暑の影響もあって5万8千人と、数字の上では減少しましたが、日本で最大級のオートバイレースであることに変わりはありません。

鈴鹿8耐は、真夏の炎天下を8時間も走るレースだけに、主役はライダーばかりではありません。午前11時半にスタートして約1時間に1度、マシンがピットに戻って給油してタイヤを交換し、ライダーが交代する。その時、マシンを受け取り、送り出すために忙しく動き回るメカニックたちもまた、レースの重要な登場人物なのです。

約1時間に1回、給油とタイヤ交換、ライダー交代のためにピットは慌ただしくなる

「桜井ホンダは、オートバイの販売店なので、レースに携わるスタッフも販売や修理、整備の仕事をしながらのレース活動です」と話すのは、Honda DREAM桜井ホンダのチーフメカニック、河野保さん。桜井ホンダは東京都内を中心に5店舗を展開しているオートバイの販売店で、従業員がチームスタッフとなって、鈴鹿8耐と全日本ロードレース選手権シリーズに参戦しています。
桜井ホンダが鈴鹿8耐に参戦を始めたのは1990年。2016年の熊本地震の年をのぞいて参戦を継続しています。 「レースに携わるスタッフは、従業員の中から希望するスタッフや適性の高いスタッフが参加しています。今年は15人ほどが参加しました。ライダー以外はすべて従業員というのもレース業界では珍しいかもしれませんね」(河野さん)

チーフメカニック・河野保さん
決勝レースに向けて、夜間もマシン整備に余念がない桜井ホンダのスタッフ

桜井ホンダがレースに参戦する目的は、オートバイ販売店の従業員として、Hondaの最高峰スポーツバイクを使用したレースを通じて整備や修理のスキルを上げることにあります。これは、レースを通しての従業員教育、若手育成といった側面を持っています。
それだけではなく、桜井ホンダは2003年に鈴鹿8耐で優勝し、全日本ロードレース選手権でも2004年にシリーズチャンピオンを獲得するなど、プロフェッショナルなレーシングチームにも引けを取らない実績を持つチームでもあります。
そして桜井ホンダではレース開催日に店舗のお客様とサーキットまでツーリングをして応援に出かける観戦ツアーも企画。今年の鈴鹿8耐でも、200名近いお客様が参加されていました。

キャンプサイトで宿泊する桜井ホンダの観戦ツアーの参加者

チーフメカニックの河野さんは、1993年に桜井ホンダに入社。河野さんがレースに携わり始めた頃と比べると、レース現場の環境は大きく変わりました。スタッフの業務は分業制になり、ピット周辺の環境も整備されました。今ではレースに欠かせない新たなツールも大幅に増えました。


「大きな変化は、レース中に使う電子・電気機器が増えたことですね。データを管理するパソコンをはじめ、電動ツールも増えました。何より大きいのがタイヤの温度を管理するタイヤウォーマー。現代のレースでは、タイヤウォーマーがいちばん重要なツールかもしれません」(河野さん)

ピット内でタイヤ温度を厳密に管理するタイヤウォーマー

タイヤウォーマーとは、文字通りタイヤを温めるツール。レース用タイヤは、厳密に温度管理をしなければ性能を発揮しない前提で作られていて、常時使用する時の温度は60℃以上。80℃に設定したタイヤウォーマーで、走行の2時間ほど前には温度管理をスタートさせます。
「いまのレースでは、タイヤの性能を最大限に発揮させて使いこなすことが速く走る、上位入賞を狙う上での常識です。タイヤの暖まりが不充分だと、僕らライダーはすぐにわかりますし、思い切って走れない。すると上位入賞も狙えなくなります」というのは、2022年から3年連続で桜井ホンダから鈴鹿8耐に参戦した日浦大治朗選手。

日浦大治朗選手

「サーキットのピットにも電気は供給されていますが、多くのチームが限られた電気を取り合うような状況で、容量オーバーでブレーカーが落ちることもあります。そのため、絶対に電源を落とせないタイヤウォーマーのために、我々はHondaの発電機(EU55i)を使用しています。発電機を使うようになって、電源が落ちる心配がなくなりましたね(笑)」(河野さん)

ピット裏にセッティングされた発電機・EU55i

「発電機は、サーキットに到着してピット設営をするときに、最初に設置をします。まずは発電機とタイヤウォーマーの設置。それくらいタイヤウォーマーは重要なんです」(河野さん)
日浦選手とペアを組んだのは桜井ホンダから全日本ロードレース選手権に参戦している伊藤和樹選手。今年の鈴鹿8耐では、伊藤選手がレギュラーライダーということもあって、伊藤選手が普段レースで使っているマシンをベースに、8耐用マシンを組み上げていきました。

伊藤和樹選手

「レースのない日もサーキットで練習するんですが、練習の時もタイヤウォーマーを使用することもあるので、いつもクルマに発電機を積んでいます。そして、今年の4月からHondaが主催するエンジョイホンダでパワープロダクツブースの説明員を担当するようになってから、発電機についても勉強したので、少し見る目も変わりましたね」
多くのチームが3人体制で参戦する中、桜井ホンダは日浦選手と伊藤選手のふたりで2024年の鈴鹿8耐に挑みました。

ポータブルな発電機EU18iは電源のないグリッド上でタイヤウォーマーに電気を供給する


レースでは日浦選手が3回、伊藤選手が5回の走行をして大きなトラブルもなく桜井ホンダは見事に6位入賞。優勝したTeam HRC with 日本郵便や世界耐久選手権にレギュラー参戦する各メーカーのチームを除けば最上位でゴール。オートバイ販売店を母体とするチームとしては、快挙と呼んでもいい結果でした。


19時30分にチェッカーフラッグが振られ、8時間の戦いに幕が降りた

「6位という結果には満足しています。レースウィークが始まってから決勝レースが終わるまで、大きなミスもなく、本当にうまくいったレースでした。あまりの暑さに、ライダーはふたりとも自分の走行周回数を勝手に短縮して(笑)ピットに入る、ってことはありましたが、それにもスタッフはきちんと対応して、ライダーだけでなく、スタッフも本当にミスなく頑張りました。上位5チームは、世界的な錚々たるビッグチームですから、本当にうまくいった、いい8耐でした」(河野さん)

チェッカーフラッグ後、ピットロードに帰ってきた伊藤選手を称えるチームスタッフ・関係者

8耐は結果だけがすべてではありません。桜井ホンダでは、河野さんが若いころに先輩から受け継いだことを後輩スタッフたちに伝え、その伝統は今でも脈々と受け継がれています。
また、ライダーも30歳の日浦選手から、高校在学中にはレース活動を封印し、その後に本格的にレース活動を再開した23歳の伊藤選手へスキルや考え方が伝承されていきます。
それが鈴鹿8耐、それを陰でサポートしているのが、Hondaのパワープロダクツなのです。