発電機編 Vol.02発電機に革命をもたらしたHondaのインバーター発電機
当時は、安価な2ストロークエンジン搭載の商品が主流で4ストロークエンジンを搭載したHonda発電機の良さが市場でなかなか広がりを見せませんでした。
しかし、1998年に発売したGENE21シリーズが Honda携帯発電機の未来を大きく切り拓きました。
Hondaが携帯発電機の販売を開始すると、発電機という製品そのものの認知が広がりはじめ、1970年代になると、業務用や防災用、さらにレジャー用に至るまで、世の中に多くの発電機が販売されるようになりました。
しかし、Hondaは1kVA以下の小型携帯発電機分野では、他社と比較して価格や重量面で厳しい状況にありました。
理由は、発電機の動力源であるエンジンにありました。Hondaは高い燃費性能で静音性にも優れ、排出ガスもクリーンな4ストロークエンジンを使用していましたが、これに対して他社は構造が簡単で部品点数が少なく、低価格の2ストロークエンジンを採用し、Hondaの発電機は重量や価格面で苦戦していたからです。それでもHondaは、4ストロークエンジンを搭載する発電機にこだわりました。
これに対して1kVA以上の出力の発電機市場では、Hondaの発電機は評価されます。1973年には「消音型携帯発電機」として、軽自動車ライフの水冷4ストロークエンジンを搭載した5kVAのEM5000・3相5kVAのET5000を発売。EMシリーズは、夜間の工事でも使用可能とするため、開発の最終段階で、開発責任者が真夜中の自宅前で試運転を実施して、隣近所に気付かれなかったほどの静粛性を実現し、工事現場だけではなく、映画やテレビの制作現場などでも幅広く使用されました。
大出力かつ低騒音の発電機「EM5000」
そして1979年には、小型携帯発電機の新製品として、「デンタ」の愛称を持つEX400・EM400・ED300の販売を開始。Honda初代の携帯発電機E300の基本コンセプトである『小型軽量』『高い静粛性』『使いやすさ』という特性に注力して開発したEX400は、海外を含めて年間10万台以上を販売するヒット商品となりました。
「デンタ」の愛称で親しまれたEX400
また、1987年には『小型軽量』を更に追及し、幅広い人が手軽に持ち運べる「ポシェットジェネレーター」をコンセプトとするEX300を発売。当時の同出力クラスの小型携帯発電機の多くが20kg前後の重量だったのに対し、EX300は8.5kgと、大幅に軽量化することに成功しました。
EX300はHonda小型携帯発電機として初めて2ストロークエンジンを採用しました。EX300は静粛性に注力し、2ストロークエンジンながら、家庭用エアコンの室外機や商店の店内で聞く生活騒音程度の50dB(150VA時〈A〉/7m)という低騒音を実現しました。
「誰でも手軽に持ち運べるポシェットジェネレーター」をコンセプトに掲げたEX300
そしてEX300で、Hondaとして初めて搭載した技術がインバーターです。
インバーター回路によって安定した周波数の発電が可能となり、高効率で使いやすい発電機へと前進しました。一方で、電気の波形の関係で一部対応できない機器があるという課題も残っていました。1996年に発売したEX500では、この課題をカスタムIC(集積回路)を搭載するなどによる正弦波インバーター発電システムによって解決。
Hondaが携帯発電機にいち早く採用したインバーター技術は、その後の発電機に欠かせない機能となるほどの画期的なメカニズムだったのです。
正弦波インバーターを搭載したEX500
1990年代中盤、パソコンに代表される精密電子機器が急速に普及し、携帯発電機にも、より高品質な電気供給が求められるようになりました。こうした時代の変化を背景に、Hondaは次世代携帯発電機「GENE21」の開発を開始。
その開発目標として掲げたのが、壁コン(=壁にある家庭用コンセント)に負けない、きれいな電気を作り出すことでした。
この構想をもとに開発された「GENE21」シリーズは、1998年にEU9i・EU24i・EU28isとして市場に投入されます。マイコン制御式正弦波インバーターを搭載したこれらのモデルは、精密電子機器にも対応できる高品質な電気を供給できる携帯発電機として、新たな価値を提示しました。
世界で初めてマイコン制御式正弦波インバーターを採用したEU9i
良質な電気をつくる「正弦波インバーター」への進化
さらにGENE21シリーズでは、電気の質を高めるだけでなく、発電機の構造そのものも見直されました。下のイラストに示すように、従来はエンジンに外付けされていた汎用型のオルタネーターを廃し、高速多極オルタネーターを新たに搭載。これにより、大幅な小型・軽量化を実現しました。
「EU9i」「EU24i」「EU28is」は、発電システムとしては従来の約1/3の軽量化を達成し、発電機全体として約1/2の超軽量・小型化を実現。
その結果、1985年発売の3kVA出力のEM3000が84kgだったのに対し、2.8kVA出力のEU28isは59kg、1994年発売の900VA出力のEG900が30.5kgだったのに対し、EU9iは13kgと、同等出力で大きな軽量化を果たしています。
また、樹脂製カバーで覆われたデザインのEUシリーズは、その静粛性も大きく評価されることとなりました。
1kVA以上の出力の発電機市場でHonda製品が評価されていた、エンジンの耐久性や低騒音、燃費性能や軽量コンパクトさに加え、発電機市場でいち早く手軽にきれいな電気を生み出せるようになったことで、Hondaの携帯発電機の優秀性は広く認知されるようになりました。
赤いボディのHonda発電機が世界中の市場で高品質ブランドとして認知され、大きく普及していったのです。