パワープロダクツ Behind The Scenes

意外なところで活躍している
Hondaパワープロダクツの世界をご紹介します。

全日本ロードレース参戦で人を育てる企業

日本のモーターサイクルレースの最高峰、全日本ロードレース選手権。各メーカーの威信をかけて参戦するワークスチームや、レース活動を母体としてパーツ制作・販売を主軸に活動するチームがある一方で、レース参戦を「人材育成と企業成長の場」と捉えているチームがあります。そんなチームを支えるHondaパワープロダクツをご紹介します。

国内有数のHonda二輪車販売店と、モビリティ関連の研究開発企業。
それぞれの人材育成の考え方。

「Honda Dream RT 桜井ホンダ」は、日本でも有数のHonda二輪車販売台数を誇る販売店を東京都内で展開する「株式会社桜井ホンダ」が運営するチーム。レースへの参戦は古く、1990年から最高峰クラスや鈴鹿8耐に参戦し、全日本ロードレース選手権や鈴鹿8耐での優勝経験もある名門チームです。

そして「Team ATJ」は、二輪・四輪・汎用製品を問わず、モビリティ開発に必要な設計、解析、研究を行なう企業「株式会社オートテクニックジャパン」が運営するチーム。「オートテクニックジャパン」は、Hondaの二輪車や四輪車の研究、開発も手掛けていることから、レースにもHonda車を使って積極的に参加しています。

販売店の整備士が、極限の現場で飛躍する

「Honda Dream RT 桜井ホンダ」のチームスタッフは、すべて「(株)桜井ホンダ」の社員です。つまり二輪車販売店のメカニックスタッフで、普段から販売や修理に携わっているプロフェッショナルの整備士ですが、レース場での仕事は普段の業務とは別次元です。ミスは許されず、極限まで細かく研ぎ澄まされた調整を限られた時間内で達成し、ライダーの要望に応えたマシンを提供する必要があります。

Honda Dream RT 桜井ホンダ チームマネージャー・河野さん

「レースでは、極限の場で作業をするので、レースを経験すると店に持ち込まれる二輪車の一般修理や整備が難なく行えるようになることが多いですね。会社としては、それを狙っていますし、その狙いは桜井ホンダがレース活動を始めた時(1990年)から変っていません」とは、チームマネージャーの河野 保さん。チームスタッフとしてレースに帯同し、レース活動で精神面や技術を磨いたことで、桜井ホンダや他の販売店で整備の責任者を務めているスタッフも多いそうです。

自ら考え動く力を育む、Team ATJの挑戦

Team ATJ チームマネージャー・中津原さん

Team ATJが会社として全日本ロードレース参戦を正式に開始したのは2019年です。それ以前は、現在「Team ATJ」のチームマネージャーを務める中津原尚宏さんが、同好会活動として参戦していました。2019年以降は、桜井ホンダと同じく、チームスタッフの全員が「(株)オートテクニックジャパン」の社員で構成されています。もちろん、普段から開発を介して二輪車や四輪車に接しているプロフェッショナル達ですが、メーカーから委託・依頼される業務が多いため、どうしても指示を待って作業をする、という瞬間があるのだそうです。

「レースの現場で指示を待っていては結果が残せません。自分で考えて、自分で動くことが当然のように求められます。しかもライダーの要求は、細部に渡ります。このような環境に身を置いて緊張した作業を繰り返すと、自ら考え、自ら動くという能力が確実に伸びます。この経験を会社に持ち帰って、業務に活かすことで、会社にも、そして取引先や一緒に仕事をする仲間にも貢献できるようになります」(中津原さん)。会社も「モータースポーツ企画室」という部署を設立させて、レース参戦を正式に業務として取り組み、レースで人材を育てて、この影響を幅広く社内に広げたい意向のようです。

ライダーも実感する、チームとお客さまの一体感

「(株)桜井ホンダ」と「(株)オートテクニックジャパン」、その狙いや思いは、レースを走るライダーにも伝わっています。

伊藤 和輝選手

2023年から「Honda Dream RT 桜井ホンダ」のライダーを務める伊藤 和輝選手は、二輪車販売店が運営するチームならではの雰囲気を教えてくれました。

「Honda Dream RT 桜井ホンダ」では、桜井ホンダのお客さんがレース場まで二輪車ツーリングで応援に来てくれた上に、ピットやパドックにも顔を出してくれるそうです。

「僕のメカニックが働く店のお客さんと挨拶をしたり、レースのことを話すこともありますが、こんなフレンドリーなチーム、他には知りません。鈴鹿8耐の厳しい状況での走行の時も『みんなが応援してくれている、諦めちゃだめだ』って思うこともありますからね」と伊藤選手は語ります。

岩田 悟選手

2019年の「Team ATJ」正式参戦時からライダーを務めている岩田 悟選手は、自身の成績だけではなく、チームスタッフや後輩ライダーの育成も考えてレース活動をしています。

「チームのスタッフは、全員が二輪車や四輪車に携わる点ではプロフェッショナルですが、レース活動の経験はありません。だから僕は、支えてもらうというより『チームスタッフ全員でレースをする』という“チーム意識”向上を図っています。企業の従業員がスタッフを務めるということは、次に担当するスタッフも従業員です。この“チーム意識”が浸透すると、スタッフがチームを卒業したとしても、卒業したスタッフが新しいスタッフに、この意識を伝えていく。それが結果としてTeam ATJの総合力強化と、オートテクニックジャパンという会社の力になると思うんです」と岩田選手は強く語ってくれました。

最新設備の舞台裏で活躍する、Hondaパワープロダクツ

両チームを陰で支えているのがHondaパワープロダクツです。レース場は、様々な機材や用品、さらに電化製品など、多くの電源を必要とする場です。レース場に備え付けの電源は、各チームが一斉に使用することもあって、ブレーカーが落ちることもあります。そのため、最新設備が整ったレース場に於いても発電機は欠かせません。

Honda Dream RT 桜井ホンダのピット裏に設置され、レースに欠かせない電源を供給するHonda発電機EU55is

レース用タイヤの温度管理を行うタイヤウォーマー。EU55isからの電気はここに供給されている。

特にロードレースでのタイヤの温度はレースを左右することがあります。タイヤの温度が適切でなければ、上位入賞どころか安全に走り出すことも出来ません。タイヤを温めて適切な温度を維持する機器を「タイヤウォーマー」といいます。そして、この「タイヤウォーマー」に電気を供給しているのがHondaの発電機「EU55is」です。豊富な電気を安定的に供給可能なHondaの発電機が、「Honda Dream RT 桜井ホンダ」と「Team ATJ」の活躍を陰で支えているのです。

また、タイヤウォーマーは、レーススタート前、コース上に予選の順番でマシンを並べるスターティンググリッドでも使用します。ここでは、Hondaの携帯型発電機「EU18i」が電源を供給しています。

スターティンググリッド上では、携帯型発電機のEU18iがタイヤウォーマーに接続され、適切な温度管理を行っている。

さらに、「Team ATJ」ではライダーが休息をとり、精神集中する控室をトラックの荷台部分に用意して、そこに設置したエアコンにHonda発電機「EG25i」が電気を供給するなど、普段はなかなか注目されない様々なシチュエーションで、Hondaのパワープロダクツが全日本ロードレース選手権参戦をサポートしています。

Team ATJのトラックにはエアコンが設置され、その電源はHonda発電機EG25iが供給している。このトラックの中はライダーが休憩やレース前に集中するための大切な場所となっている。

レースを離れ、走りのプロが説明員としてHondaの魅力を解説

伊藤選手と岩田選手は、レースとは違った形でHondaパワープロダクツと関わりがあります。Hondaでは年に4回程度「Enjoy Honda」というイベントを開催しています。Enjoy Hondaは、二輪や四輪、パワープロダクツ製品やモータースポーツなど、様々な『Honda』を大人の方からお子さままでご家族そろって楽しんでいただけるイベントです。伊藤選手と岩田選手は、この「Enjoy Honda」のパワープロダクツブースで、説明員を担当しているのです。

Enjoy Hondaでお客様に蓄電機の説明をする岩田選手

「Enjoy Hondaに来ていただくお客様は、四輪車や二輪車に詳しい人ばかりではないです。ご家族連れやお子さんたちにも、Honda製品が楽しくて面白いことを説明するのが少し得意になりました」と岩田選手。

Enjoy Hondaでの伊藤選手

「最初は戸惑いましたが、今では展示を見てくれるお客様に、僕の方から話しかけることも増えました。少し慣れてきたし、せっかく会場に来ていただいたので、楽しんで帰ってもらおうという気持ちが出てきました」と伊藤選手。

Honda パワープロダクツは、全日本ロードレース選手権と密接なパートナーシップを築いています。