パワープロダクツ Behind The Scenes

意外なところで活躍している
Hondaパワープロダクツの世界をご紹介します。

佐賀インターナショナルバルーンフェスタをサポートするHondaパワープロダクツ

佐賀県の佐賀平野を南北に流れる一級河川、嘉瀬川。
その河川敷の空を、年に一度100機以上の熱気球が舞うイベントがあります。
熱気球ホンダグランプリ佐賀インターナショナルバルーンフェスタ。
5日間の開催で、延べ80万人以上の観客が毎年詰めかける九州最大級のビッグイベントです
1980年に初めて開催されたこのイベントに
Hondaパワープロダクツは欠かせない存在なのです。
毎年11月上旬の、まだ夜も明けきらない午前5時半、JR九州・長崎本線の「バルーンさが」駅に多くの人々が降りてきます。「バルーンさが」駅はバルーンフェスタの期間だけ開設される臨時駅。親子連れやカップル、ビジネスマンや制服姿の中高校生も、出勤や通学前に嘉瀬川の河川敷に立ち寄るのです。
「今年は僕が誘って、友だち5人で来ました」というのは、いつもはもうひとつ隣の駅を利用するという県立高校生。彼らは毎年のようにこの時期、始発の電車に乗って河川敷にやって来るとのことで、彼らにとって佐賀インターナショナルバルーンフェスタは、年に一度の、実に身近なイベントなのです。
ここ嘉瀬川の空を初めてバルーンが舞ったのは、1980年。1978年に福岡県甘木市で初開催された「バルーンフェスタ in 九州」が、1980年に会場を佐賀平野に移してスタートしたもので、それから佐賀は、日本どころか世界を代表する「熱気球のまち」として知られるようになったのです。
佐賀インターナショナルバルーンフェスタは、1980年の大会で約3万人だった観客が、1983年には10万人を超え、1989年にアジア初の熱気球世界選手権として開催された大会では、116万人を超える大観衆を動員。2025年までの累計観客動員では、ついに3,000万人を超えるまでのイベントとなったのです。
早朝の観客でびっしりと埋め尽くされた河川敷を飛行するバルーンローンチエリア、離陸準備を進めるバルーン
佐賀でインターナショナルバルーンフェスタが継続的に開催される理由は、この時期の佐賀の風がすごく穏やかで気流が安定していることに加え、飛行エリアとして充分な広さがあることがあげられます。また、国際空港である福岡空港から1時間の距離にあり、参加者の宿泊施設を確保可能な都市であることなども大きな要素です。さらに、イベントを後援する佐賀県、佐賀市などの自治体の積極的な協力も大きな一因でした。
そしてHondaは、佐賀インターナショナルバルーンフェスタに1990年から特別協賛という形で協力を開始しました。熱気球の競技は、風向きや風速を読む、風に乗って走るというスポーツであり、Hondaが挑戦を続けている二輪車や四輪車のレースと通じるものがあることから協力を始めたのです。
佐賀インターナショナルバルーンフェスタの中心は、競技飛行です。競技飛行は、気流が安定する日の出から3時間(朝7時開始)と、日没前2時間(午後3時開始)の1日2回の開催で、地表温度が上がり上昇気流が発生する日中は、熱気球のコントロールが難しくなるので競技は実施されません。
観客が、まだ夜も明けきらない時間帯に河川敷に来場するのは、この競技飛行が7時から開始されるためなのです。
競技飛行のために気球を準備する選手達は、バスケット(人が乗る部分のかご)と球皮(気球の大風船部分)を準備します。
まずは球皮を競技場である河川敷に広げ、バスケットを寝かせたままの状態で球皮の下の部分とワイヤーで接続します。その球皮の下の部分からインフレーターと呼ばれる巨大な扇風機で、球皮に空気を送り込みます。球皮が膨らみ始め、立体となり始めると、次にバスケットに設置されているバーナーで球皮内の空気を暖め、初めて気球が浮力を得て浮き始めます。
インフレーターで空気を送り込んだ後に、バーナーで球皮内の空気を暖めてバルーンを立ち上げる様子
この時にインフレーターを駆動しているのが、HondaのGXエンジンです。GXエンジンは北米・欧州・オーストラリアの厳しい排出ガス規制をクリアする環境性能に加え、高い耐久性と信頼性が評価されています。競技飛行するチームにとって、素早く球皮を膨らませることは、戦う上で重要な戦術であり、世界各国の熱気球メーカーの多くが、その信頼性の高さと始動性の良さを評価してGXエンジンをインフレーターに採用しています。
Honda GXエンジンを搭載したインフレーターと、立ち上がったバルーン
そして、Hondaのパワープロダクツ事業と熱気球競技やイベントの企画、運営を行うジャパンバルーンサービスは、インフレーターを駆動するGXエンジンを、既に販売中の電動パワーユニットeGXに置き換えるトライアルを開始しています。もともとeGXの特徴は、GXエンジンとそのまま置き換えることが可能な構造となっているため、インフレーターで使用しているGXエンジンを取り外してeGXに載せ換えることでインフレーターは使用可能となるのです。
トライアルでは、球皮内に空気を送るインフレーターを駆動するのに充分な出力を確保し、稼働時間に対するバッテリーの対応が可能なことも実証されました。
eGXが搭載されたインフレーター
「熱気球とカーボンニュートラルはなかなかピンとこない命題だったんですが、なにか少しでもカーボンニュートラルに近づけたいと思って、eGXを使ってみたんです。大型の気球でも、インフレーターを回すのにバッテリーの持ちも全く問題ありませんでしたし、機材の保管や運搬にガソリンがないのは、安全で、ガソリン臭くもならない。メンテナンスもガソリンエンジンよりも楽なのは、将来的に選手たちにとってメリットになると思います」(株式会社ジャパンバルーンサービス・町田翔吾さん)
町田さん(株式会社ジャパンバルーンサービス)
また2025年の大会では、競技に出場したHondaのチーム「Honda Hot Air Balloon Racing Team」が機体デザインを一新。佐賀新聞主催の「Hondaバルーンデザインコンテスト」で最優秀賞を受賞した中村僚さん(10歳)のデザインが採用されたのですが、その機体を中村さんが通う小学校でお披露目する際、風が強くて校庭でふくらませることができず、急きょ体育館でお披露目しました。これも、ガソリンエンジンではないeGXだからこそ、屋内でも問題なくふくらませることができたのです。
そして、佐賀インターナショナルバルーンフェスタの、もう一つのイベントが河川敷に並んだ150以上の屋台と、2つの特設大テント。この大テントの中では50以上の地域物産の販売店が店を構え、佐賀県や佐賀市などの自治体と一体となったイベントを実現しています。多くの観客は、熱気球を見に来ながら、年に一度の大きなお祭りとして、ここ嘉瀬川の河川敷に来ているのです。
世界各国から集まる選手たちは、地元のみなさんが選手たちを温かく迎えてくれる佐賀のことが大好き。そして佐賀の皆さんも、嘉瀬川の上空を埋め尽くす熱気球の壮大な風景が大好きなのです。
Hondaがこのイベントを特別協賛しているのは、観客の皆さん、選手たちが、みんな笑顔になるイベントだからです。
熱気球ホンダグランプリは佐賀のほか、長野県佐久、岩手県一関、栃木県渡良瀬の計4か所で開催され、規模の違いはあるものの、地域、チーム、運営が一体となって笑顔を生み出しています。
Hondaパワープロダクツは、そんな笑顔が生まれる熱気球イベントがいつまでも続くためにもeGXの可能性を探っていきたいと考えています。