パワープロダクツ Behind The Scenes

意外なところで活躍している
Hondaパワープロダクツの世界をご紹介します。

ロードレースを支えるHondaパワープロダクツ

全日本ロードレース・MFJスーパーバイクシリーズにおけるHondaの挑戦

日本最高峰のモーターサイクルロードレース界では、CBR1000RR-Rをはじめとする多数のHonda製二輪車が頂点を目指し、熾烈な競争を展開している。しかし、一般にはあまり知られていないもうひとつの重要な側面がある。それは、Hondaのパワープロダクツが、このロードレース界を支えるために果たしている役割である。今回は、サーキットで活躍するHondaパワープロダクツを紹介する。

Astemo Honda Dream SI Racing

今回、取材に応じてくれたのはAstemo Honda Dream SI Racing。チームを率いる伊藤監督は1987年にデビューしてから4度の年間チャンピオンに輝きMotoGP™にも参戦した経験を持つ。そんな伊藤監督にチーム運営をサポートしているHondaのパワープロダクツについて聞いてみた。
全日本ロードレース選手権に参戦するチーム構成とは?--
チーム事情によって異なるので、一概には言えませんが、全体を俯瞰で見てマネジメントするのが私のような監督やオーナーで、マシンのメンテナンスをするメカニック達、ライダーとライダーをサポートするヘルパーといった構成だと思います。ライダーとマシンが増えれば、それに比例してメカニックやヘルパーなどが増えて所帯が大きくなるという感じですね。

役割以上に人が多いような気がしますが?--
そうですね、主にメカニックといわれるスタッフの仕事が細分化されてきているため、人数が増えていますね。メカニックというとマシンのメンテナンスをするイメージが強いと思いますが、今のロードレース界では、走行データの分析やマシンの解析などテレメタリーと呼ばれる解析担当のスタッフはマシンに触れないメカニックと言えます。また、タイヤの温度管理やガソリン・オイルの管理なども昔には無かったメカニックの仕事と言えますね。
Astemo Honda Dream SI RacingにとってHondaのパワープロダクツとは、どんな存在ですか?--
なくてはならない存在ですね!Hondaのパワープロダクツが無かったら、絶対に勝てないですね!

え?そんなに重要ですか?--
重要ですよ。意外と知られていませんが、二輪ロードレースの場合、マシンの優劣は確かに重要ですが、それに匹敵するぐらい重要なのがタイヤです。このタイヤのパフォーマンスをレースのスタートから最大限引き出すためには、タイヤの温度管理はレースを左右するほど重要です。このタイヤを暖めるために、ほとんど全てのチームがタイヤウォーマーを使用していますが、このタイヤウォーマーに電気を供給するためにHondaの発電機(EU55i)を使用しています。ロードレースの場合、各ピットにも電機は供給されていますが、多くのチームが一度に大量の電気を使用するため、供給される電機は安定しているとは言えません。レースに使用するタイヤは約100度まで暖機しますが、電気が安定しないと、予定通りのタイヤの暖機ができない可能性があります。そこで、各チームとも自分たちで安定した電気を確保してタイヤウォーマーを完璧な状態で管理する訳です。また、最近は、走行データの分析やマシンデータの解析にパソコンを使用します。精密機械のパソコンにも安定した電気は必要不可欠です。その電気をHondaの発電機(EU55i)や蓄電機(E500)の安定した電気で供給しています。
左側がタイヤウォーマーを巻かれた状態
Honda発電機はこのタイヤウォーマーに電気を供給している。
携帯用の発電機(EU18i)もありましたが--
携帯用の発電機(EU18i)は、電源のないスターティンググリッドでタイヤウォーマーを使う際にに活躍してもらっています。決勝レースが始まる前に、ライダー達はマシンに跨りピットを離れます。ライダーがピットを離れるまでマシンに装着されたタイヤにはタイヤウォーマーを装着し、ピットを離れる寸前にメカニックがウォーマーを外します。そして、サーキットを2周してライダー達はスターティンググリッドにマシンを置き、それからスタートまでのライダー紹介などが始まります。しかし、その間、タイヤはどんどん冷えていくため、メカニックはスターティンググリッドで再びタイヤウォーマーを装着するのです。この時に、安定した電気が供給されなかったり、発電機がかからず電源が供給されなければ、その時点で勝利は目指せません。
スターティンググリッド上でタイヤウォーマーに電気を供給するEU18i
チームにとってHondaパワープロダクツとは?--
そうですね、絶対に外せない要のスタッフであり、大切なチームの仲間ですね!一発でエンジンを始動させ、必要な時に確実に安定した電気を供給してくれる。当たり前のことかもしれませんが、この当たり前のことをストレスなく確実に実施してくれる。レーシングチームにとっては、必要不可欠な優秀なスタッフです(笑)

ライダーが求めるHondaパワープロダクツ
Astemo Honda Dream SI Racing 作本 輝介選手

ピットやグリッドでHondaの発電機が使われていますが、ご存知でしたか?--
タイヤウォーマーとかに使っているので、もちろん知っています。ライダーにとってはちゃんとタイヤが暖まっているかはとても重要なので、Hondaの発電機にはお世話になっています。トラブルもないので信頼できる製品だと思います。

プライベートで発電機を使ったことはありますか?--
実はプロになるずっと前から使っています。サーキットでは電源がないことも多いので、そういう時に使っていました。昔はお湯を沸かしたりするのにも発電機を使っていましたよ。

Hondaの発電機についてはどういう印象を持っていますか?--
信頼ですね。グリッドに並んだ時にも発電機でタイヤウォーマーに電気を供給していますが、レース前にアタフタしたくないですよね?Hondaの発電機でトラブルになったことがないので、安心です。 しっかり仕事をしてくれるなという印象です。

グリッドにいるときは何を考えていますか?--
レース展開を考えたり、落ち着いて集中することにしています。グリッド上でトラブルは絶対に避けたいので、そういう意味でもこれまでHondaの発電機は頼もしかったですね。

マシンを含めて、Honda製品に求めることはなんですか?--
やはり安定感と信頼性だと思います。信頼できる製品だと、集中力が途切れずレースを思いっきり戦えます。

編集後記

筆者はモータースポート関連の仕事もしているため、チームが発電機を使っていることは知っていた。しかし、ピット裏のトラック(モーターホームやトランスポーター)の横に置かれていることが多い発電機は、停車しているトラック内の電源に使用しているものだと思っていた。それが、実はピット内で使用する電気だったことが一番の驚きだった。
もちろんピット内に電源は設置されているが、Honda発電機の安定した電気をレーシングチームは当たり前のように必要としていたのだ。 モータースポーツの裏側では様々な機材が使用されている。電気に求められるものは多いのだ。そこでは、よりよい環境構築のためにHondaの発電機が活躍していた。
1000分の1秒を争うモータースポーツにおいては、トラブルを避けることも戦術のひとつ。Hondaパワープロダクツは、そんなシビアなモータースポーツの裏側で、監督をはじめとして多くのスタッフから信頼を得て、ピット裏やピット内で当たり前のように使用されていた。