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ハローウッズの10年 豊かな茂木の里山とともに
文:大野晴一郎
【Vol.4】どんぐり大豊作の年に招かれて・・・
ツリーハウス。幹や枝の上に建てられたものではなく、言ってみれば高床式コテージ風ツリーハウスだ。アカネズミの広場から山を下り、ハッチョウトンボの棚田に向かう森の中に見ることができる。
ツリーハウス。幹や枝の上に建てられたものではなく、言ってみれば高床式コテージ風ツリーハウスだ。アカネズミの広場から山を下り、ハッチョウトンボの棚田に向かう森の中に見ることができる。

そもそも、どんぐりというものを百科事典で調べると、マイペディアの電子辞書版には「ブナ科コナラ属の果実のうち、果皮が堅く、熟しても外皮が裂けず、下方が総包(穀斗、いわゆるお椀)に包まれるものの総称」とある。熟すと総包から離れ、地面に落ちると解説は続き、クヌギ、カシワ、ナラ、カシ類などが代表的と記されている。
また、かつて読んだある本には、どんぐりは食用になると書かれていた。しかも農耕文化が発達する以前は、主食となった時代もあったのだそうだ。澱粉食としての主食ということだろうが、うまいのか、まずいのか、わたしは知らない。

サーキット周辺の森に足を踏み入れた楓は、山面を覆う大量のどんぐりに圧倒される。
「おーっ、なんだ、これ!」と叫び、「こいつは、すげー!」と感動したわけである。どんぐりにズルッと足を滑らせながらも四つん這いになって斜面を登り、森の豊かさを全身で感じた。いや正確に言うならば、たしかに豊かではあったが、一方で人手が入らなくなって久しい里山の悲鳴も聴いてしまった。

どんぐりの絨毯にゴロリと寝転び、森の生命力の象徴でもある小粒の果実を両手一杯に握り締めたとき、長い時間が必要になるだろうが、自分ならこの森を再生できると確信した。
つまり豊かさと傷を見せられた瞬間こそが、楓が茂木に踏みとどまる決心をしたポイントだと、わたしは勝手に思っている。
興味深いのは、ブナ科の実の大豊作は7〜8年に一度しかないことだ。まさに大豊作の年に楓はツインリンクもてぎを取り囲む山に入ったわけだ。
「茂木の山が楓を呼んだ」
こんな言葉をわたしは誰からともなく聴いた。


ハローウッズのクラブハウス全景。2011年7月上旬の撮影。
ハローウッズのクラブハウス全景。2011年7月上旬の撮影。

ところで、どんぐりは今も昔もアカネズミたちのご馳走だ。
足を滑らせるほどの大量のどんぐりを見た楓が、炒るだけで食える種類か、水に晒してシブ抜きが必要などんぐりか、そんなことを瞬時に考えたとしても不思議はない。
だいたい彼はなんでも食べてしまう人だ。
たとえば、蛾。
夜間飛行を好み、灯蛾とも火取虫とも呼ばれるように、灯火に塗れることを好む迷惑な虫で、常識的には絶対に口にしない。
それを食っちゃうの?わたしは楓の言葉に耳を疑った。

最初のその試みは、北海道でのことだったそうだ。
美味そうに蛾を食うモモンガを見て、どんな味なのか知りたくなったと、わたしは本人から確かにそう聴いた。子どもたちを集めたキャンプでも、カレーの鍋に飛び込んだ蛾を摘まみ上げ、それを食べてしまったこともあるらしいが、これはせっかくのカレーを無駄にしないためのパフォーマンスだったのではないかと想像している。「ほら、カレー味!」とか言って、蛾をさっと自らの口の中に始末してしまわないと、都会から来た子どもたちは気持ち悪がってカレーを食べることはしないからだ。蛾を食っちゃうおじさんを目の当たりにした子どもたちは、素直な聞分けのいい子になったそうだが、その気持ち、よく分かる。  (Vol.5へ続く)


バイオマスを活用した「生命(いのち)の塔」は、楓の言葉を借りると「さまざまな生物が棲む、森の中の高層マンション」ということになる。【バイオマス=自然がつくり出す植物や、それを食べる動物の屍骸、糞すべてのこと】:ハローウッズパンフレットより引用。
バイオマスを活用した「生命(いのち)の塔」は、楓の言葉を借りると「さまざまな生物が棲む、森の中の高層マンション」ということになる。
【バイオマス=自然がつくり出す植物や、それを食べる動物の屍骸、糞すべてのこと】:ハローウッズパンフレットより引用。

文:大野晴一郎