MENU

HONDA

検索
汎用製品|パワーストーリー
ノンフィクション・ドキュメント | いきいきライフスタイル | 動く!汎用製品 | イベント案内
パワー・ストーリー
記録的登頂と奇跡の生還〜東海大学K2登山隊とEU9iの記録
バックナンバー
プロローグ
プロローグ
 2006年8月1日16時50分。待ちに待ったその瞬間、東海大学K2登山隊ベースキャンプは歓喜と安堵に包まれた。東海大学K2登山隊の小松由佳隊員と青木達哉隊員というアタック隊が、世界の精鋭登山家にもっとも険しいと恐れられるK2の山頂を極めたのだ。
 しかもこの登頂は記録ずくめとなった。小松由佳隊員は「日本人女性初登頂(世界でも8人目)」、21歳10か月の青木達哉隊員は「世界最年少登頂」を成し遂げたのだ。
 登頂に成功したその瞬間を小松由佳隊員はこう振り返る。
「午前2時半にアタックを開始して、膝まで埋まるような雪や難度の高い岩場を超え、半日以上経った頃ようやく他の高みが見えない、ゆるやかな頂が見えてきたんです。それまでいくつかのピークを越えてきましたが、その頂が見えた瞬間、『ここがK2の山頂だ』と確信めいたものがあったんです。そのとき、先を行っていた青木が『先に行ってください』と気遣ってくれたんですが、もうそのまま行かせちゃいました」
 その山頂目前のやりとりを、青木達哉隊員は克明に覚えているという。
「ちょうど山頂まであと数歩――2mくらいのところだったと思います。自分でもどうして『どうぞ』って先に行ってもらおうとしたのかよく思い出せないんです。いろんな山で指導してくれた尊敬する先輩という気持ちがそうさせたんだとは思うんですが、山頂を目の前にしての達成感や、その反面『もう終わっちゃうのか』という寂しさ……。いろんなものがこみ上げてきたんです。ただ先に行ってもらおうと思ったら、『いいよ、行きな』って……。鼻をすするような音が聞こえてきたから、もしかして泣き顔を見られたくないのかなとも思いました」
 山頂に先にたどり着いた青木隊員は、最後の数歩を踏みしめるたび、脳裏にそれまでのことが次から次によぎっていた。現地スタッフや他国の登山隊の顔ぶれが浮かんでは消える。そして最後の一歩を登った瞬間、空と一体になって頭が真っ白になったという。アイスバイルをついて、無線でベースキャンプに連絡を入れた。デジカメで記録写真を撮影した。しかし、その時点で小松隊員は違うことを考えていた。
「私も登頂する瞬間は、サポートしてくれた方々への感謝の気持ちが大きくわき上がりましたね。青木と同じように、走馬燈のようにいろんなことが頭を駆けめぐりました。ただ、登頂前の本当に数秒だったと思います。登頂した実感も正直あまりなかったですね。むしろ『どう降りるか』ということに気を取られていたような気がします」
 山頂にいたのは1時間足らず。既にアタック開始から15時間以上が経過している。酸素の減りは予定よりも早く、下降中に切れそうだった。下山前に頂から下を見たとき、「数千メートルも下にすっぱり切れ落ちた斜面は底のない穴のように見えた」と小松隊員は言う。
 そして登頂報告の無線を最後に2人からベースキャンプへの連絡は途絶えた。

トップページへ トップページへ