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メディアで紹介された汎用製品
八ヶ岳の麓で無農薬・有機農法で野菜づくりに挑戦中
ほんとうの時代2004年7月号

ほんとうの時代
2004年7月号
写真●徳田 洋
取材・文●編集部
ほんとうの時代
人生の円熟期を迎える世代に対し、ゆとりと充実の生き方を提案し、働き盛りの世代の生き方と健康を考え、夢と励ましを送る実年ライフ情報誌。
●月刊誌 18日発行
●定価520円
●(株)PHP研究所
 〒601-8411
 京都市南区西九条
 北ノ内町11番地
 http://www.php.co.jp/

ミニ耕うん機「サ・ラ・ダ」
●商品情報 ●スペシャルページ

八ヶ岳の麓で無農薬・有機農法で野菜づくりに挑戦中
八ヶ岳から発信できる情報は何があるか---地元の人たち数人が語らって、ホームページで菜園の映像が見られるというユニークな貸し農園ができた。そこでの農作業は作物だけでなく、人との新しいつながり、生活の彩り、セカンドライフの指針など、さまざまな実りをも提供してくれる。

無農薬の野菜を作ってみたい
「二人で食べるには十分の収穫があります」と吉田さん夫婦
「二人で食べるには十分の収穫があります」と吉田さん夫婦
山梨県大泉村の「八ヶ岳あおぞら農園」で、素人農業を楽しむ人たちがいる。農園は、初夏になお雪を頂く南アルプスと八ヶ岳の峰々に囲まれた丘陵地に展がる。畑からは富士山やそれに次ぐ高峰の北岳も望め、日本百名山中六つの山の眺めを掌中にできる。
この農園で、一区画十坪ほどの畑地で小型耕うん機を上手に操り、野菜づくりを楽しんでいる吉田真さん(六十五歳)にお話を伺った。吉田さんは旅行関係の仕事をつい先ごろ定年退職した。サラリーマン時代の八年前に、老後の住処として八ヶ岳に山荘を購入し、休暇を過ごしてきたという。
吉田さん
吉田さんの農園体験は三年目に入った。友人たちが貸し農園で野菜作りを楽しむのを見て、自分も農薬を使わない野菜作りをしてみたいと思ったのが始めるきっかけだったという。ただ、やるからには景色のいい場所で畑仕事をしてみたかった。そんな折、新聞記事で山荘に近い「八ヶ岳あおぞら農園」を知って、すぐに申し込んだそうだ。農業経験が皆無だったという吉田さんはこう話す。
春の農作業はまず土起こしから(吉田真さん)
春の農作業はまず土起こしから
(吉田真さん)
「ここでは、植える作物の相談や最初の植付けなども手伝ってもらえるし、無農薬や有機肥料での栽培法など、何でも親切に指導してもらえるので嬉しいですね。こちらの都合なのに電話一本で畑まで指導に来てくださるのには頭が下がります。できた野菜は買ったのと違っておいしいですよ。農作業に慣れないうちは腰が痛くなったりしましたが、農園が耕うん機を用意してくれているので、耕すのは楽です。今日も初めて新しい耕うん機を使ったのですが、使い方を少し教わっただけで、ご覧のようにきれいに土を起こせています。レバーを握るだけの簡単作業というのは素人にはありがたいですね。今日の作業はこの後、畝を立てて、ジャガイモの種芋を植えて帰ります」
吉田さん夫妻は農作業をすることで、山荘暮らしを豊かに彩ってくれる「新しい目的」ができたと喜ぶ。知人にも畑仕事を趣味にする人が多いそうだが、互いに店で買ったほうが安いとこぼしつつも、誇らしげに収穫を語り合うそうだ。

新しい友人が増えました
子供夫婦が借りた農園もついでに耕しておくという吉竹博子さん
子供夫婦が借りた農園もついでに耕しておくという吉竹博子さん
もう一組の夫婦が土を起こしていた。二年前、定年退職し、大泉村に永住したという吉竹さん夫婦である。耕うん機を操っていた妻の博子さん(六十二歳)は興奮気味に話す。
「見てください、この黒々とした土を。私が耕したんですよ。こんなに色の濃い柔らかい土なんて、テレビでしか見たことがなかったから感激ですね」
エレクトロニクス関係の営業マンであった夫の淳次さん(六十二歳)は、転勤先の名古屋で定年を迎えた。吉竹さん夫妻も農業経験はまったくなかったが、インターネットでこの貸し農園を見つけ、農家の人が”お助け隊”として常駐しているというコメントを読んで即、申し込んだそうだ。大泉村に移り住んで一月も経っていなかった。
農業を始めたいと積極的だったのは博子さん(吉竹さん夫婦)
農業を始めたいと積極的だったのは博子さん(吉竹さん夫婦)
「私はお肉より野菜主義なものですから、以前もプランターでいろいろ作っていましたが、どれも皮が固くって。畑だったらうまく作れるかなと思って、農園を探してたんです。ここには”お助け隊”がいるというのが魅力ですね。農作業を一から教えてもらって、感心することばかり。農業は天候に左右されるということも初めて実感できました」
こう語る博子さんの言葉を淳次さんが継ぐ。
「お天気頼みゆえ、去年は自分たちの農園に『神頼み』と書いた看板を立てました。ここでは農作業以外の楽しみとして畑に付けた名前のユニークさを競いあうのですが、この『神頼み』で看板大賞をいただきましたよ。今年は『夢菜園』でチャレンジしています」
同じ土地を耕す”農園主”同士ゆえ、借り手の間には親密感があふれる。他人の畑の作物でも採りごろになればわざわざ連絡することもあるという。この農園は野菜だけでなく、友人関係が実る場にもなっているようだ。吉竹さん夫婦にも多くの友人ができた。
吉竹さんの収穫記録。スイカは有名果物店のものより美味だったという
吉竹さんの収穫記録。スイカは有名果物店のものより美味だったという
「地元の人と新しい人間関係が作れると期待して越してきたのですが、農園がらみで東京や神奈川の方と友人になってしまいました。お医者さんや著名人など、普段の生活では知り合えない”農業主”とおつきあいできる楽しさがありますね」
夫婦してこう語るが、お二人は村民としてもすでに村の生活に溶け込んでいる。博子さんは自宅から一、二分という近くの村営プールに毎日のように通い、週一回は村のコーラス部の練習に参加する。淳次さんは趣味の絵画が縁で、村の美術部の副部長を拝命した。淳次さんはアクリル絵の具で八ヶ岳の高原風景を描いて、この夏、友人と名古屋で二人展を開くが、仕上げた作品二十点のうち、すでに十四点が請われて嫁ぎ先が決まっているという。

”たまごっち”から農園が生まれた
「八ヶ岳あおぞら農園」は一九九八年に開園した。ここは単なる貸し農園にとどまらず、借りた区画の映像をインターネットのホームページで閲覧できるシステムが導入されている。代表の浅川正樹さん(三十九歳)に農園作りの経緯を聞いた。
「わが家は両親が農業をやっていますが、私は少し手伝う程度で、本業はスキーの指導員なんです。インターネットが流行り始めたころ、ライブカメラというのに非常に興味を覚えまして自分でも立ち上げて、八ヶ岳から情報発信をしてみたいと思いました。そこで、仲間と集って何を映すかあれこれ考えた結果、当時”たまごっち”というキャラクターを育てるゲームが流行っていたので、農作業というアナログ体験をしつつ、作物が育つ様子をデジタル画面で見てもらおうという話しになったのです。
夢菜園
最初は、私たち仲間五人と外部の三組の方が加わって、わが家の休耕田で八区画から始めました。そのうち農園とホームページが新聞記事に取り上げられて評判を呼び、参加者が急増して、いまは一二一区画を貸し出しています。一区画を家族三、四人で利用されるので、行政側も土地の有効な利用とともに多くの人が村を訪れることを評価してくれています。実際、農園では宿泊施設など作っていませんので、参加者は地元のホテルやペンションなどの施設を利用されているようです」

畑仕事以外の時間はテニスや登山も
農園のもうひとつの魅力に”お助け隊”がある。この”お助け隊”は実は浅川さんの両親である。父親の武仁さん(六十五歳)はもともと勤め人で、実家の農業を途中から受け継いだ。母親の玉恵さん(六十四歳)も嫁いでから農業を始めて三十年、まだ半人前と自称する。玉恵さんに”お助け隊”の苦労を聞いてみた。
「私も素人から始めたから、参加者の皆さんの戸惑いがよくわかります。だから教えやすいし、いっしょに農作業を楽しめる。主人も私もこの農園は採算など考えずにやっていますし、主人はいまはこれが生きがいになっているみたいです。畑しかない農園ですが、参加者の人たちは自然をこのまま残して、建物などを建てないでとおっしゃってくださっていますので、純粋に畑仕事を楽しんでいただけるようお手伝いしています」
玉恵さんは畑でバーベキューをする家族のために、料理用のハーブを育てて自由に摘んでもらうという気遣いもしている。一回の農作業はそう多くの時間を要しない。それゆえ畑で顔を合わせる人たちで、登山やテニス、ハイキングを楽しむ、いわゆるオフ会のグループができている。春の農園の貸し出しイベントと秋の終了時の収穫祭には多くの参加者が集うが、それ以外にも月々何らかのオフ会が催され、人々の交流は盛んである。
「八ヶ岳あおぞら農園」代表の浅川正樹さん。農作業を楽しんでいただくことを第一に、自然の流れで無理のない農園運営をしていきたいという
「八ヶ岳あおぞら農園」代表の浅川正樹さん。農作業を楽しんでいただくことを第一に、自然の流れで無理のない農園運営をしていきたいという
「農作業は基本的には貸した区画はご本人の責任で管理していただくのですが、毎日来られる吉竹さんのようなご家族以外はそうもいかないので、作物の生育が遅いかなと思うときは少し手出しをさせていただいています。農園を立ち上げたころはわが家の乗用トラクターで全区画を耕し、測量しなおしていましたから、大変でした。今は小型耕うん機を導入していますので、みなさんに耕してもらっています。自分で畑を耕すのは、手応えが感じられて楽しいようですね。みなさん嬉々としておられますね」(浅川正樹さん)
観光を兼ねての畑仕事、リゾート地に菜園を持つ充足感、永住につながるライフプラン等々、「八ヶ岳あおぞら農園」は野菜作りのお手伝いだけをするだけではなさそうである。


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