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メディアで紹介された汎用製品
笠間クラインガルテンを訪ねて 「週末菜園」を楽しむ
ほんとうの時代 2003年5月号

ほんとうの時代
2003年5月号
取材・文●編集部
写真●福田武久
ほんとうの時代
人生の円熟期を迎える世代に対し、ゆとりと充実の生き方を提案し、働き盛りの世代の生き方と健康を考え、夢と励ましを送る実年ライフ情報誌。
●月刊誌 18日発行
●定価520円
●(株)PHP研究所
 〒601-8411
 京都市南区西九条
 北ノ内町11番地
http://www.php.co.jp/

ミニ耕うん機「サ・ラ・ダ」
●商品情報 ●スペシャルページ

笠間クラインガルテン
定年後に土いじりをしたいと考えている熟年世代は多い。また、家庭菜園では物足りず、本格的な野菜づくりに挑戦する人もいる。今回訪れた笠間クラインガルテンは、野菜や花づくりを誰もが楽しめる宿泊施設付き体験施設である。

中山間地域と農業振興のために建設
笠間クラインガルテン駐車場
マイカーで訪れる利用者のための駐車場
笠間クラインガルテンは、東京から約百キロ、茨城県の笠間盆地の中にある。設立の経緯について、笠間市農政課課長補佐の田口孝市さんは次のように語ってくれた。
 「笠間市は、古くから笠間城の城下町として栄え、 笠間稲荷、出雲大社常陸分社など文化遺産が点在する歴史的な町です。 また、地場産業の笠間焼が、陶芸ブームのなかで脚光を浴び、二百人を超える陶芸家が集まって腕を競い合うなど、“陶芸の町・芸術の町”としての顔もできあがりつつあります。しかし、笠間市にも問題はあります。現在、市を上げて取り組んでいるのが地域と農業振興問題です」
 笠間盆地のように絶対的に耕地面積が狭い中山間地域では、産業としての農業はなかなか育ちにくい。そのため、専業農家から兼業農家への転換が急速に進み、若者も職を求めて都会へと離れていく。また、兼業農家の多くが、自分が食べるだけの農作物を栽培するのみで、残りは休耕地となっているのが現状である。
田口さん
田口孝市課長補佐
「なんとか、笠間の農業を活性化できないものかと考え、浮上したのが笠間クラインガルテンのプロジェクトでした」(田口さん)
 「クラインガルテン」とは、ドイツ語で「小さな庭」という意味。日本語では、「市民農園」と訳されている。ドイツをはじめヨーロッパ諸国では、庭のない都市住民が、週末に郊外の市民農園「クラインガルテン」で野菜づくりを楽しむことが、ライフスタイルの一部として定着している。平均して一区画三百m2程度の土地に「ラウベ」と呼ばれる作業小屋、芝生、畑などが配置され、利用者はそれらを自由に使うことができる。ヨーロッパでは、単なる市民農園としてだけでなく、地域コミュニティの場としての役割も果たしている。笠間市は、そこに目をつけたのである。
 さっそく、地元の農家から休耕地を市が借り上げ、八億円の事業費と二年の歳月を経て、「笠間クラインガルテン」を完成させた。
耕うん機の講習会風景
耕うん機の講習会風景
「当市では、ドイツのクラインガルテンのノウハウをそのまま日本に持ち込もうとは考えませんでした。 ドイツの場合、クラインガルテンの多くが日帰り利用者を対象にしていますが、ここでは、利用者が一年を通じて笠間の自然と触れ合い、ゆったりと野菜づくりを楽しんでもらえるように、宿泊施設付きの区画(年間契約)を中心に建設いたしました(日帰り市民農園も併設されている)。また、未経験者に対応して、指導員による栽培講習や巡回指導、各種農機具の貸し出し、堆肥の提供も常時行っています」(田口さん)
 笠間クラインガルテンは開設と同時に希望者が殺到した。田口さんの話によると、笠間クラインガルテンの評判を聞きつけた全国の地方自治体から視察依頼が百四十団体以上もあったという。

笠間クラインガルテンで定年後の生きがいを発見

土おこしの風景
あっという間に美しい土おこしができあがる
「最初は、週末だけのつもりでしたが、気がつくと、週三日は欠かさず泊まりがけで訪れています」と健康的に日焼けした顔で話してくれたのは戸松重夫さん(六十二歳)。
 戸松さんは、戦後の日本の高度成長を支えた企業戦士である。ゴルフ以外に特別な趣味はなく、定年退職後、暇を持て余していた。
 「定年になって家にじっとしていてもしかたがないので、思いついたことは何でもやろうと考え、英会話、カルチャーセンター、スポーツジムなどありとあらゆる趣味にチャレンジしました。でも、どれも長続きしませんでした。十分な満足感が得られなかったのです。もともと技術畑出身の私は、パソコン技術を活かして、シルバー人材センターに登録し、パソコン指導のボランティアもしています。でも、これも毎日ではありませんから、生きがいというほどのものではありません」
 そんな折、笠間クラインガルテンの利用者募集を知った。
 「もともと都会育ちですから、畑仕事はやったことはありませんでした。でも、ここは指導員が一から指導してくれます。農機具もすべて貸し出してくれるので、手ぶらで訪れても大丈夫です。キャベツ、白菜、ほうれん草、にんじんなど、昨年だけで三十種類以上の野菜をつくりました。大好物のスイカが実ったときはうれしかったですね。つくる喜びというか、一回野菜づくりをやるとほんとうにやみつきになります」
 熟年世代の場合、野菜づくりというと、腰を曲げて力いっぱい畑に鍬を入れる重労働というイメージを持つかもしれないが、笠間クラインガルテンの場合、そのイメージからはほど遠い。その理由は、ハード面とソフト面の充実にある。
 たとえば、農機具に関しては、最新の機械を取り揃えている。小型耕うん機もその一つ。素人の場合、数m2の農地を耕すだけでも大変な重労働だが、小型耕うん機があれば女性でも簡単に耕すことができる。
 「小型耕うん機は、ほんとうに重宝しています。私の区画程度なら、ほんの十数分で耕すことができます。足腰が少し弱り気味の熟年世代には、こういうちょっとしたサービスがありがたいですね」(戸松さん)
 一方、ソフト面では、指導員の巡回指導はもちろんのこと、近隣の農家の人たちからアドバイスをもらうこともある。
 「笠間クラインガルテンには、市民農園のほかに、地元の農家の方々がつくられた農作物を販売する直売所や相互交流を図るクラブハウスが併設されています。そこで教えられる話はとても勉強になります。なんといっても笠間という土地を一番知っておられる方々ですから」
戸松さんご夫婦
定年後の生きがいを見つけた
戸松さんご夫婦
戸松さんは、基本的には一人で訪れることが多く、 奥さんの博子さんと一緒に来るのは月に二、三回程度だという。
 「主人が笠間に出かけるときは、とても楽しそうです。笠間市内は、都心と違って、ゴルフも一ラウンド五千円くらいで回れるので、主人はそれも楽しみにしているようです。私にも自分の趣味がありますから、お互いに趣味が見つかってちょうどいいと思っています。主人はつくる係で、私はそれを知人に配る係です(笑)。すべて完全無農薬有機栽培ですから、みなさんに喜んでいただいています」(博子さん)
 ちなみに戸松さんは、笠間での野菜づくり体験を自らつくったホームページで紹介しているという。

自分でつくってはじめてその奥深さを知る
駒井さん
イタリア料理と
和食が得意の駒井さん
趣味の料理好きがこうじて、食材づくりにまで興味が広がった駒井延行さんは、東京在住の五十三歳。 現在、都内でデザイン関係の仕事をしている。
 「デザインの仕事をしているせいもあって、ものづくりにはもともと興味がありました。野菜づくりを始めたのは、酒の肴を食材からこだわってみたいと考えたからです」
 駒井さんも前述の戸松さんと同様、野菜づくりの経験はない。したがって、最初は手探りの状態が続いたという。
 「指導員の指導にしたがってつくるので、それなりに収穫できるのですが、やってみてはじめて知ることも多く、野菜づくりは、ほんとうに奧が深いと実感しています。たとえば、とうもろこしは、その年に実っても、次の年も同じように実るとは限りません。また、自分でつくってはじめて、トマトは出荷するときに青くて流通過程で赤く熟すことを知りました。 木についたまま、赤くなるまで熟させるとトマトが信じられないほど甘くなることも。野菜づくりはやればやるほど知的好奇心が広がります」
小型耕うん機は女性でも扱いが簡単
小型耕うん機は女性でも扱いが簡単
奥さんのまり子さんもまた、駒井さんと同様、野菜づくりに魅せられた一人である。
 「昔から主人が興味のあるものには、私も興味があって、家庭菜園をやると言い出したときも、二つ返事で『楽しそうね』と賛成しました。笠間クラインガルテンの場合、年間の利用料が四十万円で、都心との往復の交通費や諸経費などを含めると、だいたい五〜六十万円くらいかかります。それだけお金を出して野菜をつくっても損じゃないかと思われるかもしれませんが、自給自足の生活を送るというのは、費用対効果うんぬんより、人間として生きる自信につながります。食べ物さえつくれれば、人間どうやっても生きていけるなぁと思うようになったのも野菜づくりを始めたからこそです」
完全無農薬有機栽培の様子
完全無農薬有機栽培の
野菜は新鮮そのもの
駒井さんは、野菜づくりを始めてからというもの、 どこへ出かけても田畑やその地方の気候風土が気にかかるようになったという。
 「いままでなら見過ごしていた何の変哲もない畑が、芸術品のように見えるようになりました。何でこの畑では形の整った野菜を栽培できているのだろうと。農家の方に対する畏敬の念が湧いてきます」
 駒井さんが最近凝っている酒の肴は「焼きそらまめ」だという。
 「そらまめは、基本的に茹でて食べるものだと思っていました。でも、新鮮なそらまめを網で焼くとそらまめが本来持っている自然の甘味がじわっとにじみ出てきて、それを肴に酒を飲むととても幸せな気持ちになれます」
駒井さんご夫婦
定年後に酒房を開くのが
駒井さん夫婦の夢
定年後の駒井さんの夢は、自分の酒房を開くこと。
 「現段階では本気で考えているわけではありませんが、もしチャンスがあればやってみたいなぁと考えています」
 泊まりがけの野菜づくり体験という新しいレジャー形態は、今後ますます広がりそうな気配である。

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