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SOLOCAMP STYLE - ソロキャンプスタイル

ソロキャンプ
× パックラフト

更新日:2021.07.21
ソロキャンプと一緒に楽しめるアクティビティの魅力を、体当たりで探っていく企画。
1年間365日のうち、180日以上をキャンプ場で過ごすキャンプライターの佐久間亮介さんが、ソロキャンプと組み合わせて、様々なアウトドアアクティビティにチャレンジ。普段は、焚き火をして自然の中でのんびりと自由気ままに過ごすのがスタイルだというハードキャンパーが、ソロキャンプの新境地発掘に挑みます。
「ソロキャンプ」だからこそ、自分の楽しみたいことを我慢せずに、自由気ままに遊べる。
キャンプの楽しさ、遊びの幅が広がる「ソロキャンプ × アクティビティ」をご紹介します。

くだれ、激流! 川の流れを読み、
自分が見定めたルートを迷わず漕ぎ進める。

今回ソロキャンプと組み合わせて楽しむのは、川や湖での新たなアクティビティとして、にわかに注目され始めた「パックラフト」。
パックラフトとは、空気で膨らませることによって浮力をもたせるゴムボートのこと。重量は約3kgと軽量で、収納時はコンパクトになるのが大きな魅力だ。持ち運びがしやすいため、クルマの中に忍ばせておくだけで、川、渓谷、湖と遊びの幅が大きく広がる。

今回は、このパックラフトを使って川を下る。
上流へと向かい、河原で“船”を膨らませ、荷物をデッキにくくりつけて、川の流れを読みながら漕ぎ進む。
大自然の中、川と一体となって漕ぎ進む爽快感。
流れが激しくなる瀬では、転覆するかもしれないとハラハラしながらも、無事に下りきったときにはほどよい達成感が得られてやみつきになる。

本日の遊び場は、埼玉県の「母なる川」と呼ばれる荒川の上流部。
水しぶきを全身に浴びながら、瀬を突き進む。

持っていった遊び道具&
ソロキャンプ道具

今回使用したパックラフト道具。
パックラフトは、収納時には空気を抜くことでコンパクトになるのが大きな特徴。川では岩などの障害物があり危険を伴うため、ライフジャケットとヘルメットは必須の道具だ。船の補修テープ、ファーストエイドキット、ホイッスルやスローロープは、もしもの時のために備えておくべきアイテム。なお、パックラフトや川下りに慣れていればソロで遊べないことはないが、思わぬ事故やアクシデントに備えて2人以上で楽しむのがベター。
川のアクティビティのため、濡れて困るものは防水バッグに入れておく。
積み込んできた主なソロキャンプ道具。
アクティビティで体を激しく動かすため、今回は設営や撤収が簡単なものを中心に道具を準備した。焚き火をしながら濡れた体を温めつつ、その炎を熱源にして食事を楽しみたい。
今回使用したクルマは、数々の専用装備により“街にもアウトドアにも合う”を体現したフィット クロスター。
自然を残したキャンプ場のダート道もしっかりと走り切る走破性が秀逸。使い勝手の良い荷室は、キャンプ道具とパックラフトの装備をスッキリと収納できる。ソロキャンプとアクティビティにちょうどいいクルマだ。

今回の遊び場

荒川上流部(埼玉県長瀞町)
荒川の上流部に位置し、ライン下りも有名な埼玉県の長瀞。今回の行程は、秩父鉄道・上長瀞駅から徒歩でアプローチできる「親鼻鉄橋」付近の河原から、キャンプ地でありゴール地点でもある「長瀞オートキャンプ場」の河原までの約4kmの区間。その区間には大小4つほどの瀬があり、水しぶきの激しい瀬を楽しみつつも、途中には長瀞名物の景観「岩畳」を船の上から眺めることができる。
パックラフトを楽しむにあたり予約などは不要だが、安全面を考慮してインターネットなどで川の水量や天気予報を確認しよう。また、川ではライン下りやラフティング、釣り人らとお互いに譲り合って楽しむのがマナー。
CHALLENGING

テントを設営し、川の上流へ。

キャンプ場でアーリーチェックインの手続きを済ませて、まずはテントを設営する。

今回の計画では、長瀞オートキャンプ場を川下りの終着地点・キャンプ地とする。
クルマをキャンプ場に停めたまま、パックラフト道具だけを持って電車で上流へと向かい、川を下ってキャンプ場に戻ってくる予定だ。
テントを設営し終わったら、早速パックラフトのパッキングをする。
50〜70Lほどのバックパックであれば、パックラフト道具一式を収納できる。

諸説あるが、その語源は「パッキングできるラフト(=いかだ)」だと言われている。このコンパクトさ、携行性の高さがパックラフトの最大の魅力だ。
パッキングが完了したら、長瀞オートキャンプ場から徒歩約15分のところにある秩父鉄道の野上駅へ。
そこから2駅上流側にある上長瀞駅まで電車で移動する。
上長瀞駅で普段からパックラフトで川下りを楽しんでいる仲間と合流し、スタート地点となる親鼻鉄橋付近の河原を目指す。

船をセットアップ。
水しぶき激しい瀬へ繰り出す。

河原に着くなり船の準備に取り掛かる。
空気入れを使って船を膨らませるのだが、適度に膨らむまでには5分もかからない。この手軽さもパックラフトの良さだ。
パドルやライフジャケット、ヘルメットなど、パックラフトの道具を準備。
背負ってきたバックパックやファーストエイドキットなどは、防水バッグの中に入れてデッキの先端にくくりつける。
準備が整ったら早速、川へと船を漕ぎ出す。
この日の気温は28度。水量も申し分なし。ほどよく水が冷たく感じられ、パックラフト日和と言える。
まずは、肩慣らしにはちょうどいい小さめな瀬を下る。
僕の船は、水が内側に入ってきたときに自動排水用の穴があるセルフベイラー式。水を船外へ出す手間がなく、このような水しぶきの激しい川を下るのに適したモデルだ。
ほどなくして、今日最も激しいエリアである、小滝の瀬に到着した。
瀬に入る手前で一度、船を陸に上げ、事前に瀬を目視で確認する。これはスカウティングといって、岩の位置や水が流れるラインを陸上から確認し、安全なルートを事前に把握しておく行為だ。
瀬に挑む。
船から落ちることを“沈(ちん)”と言うが、特にこういった流れの激しい場所はコース取りが難しく、“沈する”可能性が高い。
岩を回避して進める流れを読む。川に落ちる恐怖心を抱えながらも自分が見たラインを信じて、パドルを漕ぐ。

目の前の瀬が激しければ激しいほど、無事に漕ぎ切った快感がなんとも言えない。
その快感がやみつきになってしまって、瀬を何度も往復する。
デッキに取り付けた荷物を下流側に置き、パックラフトを背負ってもう一度上流へと戻る。

軽量なパックラフトでは、こうやって何度も瀬を楽しむことができるのだ。
船上から見る川は、想像以上に先が見えにくい。
場所によっては、ひとつ目の水しぶきの先がほとんど見えないこともある。
それゆえにスカウティングをするのだが、スカウティングしていたとしても、想定した通りに船を運ぶのは容易ではない。だが、簡単ではないからこそ、また挑戦したくなる。

何度も何度も瀬を下っては、上流へと船を担いで運び、また下る。
一度目の失敗を二度目で改善しようと試みる。
うまく行ったときはコースを見極める洞察力や船を操作するパドリングのスキルが川に勝ったような気がするが、そんなことは稀だったりもする。うまくいったとしても、次では沈しそうになって、肝を冷やすことだって何度もある。
いわば川との駆け引きがワクワクを増幅させるのだ。
そして無事に下りきった先に訪れる静寂。
流れが穏やかでプカプカと浮いているだけで気持ちがいい。

激しい瀬から一転して穏やかな川へと表情を変えるのも、まるで自然が作り出したアトラクションのコースのようである。
風光明媚な長瀞の岩畳を川から眺める。
激しい瀬と美しい景色。この対比が荒川の魅力だ。

水に濡れ、疲れた体を
焚き火で癒やす。

キャンプ場のすぐ横の河原で船を引き上げ、キャンプサイトへと戻る。
ここからは焚き火の時間だ。
日が暮れ始めると気温が下がり、焚き火の暖かさが骨身にしみる。
焚き火で焼いたラム肉を頬張り、腹を満たす。
辺りが段々と暗くなっていく。
焚き火を眺めなら川が流れる音を聞き、今日の瀬のことを思い出す。
バランスを失って、沈しそうになったあの瞬間やコース取りのこと。

恐怖心と達成感が交差する遊び、それがパックラフト。

明日も天気が良ければ川を下ろうか。
僕はもうパックラフトの虜になっている。
パックラフトコース(スタート地点)
親鼻鉄橋付近
〒369-1305 埼玉県秩父郡長瀞町長瀞
(秩父鉄道 上長瀞駅より徒歩約5分)
キャンプ場(ゴール地点)
長瀞オートキャンプ場
〒369-1312 埼玉県秩父郡長瀞町井戸559−1
https://www.nagatoro-camp.com/
佐久間亮介
佐久間亮介
月間最高80万PVのキャンプブログ「camp-in-japan.com」を運営するブロガー、ライター。
1年中、キャンプにまつわる仕事をしているにも関わらず、ぽっかり休みができるとソロキャンプへ出かけるほどのキャンプ好き。
現在は、キャンプ場の新規開業に向けて準備中。
監修:ブループラネットカヤックス
撮影協力: スター商事
今回登場したクルマ:フィット

  • ※このコンテンツは、2021年7月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。