朝マヅメ。
日の出とともに堤防へ。
朝4時半。
キャンプ場手前にある、釣り人が利用できる駐車場にクルマを停めて釣り場へと向かう。
釣り人の朝は早い。いや、朝は早いというよりか、むしろ前日の夜からそのまま繋がっているように思う。
釣りの前日はいつも、海の状態や釣果が気になり、ソワソワして眠れない。
あいにくこの日は、台風が過ぎ去った直後。
「海の荒れ具合を見るに、そんなに釣れないだろうね」と電話越しに言うのは、キャンプ場のオーナーだ。
オーナーは、今回の釣り場である松部漁港から船を出す漁師でもある。
「自然は人間に合わせてくれないからね。もし人間に合わせてくれるなら、俺は毎日が大漁だよ」と笑う。
早速仕掛けをつけて、糸をたらす。
オーナーはああは言っていたが、近くにある釣具店の店員によると
「台風が過ぎ去ると、この漁港には秋のアジが回ってくる」のだそうだ。さらに店員は、
「今日がその日かどうかは魚たちに聞いてみないとわからないけどね。兄さん、頑張って」と続けた。
真夏が終わり、徐々に秋に近づいているのを感じなから、秋のアジが回ってくることを願い、リールを巻いては、糸をたらしてアタリがくるのを待つ。
徐々に明るくなってきた。
残念ながらきれいな朝焼けとはいかなかったが、アタリを待っている間にゆっくりと時間が過ぎていき、世の中が明るくなっていく瞬間を体感できて貴重だった。
これも釣りが教えてくれる自然の美しさなのかもしれない。
そんな思いにふけていたら、ビクッビクッとサオ先が動いた。
波に揺られているときとは違う、生き物がそこにいることがわかるこの感触。
ついにかかった!と期待に胸を膨らませて、リールを巻く。
小ぶりのアジがかかっていた。
釣れるかどうかはわからない。でもサオをおろさないと釣れない。
ときに長い時間待ちながら、ときに仕掛けを変えて攻めたりもしながら、魚を待つ。
これほど「待ち」の多いアウトドアアクティビティもそう多くないのではないだろうか。
でも、そんな待ち時間さえも、日常の忙しさからすると、なんと贅沢なものなのか。そう感じなくもない。
キャンプとは違う時間の流れを感じる。
ポイントを変えて、糸をたらす。
夢中になっていたらすっかり辺りが明るくなってきた。
「待ち」も夢中になれば、退屈なものではなく、あっという間にすぐ去っていくものだ。
キャンプの夕暮れ、焚き火の時間にも同じことが言えるだろう。