#2
SOLOCAMP STYLE - ソロキャンプスタイル

ソロキャンプ
× 外岩ボルダリング

更新日:2020.06.17
ソロキャンプと一緒に楽しめるアクティビティの魅力を、体当たりで探っていく企画。
1年間365日のうち、180日以上をキャンプ場で過ごすキャンプライターの佐久間亮介さんが、ソロキャンプと組み合わせて、様々なアウトドアアクティビティにチャレンジ。普段は、焚き火をして自然の中でのんびりと自由気ままに過ごすのがスタイルだというハードキャンパーが、ソロキャンプの新境地発掘に挑みます。
「ソロキャンプ」だからこそ、自分の楽しみたいことを我慢せずに、自由気ままに遊べる。
キャンプの楽しさ、遊びの幅が広がる「ソロキャンプ × アクティビティ」をご紹介します。

テッペンからの景色と達成感、自己成長を求めて、岩を登る!

今回、ソロキャンプと一緒に楽しむアクティビティは「ボルダリング」。
ボルダリングといっても、人工的な壁を登るクライミングジムでのそれではない。
ロッククライミングの一種であり、岩を登るための専用の道具や安全のために使用するロープも使わずに、岩を身体ひとつで登ることをボルダリングという。
岩登り(ボルダリング)が楽しめるフィールドは全国各地に点在する。
ボルダリングの対象となる岩は通常3〜5m。岩ごとに設定されている「課題」と呼ばれる登攀(とうはん)ルートを、道具を使わずに、己の肉体、素手で登り切る。
クライミングジム等でより高い壁に挑戦したことがある方もいるかもしれないが、自然の岩を相手にすること、そして道具(特にロープ)を使わない緊張感は、人工的な壁を相手にするのと大きく異なる。

長年の風化による岩の突起(ホールド)を手でつかみ、足のつま先やかかとを使い分けて頂上へと進む。
どこにホールドがあって、どの順序で手足を動かし、そして、身体の重心をどのように運べば岩のテッペンまでたどり着くことができるのか。
ルートは事前に確認するが、一度岩を登り始めたら、信じられるものは自分の肉体とルートを瞬時に判断する頭脳のみ。
自分を信じて登る。
登った先に何が見えるのだろうか。

持っていった遊び道具&
ソロキャンプ道具

今回使用したボルダリングの道具。
ボルダリングの基本的な道具は、メインマット、サブマット、ボルダリングシューズ、チョーク(滑り止め)とチョークバッグ、ブラシ(チョークを掃除するためのもの)。
ウェアは、クライミングパンツと言われる、開脚がしやすく、ストレッチ性の高いパンツが最適。
登る岩の高さは5mに及ぶこともある。いくら下にマットを敷いても、落下による怪我のリスクは伴う。まずはクライミングジムに通って、登り方や身体の使い方などを学ぶことから始めるのがセオリー。初めて外岩に登る際は、経験者と一緒にチャレンジするのが無難だ。
なお、ボルダリングには登攀(とうはん)対象となっている岩の課題がまとめられたガイドブック(トポ)がある。各課題には難易度(段級グレード)が設定されており、1番簡単な10級から始まり1級へ。その後初段から数字があがるにつれて、難易度が高まっていく。
どの岩のどの課題を攻略するか、ただ高い岩を登ることを目指すだけではなく、より困難な課題への挑戦もボルダリングの魅力のひとつだ。
積み込んできた主なソロキャンプ道具。
新調した軽量の焚き火台を使うのが、今回の楽しみのひとつ。
今回使用したクルマは、数々の専用装備により“街にもアウトドアにも合う”を体現したフィット クロスター。
フィールドに映えるスタイリングに加え、シートの座り心地をはじめとする乗り心地のよさが抜群。それでいて、ソロキャンプとボルダリング道具を余裕で積載できる多彩なシートアレンジによる使い勝手のよさも健在だ。アクティブなキャンプライフの相棒として活躍してくれる。

今回の遊び場

瑞牆山(みずがきやま)ボルダリングエリア
奥秩父、山梨県に位置する瑞牆山は、3〜5m級の岩の数が多く、課題数が500を数えることから、関東有数のボルダリングエリアとされているクライマーのメッカ。
ところどころに白樺の木が生える森は、まるで北欧の森のよう。ボルダリングのみならずハイキングや登山にも最適。冬季(12月上旬〜4月中旬ごろ)は、閉鎖される。
今回は目的の岩まで歩いて15分で行ける、みずがき山 森の農園キャンプ場を寝床にした。
CHALLENGING

まずはテント設営。
入念にストレッチを。

まずはキャンプ場にチェックイン。
岩場へと向かいたい気持ちを抑えて、ひとまずテントを設営する。ソロ用のテントは、慣れれば5分もかからずに設営が終わるから手軽だ。
雲ひとつない青空の下。緑が美しい森の中のキャンプサイト。ときより吹く風はほんの少しひんやりとしている。標高は、およそ1,500mとあって涼しい。
ボルダリング用のウェアに着替えて、キャンプサイトで軽くストレッチ。岩に登るイメージを膨らませながら、身体を伸ばす。
木漏れ日の中でのストレッチも心地いい時間。
準備を整えてフィールドへ。シューズや小物をマットに取り付け、すべて背負って岩場へ向かう。
キャンプサイトから15分くらい歩いた場所に、今日挑戦する岩がある。

岩場へ。完登を目指す。

自分の身体の何倍もの高さ、大きさの岩がゴロゴロと点在する瑞牆山エリア。
ボルダリングを教えてくれたアウトドア仲間と合流。
ガイドブックを参考に、課題(ルート)を確認。ホールドの位置を把握して、完登までのイメージを膨らませる。
挑戦するのは「ガリガリ岩」の7級の課題。
ホールドの突起が大きいため、しっかりと手足をかけることができる初心者向きの岩。ジムでの経験はあるが、外岩が初めての自分にとっては、適度な難易度の課題だ。
靴をクライミングシューズに履き替えて、滑り止め用のチョークを手いっぱいにつける。
この課題は、地面すれすれの低い体勢から登り始める。岩に取り付くと岩が前傾しているためか、背中を引っ張られるように重力を感じる。下から見上げると想像以上に岩の頂が遠い。
右手と左手。ホールドの形状を感じながら慎重につかむ。ぐっと力強くつかめるポイントもあれば、全くつかめないポイントもある。人工の壁を登るジムとは違う、“生”の岩。ギザギザとした岩肌が、自分の手のひらや指先を刺激する。
両足は、つま先とかかとを、フットホールドの大きさや形状に合わせて使い分ける。

両手両足を岩に合わせて適切なポイントに、適切なタイミングで動かす。
もちろん基礎的な筋力は必要だが、力任せでは登りきれない。
適度に力を抜き、時に身体を岩と密着させ、岩が“示す”ルートに沿って、素直に登っていく。
どこに身体をもっていけば上まで登れるのか、まるで岩と対話をしているようだった。
一手一手、自分を信じて岩に手をかけ、足をかけ登っていく。
徐々に頂上が見えてくる。しかし、登りきるまでは、油断はできない。
「もしこの右手が滑ったら。ホールドから左足が外れたら」と恐怖心が顔を覗かせる。
でも、登るしかない。途中まで来たらもう、登るしかない。なぜならばすぐそこに岩の頂があるからだ。
完登。
「この突き出た岩を、素手で登りきった」達成感を全身に感じる。
他のアウトドアアクティビティにも通じるが、困難と思われる課題や壁に対して、自分の肉体を使って、ゴールまでたどり着かせることにアドレナリンが出る。
この達成感を味わうために、クライマーは岩に登るのだろうか。
違う課題や違う岩も登ってみたい気持ちがふつふつと湧き上がってくる。
そんな気持ちのまま、次に登る岩へ。「大黒岩」の6級の課題に挑戦する。先程の岩よりも高くて、ホールドもつかみにくい。レベルが一段あがった課題だ。
一手一手、的確な手順で完登する仲間。
僕も挑戦する。
スタート地点に立ち、岩のテッペンを見上げて、ルートを確認する。わずかに突起しているホールドや、今まで登ったクライマーが残したチョークの跡を参考に、どのように登れば完登できるのかを頭の中でシュミレーションする。

ホールドに右手をかけて、登ってみる。
無理だ。

指先を入れる穴のあいたホールド、
少し高い位置にある右足を乗せるべきホールド、

どれも今の自分では難しかった。まだ身体の使い方も、筋力も、この岩を登れるレベルではない。
でも、登りたい。
悔しいが、自分の課題が見えた。
今日は難しいが、次に来た時にこの岩を登れるように、トレーニングを重ねればいいのだ。

キャンプ飯を食って、
焚き火して。

岩に夢中になっている間に、だんだんと日が傾いてきた。
キャンプサイトに戻って、チョークまみれになったウェアから、いつものキャンプ用の服に着替える。ここからはキャンプモードだ。

岩に集中しっぱなしだったから、とんでもなくお腹が空いていた。クッカーにお湯を沸かしてラーメンを作る。
空きっ腹にラーメンのスープと麺が染み渡る。
インスタントラーメンなのに、身体を動かしたあとにキャンプサイトで食べるラーメンって、なぜこんなにも美味しいのだろうか。
新調した焚き火台に火入れをする。どんな時だって、新しく買ったギアの、使い始めはなんだかドキドキする。
パチパチと爆ぜる薪の音。ソロキャンプの大切なひととき。
焚き火をしながら、岩の課題に思いを巡らせる。
どの手で、どのホールドをつかめば頂上まで行けるのだろう。
今日登った岩の課題の振り返りと、どうやったら登れなかった岩を完登できるのかに思いを巡らせる。

ボルダリング仲間にその魅力を聞いた。
「岩は、登れば登るだけ、前の日の自分を超えていくことができる。2回3回と繰り返すうちに、なぜこの岩に登れなかったのかと自分でも驚くほどに成長する。つまり、己の成長。そこにボルダリングの面白さがある」

岩に登って、キャンプをして、また翌日、岩に登って。
登れた岩と、断念した岩。

余計な力を抜いて、岩と素直に対峙する。シンプルに登ることだけを考えて上を目指す。
簡単に登れないからこそ、そこに面白さがある。

一度、登りきった岩の頂からの景色を見てしまったから、きっと僕はまた登りたくなるだろう。
あの景色と達成感、自己成長を求めて。
ボルダリングフィールド
瑞牆(みずがき)山
〒408-0101 山梨県北杜市須玉町小尾
キャンプ場
みずがき山 森の農園キャンプ場
〒408-0101 山梨県北杜市須玉町小尾8862-1
https://mizugakiyama.com/
佐久間亮介
佐久間亮介
月間最高80万PVのキャンプブログ「camp-in-japan.com」を運営するブロガー、ライター。
1年中、キャンプにまつわる仕事をしているにも関わらず、ぽっかり休みができるとソロキャンプへ出かけるほどのキャンプ好き。
現在は、キャンプ場の新規開業に向けて準備中。
監修:CLIMBheads 米田治人 https://climbheads.com
撮影協力: devadurga
今回登場したクルマ:フィット

  • ※このコンテンツは、2020年6月の情報をもとに作成しております。最新の情報とは異なる場合がございますのでご了承ください。