タガメ

学 名
Kirkaldyia deyrolli
(Lethocerus deyrolli)
分 類
カメムシ目コオイムシ科
タガメ属
似たような種類
タイコウチ、コオイムシなど前脚が鎌状の昆虫の中で比べものにならないほど大きい。
見つかる場所は?
水田、池、沼、水田脇の水路など。夜は外灯の周りに飛んでくることもある。
分布
北海道を除く日本全国。
大きさ
体長45~68mm。メスのほうが一回り大きい。
見られる時期
5月から9月ごろまで。冬は成虫で越冬するが、山林の落ち葉の下などにいるので見つけにくい。
生活史
成虫は5~7月に交尾を行なう。卵塊は水面上のイネ や杭などに産みつけられ、孵化までの1、2週間はオスが守る。幼虫は5回の脱皮を繰り返し、2ヵ月前後で成虫になる。野外での寿命は1、2年だと考えられている。
エサ
鎌のような前脚を使って、脊椎動物をおもに食べる。カエルやドジョウ、メダカを捕食するが、ときにはヤマカガシ、マムシ、ヒバカリなどのヘビ、小さめのクサガメを捕食することもある。そのほかサワガニやカブトエビ、水生昆虫、水面に落ちた昆虫も捕食する。
特徴
日本最大のカメムシ。大きな体と強力な前脚が特徴で、腹部先端には伸縮可能な呼吸管が付いている。コオイムシと同様にオスが卵塊を保護する。繁殖期に何度も繁殖可能。メスはオスが保護している卵塊を壊して食べ、そこに自らの卵塊を産みつけ、オスに保護させるという卵壊し(子殺し)を行なうことが知られている。
その他
残留性農薬の使用、都市化による人工照明の増加、水田耕作の放棄・陸地化、愛好家による乱獲、在来種アメリカザリガニによる捕食など種々の要因により、タガメの個体数は激減している。全国版レッドデータブックに絶滅危惧 II類として記載されているほか、東京、神奈川、石川、長野では絶滅した。日本全国すべての都道府県の地方版レッドデータブックに記載されている。ちなみに口吻(こうふん:とがったストローのような口) に刺されると痛いので注意が必要。
  • 卵塊を守るオス

  • 日中は泥の中に隠れていることが多く、見つけにくい。イネの根元にいるのが分かるかな……?

※環境省レッドリスト等の掲載種については、法令・条例等で捕獲等が規制されている場合があります。必ず各自治体等の定めるルールに従ってください。

監修者

大庭 伸也(おおば しんや)

大庭 伸也(おおば しんや)

2007年岡山大学大学院自然科学研究科博士課程修了、博士(学術)現在の所属は、長崎大学教育学部准教授。水辺環境に棲む水生昆虫類を対象に、生態学的な視点から食性、繁殖行動、生物種間の相互作用について研究しています。平成22年度日本環境動物昆虫学会奨励賞受賞

監修:大庭伸也
写真提供:稲谷吉則、岡田賢祐、加賀田秀樹、川野敬介、後藤直人、
世古智一、中西康介、橋本洸哉、政所名積、渡部 宏(50音順)