ニュースリリース

2010年07月20日ニュースリリース

2010年7月 社長会見 骨子

~良いものを早く、安く、低炭素でお客様にお届けする~

 昨年6月の社長就任から1年が経ち、これからは新たな成長戦略を描き、それを実行する段階に入りました。
 この数年で、地球規模での環境意識の高まりと、世界経済の構造変化により、世界中の四輪車市場で「小型車志向」が一気に進みました。
 Hondaの次の成長・発展には、こうした時代の変化に迅速に対応することが必須です。
 先進の環境技術を開発・商品化し、新興国市場の事業強化や、小型化への対応をいち早く進めたうえで利益を確保できる企業体質を構築することが、経営の最重要課題です。
 厳しい環境にある今こそ、Hondaの基本思想の「お客様視点」に立ち返り、お客様に喜んでいただける商品を提案し続けることが何よりも大切です。

 以上の認識に基づき、Hondaの「次の10年の方向性」を定めました。私が最も大切と考え、従業員に強く訴えたメッセージは、「良いものを早く、安く、低炭素でお客様にお届けする」ということです。
 「良いもの」とは、お客様が必要なものをHonda独自の技術や知恵・工夫で魅力的な商品として具現化したものです。その「良いもの」を、お待たせすることなく「早く」、そしてお客様に「買って良かった」と喜んでいただける価格でご提供することが、今後のHondaの進むべき道と認識しています。
 また、「CO2排出量を大幅に低減しなければ、パーソナルモビリティメーカーとしてのHondaの将来はない」という強い危機感を持っており、「低炭素」にはその想いを込めました。

 「良いものを早く、安く、低炭素でお客様にお届けする」ために、「環境技術の進化」「生産体制の強化」「新興国事業の強化」という3つの領域で、以下の内容で具体的に取り組んでいきます。

環境技術の進化

  • Hondaは、二輪・四輪・汎用という幅広い商品の技術進化でCO2を低減し、ソーラーやコージェネレーションなどエネルギーを創り出す商品を通して環境負荷低減に取り組んできました。
  • 環境技術を進化させ、その普及をより早く進めることで、環境負荷低減の取り組みを加速します。

四輪車

IMAの普及

  • 「インサイト」や「CR-Z」など、Honda独創の軽量・コンパクトな「IMAシステム」を搭載したモデルを発売し、昨年の国内ハイブリッド販売比率は16%にまで拡大しました。今後もラインアップを拡充し、IMAの普及を加速させます。
  • 今後1年をめどに、小型車を中心にIMAを搭載したモデルを複数、国内市場に投入します。第一弾となる「フィット ハイブリッド」を、この秋に日本で発売します。
  • ハイブリッドの進化に欠かせないバッテリーの技術進化もはかります。次期「シビック ハイブリッド」に採用する高出力でコンパクトなリチウムイオンバッテリーは、今年後半から稼働を開始する、GSユアサとの合弁会社「ブルーエナジー」より供給を受けます

 Hondaが経営資源を集中して取り組んできた、先進環境技術の開発の成果が、2012年をめどに「商品」として具現化していきます。

プラグインハイブリッド

  • 中型以上のモデル向けにプラグインハイブリッドを開発しており、2012年に日米で発売予定です。
  • クルマのサイズや用途に最適なハイブリッドシステムを複数開発して搭載を進め、お客様のご要望にきめ細やかに応えていきます。

ガソリンエンジン

  • 中期的にはガソリンエンジンが主な動力源であり、その性能と燃費向上のための技術進化をはかります。2012年から順次、エンジンとトランスミッションのラインアップを刷新し、一層の燃費の向上をはかります

ディーゼルエンジン

  • CO2低減に有効なディーゼルエンジンについては、現在販売している2.2Lのエンジンに加え、さらに小型のディーゼルエンジンの開発を進めており、2012年に欧州で発売します。

燃料電池電気自動車

  • 長期的には、究極のモビリティは燃料電池電気自動車であり、「FCXクラリティ」の技術進化に加え、水素供給装置などの研究も引き続き、進めていきます。

バッテリーEV

  • 「バッテリーEV」は、航続距離や充電時間などに課題がありますが、「走行時のCO2排出ゼロのモビリティ」として新しい市場を創造する可能性を持っています。燃料電池電気自動車で培った技術を活かし、「バッテリーEV」の早期実用化に向けて開発を進めており、2012年に日米で発売予定です。

これらの商品を2012年をめどに発売し、今後10年で進化させ、普及を加速します。

二輪車

  • バッテリーEVは、現時点でのバッテリー性能を考えると、二輪車はお客様のニーズに合うと考えています。
  • 今年12月、国内の企業や個人事業主を対象に「EV-neo」のリース販売を開始し、技術進化とコスト削減を進めて早期に個人のお客様への販売を目指します。
  • 世界最大の市場である中国では、ガソリン車の市場に加え、電動自転車と呼ばれる中国特有の市場も急拡大しています。Hondaもその市場向けに、来年新しい商品を発売予定です
  • 先進国と新興国で電動二輪車を発売し、性能とコスト競争力を磨き、電動化でも二輪車のマーケットリーダーを目指します。

汎用製品

  • ソーラーパネルやコージェネレーションシステムといった「エネルギーを創り出す商品」を進化させ、将来の家庭用インフラとしての可能性を追求していきます。

次世代パーソナルモビリティ実証実験

  • 昨年の東京モーターショーで、電動化技術を用いた将来の低炭素モビリティ社会を提案しましたが、このコンセプトをより具現化した「Honda Electric Mobility Synergy」というコンセプトの実証実験を、日本と米国で年内に開始することにしました。
  • 日本では、「ソーラーEV充電ステーション」などのエネルギー供給インフラに、二輪の「EV-neo」、四輪の「プラグインハイブリッド」や「EV」といった先進環境技術車と、「モンパル」などの電動化商品を組み合わせた、総合的な「次世代パーソナルモビリティ実証実験」を、Hondaの事業所のある熊本県と埼玉県で、年内に開始します。地元のご協力をいただきながら、地域に暮らす人々の「生活の質」の向上を目指し、「将来のパーソナルモビリティのあり方」についても検討を進めてまいります。
  • また、米国においても、先進技術実証プログラムとして「EV」と「プラグインハイブリッド」の四輪環境技術を中心に、スタンフォード大学、グーグル、カリフォルニア州トーランス市と個別に、2010年末より順次実証実験を行います。

生産体制の強化

日本の役割

  • 電動化などの「先進の環境技術」は、高度な技術やノウハウを持つ日本で生産技術を構築し、進化させます。また、商品の小型化に対応する生産技術の進化を日本から展開します。
  • 日本の工場の役割はますます重要さを増していくという認識から、今後日本の工場が担うべき役割について検討を進めてきました。
  • 日本の工場は「環境商品や小型車に関する先進生産技術の追求」「国内向け商品の効率的な生産」「海外支援機能の強化」という3つの役割に集中していきます。
  • これにより、延期していた国内の二つの新工場についても、方向性が決まりました。

寄居工場 2013年稼働

  • 埼玉県の寄居工場は、2013年の生産開始を目指して稼働準備を再開します。コストや品質の競争力強化に加え、「環境商品を生産する技術」や「低炭素で生産する技術」に関する、次世代に必要な高度な生産技術を確立し、世界の拠点に水平展開する役割を担います
  • 寄居工場でしか実現できない新しい価値や革新的な技術を生み出し、エネルギー効率を追求する最新鋭の次世代工場として、Hondaの世界の工場をリードします。
  • 生産時のエネルギー使用量を最適に制御するシステムの導入や、エネルギーの再利用などで、狭山工場で同じクルマを作った場合と比べて、1台あたりのエネルギー使用量を3割以上削減できる、環境負荷低減に貢献する先進の工場とします。
  • 高度な生産技術を要する環境車を少量で立ち上げ、先進技術を熟成させて生産量を拡大していきます。その後、次世代のHondaの鍵となる生産技術を、寄居から全世界に発信し、グローバルな成長へ繋げます。

鈴鹿製作所で軽自動車を生産し、八千代工業新工場の建設を中止

  • 一方、世界的な小型化に対応するために、2012年から鈴鹿製作所で軽自動車の生産を開始し、次世代モデルで採用予定の車体軽量化と低コスト化に寄与する生産技術を構築します。
  • この技術は、その後小型車にも採用し、将来的には鈴鹿製作所から世界の生産拠点に展開します。
  • これを受けて、八千代工業では、予定していた新工場の計画を中止することを決定しました。なお、八千代工業の既存工場での軽自動車の生産は継続します。

グローバル生産

  • 「需要のあるところで生産する」という基本的な考えのもと、新興国を中心に現地化を進めます。
  • フレキシブルな生産体質を一層強めることで、工場や国をまたいだ供給体制を強化し、急激な市場の変化に対応できる生産体制を盤石にします。

新興国事業の強化

  • 今後も成長が期待される新興国では、二輪車、四輪車、汎用製品を通して幅広い層のお客様を持つHondaの強みを活かし、お客様が望むものをより早く、より安く届けることを徹底します。

二輪事業

新興国

  • 新興国の二輪車はお客様の生活に密着しており、圧倒的な人口を背景とした巨大な市場は、今後もHondaの事業の大きな柱として、さらなる成長が期待できます。
  • 今や競争相手は中国やインドのメーカーで、Hondaがマーケットリーダーであり続けるためには、商品の魅力や品質の高さに加え、低価格に対抗できるコスト競争力をさらに磨くことが必須です。
  • 魅力的な商品の開発に加え、部品や素材の調達など徹底した現地化でコスト競争力を高めてきましたが、こうした取り組みを40年以上続けたタイの工場は、グローバルモデルの生産拠点へと成長を遂げました。
  • 「PCX」に続き、新型スポーツモデルをこの秋にタイで発売し、その後グローバルに展開します。今後もアジア発のグローバルモデルを増やしていきます
  • さらなる現地化に向けて生産能力も増強します。インドやベトナムに続き、インドネシアでは来年後半に年産50万台の新工場を建設し、年産400万台体制にします。市場の成長に応え、今後も新機種を継続的に投入します
  • 一連の生産能力拡大により、Hondaのアジア地域(日本を除く)の年間生産能力は、現在の約1,600万台から、来年末には1,800万台規模にまで拡大し、お客様のご要望に迅速に応える体制を整えます。
  • 1,800万台というスケールメリットを活かし、今後も開発から調達、生産にいたる全ての過程で現地化を強化し、さらに競争力を磨きます。

先進国

  • 先進国は市場の縮小が続く厳しい状況ですが、魅力ある商品を、アジアの競争力を最大限に活用してお求めやすい価格で提供することで、お客様の層の拡大と市場の活性化を目指します。
  • 第一弾として、趣味性の高いFUNモデルの新しいベンチマークとなるミドルクラスのモデルを来年以降に全世界で発売します。
  • 従来の高出力に特化したモデルとは違い、Hondaならではの先進技術やアイデアを盛り込み、低速トルクによる力強い走りなど「操る楽しさ、扱いやすさ」を際立たせます。お求めやすい価格設定で、「より多くのお客様に喜んでいただける商品」を目指します。
  • お客様により身近で、乗って楽しいと感じていただける新しい価値を持ったFUNモデルを投入し、先進国で新たな二輪車市場を創出していきます。

ナイジェリア

  • 市場の拡大が続くアフリカでも、アジアのコスト競争力を使い、販売の拡大を狙います。
  • アフリカ最大で約80万台の市場を持つナイジェリアでは、個人の移動手段としての新たな市場の拡大が期待できます。
  • 中国で生産する部品を使いコスト競争力を高めながらも、お客様のご要望に十分に応える魅力的な「新型125ccモデル」を、2011年半ばに投入します。
  • ナイジェリアでの取り組みに加え、アフリカ諸国でも個人ユーザー向けの販売を拡大していきます。

四輪事業

  • 四輪事業でも、アジアの二輪事業で培った現地化の強みを活用していきます。
  • 小型車市場が急拡大している新興国で勝ち抜くために、「現地の金型で、現地の材料や部品を使って、現地で生産する」という考え方をベースに現地化を加速させます。
  • インドでは2011年、エントリーモデルとして50万ルピーを切る価格の新型車を発売予定です。
  • タイでは同年、同じモデルをベースに高い燃費基準を達成したエコカーとして発売し、アセアン域内へも輸出する予定です。

汎用事業

  • 新興国の汎用製品は、二輪車以上に人々の生活に欠かせないものであり、今後も市場の伸びが期待できます。
  • 特に発電機の需要拡大が著しいアフリカ市場では、Hondaの中国やインドの生産拠点を最大限に活用しながら、魅力ある商品を低価格で提供し、販売増を狙います。インドでは、従来の発電機に加え、医療器具などの精密機器にも対応可能で、高い技術力が必要な「インバーター発電機」の生産を、インド国内で初めて開始します。
  • 農業分野での機械化が進む中国では、日本メーカーとして初めて小型耕うん機の現地生産を開始するなど、Hondaが培ってきた技術やノウハウを活かし、新市場を開拓していきます。

むすび

  • 「環境意識の高まり」と「経済構造の変化」という大きな時代変化の中、Hondaが生き残るためには、これからの10年が勝負となります。
  • お客様視点で「良いものを早く、安く、低炭素でお届けすること」に全力で取り組みます。
  • 「環境意識の高まり」に対しては、Honda独創の先進環境技術を進化させ、魅力的な商品としてお客様への普及を加速させます。
  • 「世界経済の構造変化」に対しては、「新興国事業の強化」と「小型車の競争力強化」を中心に、Hondaらしいものづくりを再強化していきます。
  • こうした取り組みをスピーディーに進めるとともに、企業体質を強化し、Hondaの次の飛躍に繋げます。

以上