ニュースリリース

2005年08月09日ニュースリリース

Honda、イネの培養特性を向上させる遺伝子を発見

 Hondaの研究開発子会社である(株)ホンダ・リサーチ・インスティチュート・ジャパン(HRI-JP)は、名古屋大学と共同でイネの培養特性を飛躍的に向上させる遺伝子を発見した。これにより、最も人気の高い品種「コシヒカリ」を効率的に改良する道が開かれる。

通常のコシヒカリ

通常のコシヒカリ

 植物には本来、葉や茎などの組織の一部からでも完全な植物体を再生する能力が備わっており、この能力を応用した組織培養技術により優良苗の大量繁殖や品種の改良が広く行われている。しかし、この技術はどんな植物でも利用できるというものではなく、植物体を再生させることが困難な(培養特性の劣る)植物種や品種においては利用できない。「コシヒカリ」など日本の優良イネ品種の多くは培養特性が劣るため効率的な組織培養が行えないことが問題となっていた。また培養特性に優劣が生じる生物学的なしくみもこれまで明らかにされていなかった。

PSR1遺伝子活性を改良し培養特性の高まったコシヒカリ

PSR1遺伝子活性を改良し培養特性の高まったコシヒカリ

 今回HRI-JPは、この培養が難しい品種である「コシヒカリ」を材料に用いて、イネの培養特性を向上させる遺伝子を世界で初めて明らかにした。「PSR1」(ピーエスアールワン)と名付けられたこの遺伝子は、植物の必須栄養源である窒素の代謝過程で働く酵素を作る遺伝子であり、「コシヒカリ」ではこの酵素の活性が低いために培養特性が劣ることが明らかとなった。この遺伝子を突き止めたことにより、「培養が容易なコシヒカリ」を作り出すことができ、「コシヒカリ」を超える新品種の開発が飛躍的に容易となる。

 HRI-JPは2005年6月にイネの収穫量を増加させる遺伝子を解明したが、この成果である「多収性コシヒカリ」に対してもPSR1遺伝子による培養特性の向上が可能となる。更には同様に培養困難なために品種改良が進まなかった他の穀物、作物への応用展開も期待される。この成果はアメリカ科学アカデミー刊行のPNAS誌(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)のオンライン版に今週から掲載され、その後8月16日に発行される本誌に掲載される予定である。

 Hondaでは従来よりエネルギーや地球環境といった課題に対して多角的な研究を行ってきた。今世紀の新しい科学技術領域として最も期待されるゲノムサイエンスの分野でも、植物遺伝子研究のモデル植物であるイネの研究を土台に、喜びを次世代へつなぐため、研究活動を進めていく。