ニュースリリース

1998年03月12日ニュースリリース

クリーンエネルギー技術を応用した高効率家庭用機器を開発

 本田技研工業株式会社は、クリーンなエネルギーとして注目されている天然ガスを燃料とした、空調システム“家庭用吸収式ヒートポンプエアコン” 、動力源として応用性の高い“ガスエンジン「GF160V」”、給湯と発電が行える “家庭用コージェネレーションシステム”を開発し、その概要を発表した。

家庭用吸収式ヒートポンプエアコン

 電力やフロンに依存しない新しい空調システムとして、世界初の超小型「家庭用吸収式ヒートポンプエアコン」を開発した。これは、冷媒と吸収剤に最適な物質の組み合せを開発し、ラジエターを用い間接空冷式とすることで、吸収式エアコンとしては初めて寒冷地での使用やヒートポンプ暖房を可能としながら、一般家庭で使用できるサイズ、重量を実現している。

ガスエンジン「GF160V」

 新開発のガスエンジンは、これまで培ってきた高効率なエンジン技術などを活かし、コンパクト・低騒音・ロングライフ・クリーンな排気を実現した世界最小サイズのガスエンジンであり、家庭用ガスヒートポンプエアコンやコージェネレーションシステムの動力源として、応用性の高いものとなっている。このガスエンジンは火力発電所よりもクリーンな排出ガスレベルを実現し、環境への影響も十分に配慮している。

家庭用コージェネレーションシステム

 給湯と発電を行えるホンダのコージェネレーションシステムは、動力として新開発のガスエンジン「GF160V」を採用し、エネルギー利用効率で80%を達成し、しかも一般家庭でも使用できるサイズを世界で初めて実現した。また、こうしたエネルギーの有効利用に加え、ガスエンジンでの発電により電力を自給することにより夏季の電力ピーク緩和の効果も期待できる。

なお、これらの新技術は、3月21日にツインリンクもてぎ内に、オープンするホンダファン ファンラボに展示される。

技術概要

世界最小の家庭用吸収式ヒートポンプエアコン

 電力やフロンに依存しない新しい空調システムとして、世界初の家庭用超小型「吸収式ヒートポンプエアコン」を開発した

主な特徴

  • フロン系冷媒を使用せず、非結晶で耐腐食性に優れた、高効率な有機系フッ化アルコール(TFE)を冷媒に、高沸点の極性溶媒(DMI)を吸収剤に使用
  • 水を消費しない経済的な空冷式を採用
  • 吸収式で世界初のヒートポンプ暖房を実現
  • システム全体にアルミニウムを採用し、軽量コンパクトで低コスト化を達成
  • 3モード自動切り替え機能により、オールシズンエアコンとして高い通年性を実現
「吸収式ヒートポンプエアコン」研究用モデル機

「吸収式ヒートポンプエアコン」研究用モデル機

吸収式ヒートポンプエアコン作動サイクル

冷房(モードA)

  • 1)再生器でバーナーにより暖められた冷媒と吸収剤の混合ガスが精留器内で分離
  • 2)冷媒蒸気が凝縮器に入り、空冷式顕熱交換機からくる冷却水により冷やされ液化
  • 3)液化した冷媒液が蒸発器に送られ、圧力差により冷媒液が気化
  • 4)気化熱により作られた冷水を室内機に導きクーラーとして作動させる
  • 5)蒸発器から吸収器に入った冷媒蒸気は、再生器からおくられてきた吸収剤に吸収され、再び液化し溶液熱交換機で暖められ精留器に戻る
  • 6)このサイクルを繰り返しエアコンディショナーとして作動する。再生器のバーナーによる加熱のほかは、大気温度との温度差を利用する間接空冷により、冷媒は液化と気化を繰り返すことでシステムは成立している。

暖房(1)(モードB)

凝縮器と吸収器により加熱された冷却水をバルブの切り替えにより室内機に導き、暖房として利用するヒートポンプエアコンとして作動する。

暖房(2)(モードC)

気温摂氏0度以下に下がった場合は、バーナーで直に冷却水を加熱し室内機に導く、直火暖房システムに切り替わる。 

この3つのモードは、外気温や室内機の設定温度などにより、自動的に切り替わり、通年使用を可能にしている 

作動サイクル

作動サイクル

テスト機の主要諸元

  研究用モデル機
冷房能力(kW) 2.5
暖房能力(ヒートポンプ時:kW) 4.0
暖房能力(直火時:kW) 4.5
室外機サイズ(全巾×奥行×全高 mm) 800×250×680

世界最小のガスエンジン「GF160V」

 盛夏時のピーク電力需要を低減する家庭用ガスヒートポンプエアコンのパワーユニットや家庭用マイクロコージェネレーション等のパワーユニットとして最適な、世界最小サイズを達成したガスエンジン「GF160V」の主な特徴

  • 希薄燃焼方式により、低レベルのNOxを達成したクリーンな排出ガス
  • 多段室式吸気サイレンサーや大容量エアクリーナー、各部品の高剛性化などにより、ガスエンジンとして低騒音、低振動を実現
  • 20,000時間の耐久性を確保(通常使用で約10年*
  • 大容量オイルタンクやロングライフスパークプラグの採用などのより、メンテナンスのインターバル 6,000時間を達成(通常使用で約3年*
  • コンプレッサーを上部に直結配置するバーチカルタイプエンジンレイアウトの採用 
  • バーチカルタイプ: シリンダーが水平方向でクランクシャフトを天地方向とした縦置きエンジン。 これに対し、クランクシャフトを水平方向に配置したエンジンは、ホリゾンタルタイプと呼ぶ
  • 家庭用ガスヒートポンプエアコンの業界基準
ガスエンジン「GF160V」

ガスエンジン「GF160V」

主要諸元

名 称 GF160V
形 式 4サイクル水冷単気筒OHV
サイズ(全巾×奥行×全高 mm) 408×235×422
総排気量(cc) 163
ボア×ストローク(mm) 62×54
通常回転数(rpm) 1,500~3,300
使用燃料 都市ガス(13A)/ LPG
ライフサイクル 20,000時間
メンテナンスインターバル 6,000時間
  • ガスヒートポンプエアコン
    電気モーターの代りに、都市ガス(13A)やLPGを燃料とするエンジンによりコンプレッサーを駆動させ、エアコンディショナーとして稼動させる。盛夏時の電力需要ピークを下げるものとして、研究開発が進められている。

世界最小の家庭用コージェネレーションシステム

特徴

  • 発電と給湯を効率良く行い、また燃料に天然ガス(都市ガス13A)を用いることによりCO2を低減
  • 三元触媒+O2フィードバック制御により、NOxの排出を極めて低レベルにおさえている
  • 発電機は、多極式正弦波インバーター発電機の採用により、商業電力と同等の高品質なの電力を出力
  • 電力と給湯をあわせた総合熱効率で80%を実現
  • 家庭用エアコン室外機並の低騒音を実現 
「マイクロコージェネレーションシステム」

「マイクロコージェネレーションシステム」

主要諸元

使用燃料 天然ガス(都市ガス13A)
エンジン型式 GF160V
エンジン形式 4サイクル水冷単気筒OHV
総排気量(cc) 163
発電機形式 多極式正弦波インバーター発電機
発電出力(kW) 1.8
給湯能力(kcal/hr) 4,100
サイズ(全巾×奥行×全高/mm) 480×520×1,000