HONDA The Power of Dreams
HONDA The Power of Dreams
第17戦/ 日本GP レビュー
10月16日(火) レポート:柴田久仁夫
日本GP、そして2001年シーズンを終えて
21世紀最初のF1シーズンが、無事に終わりました。開幕前には想像すらしなかったテロ事件の余波で、F1GPも大きく揺れました。事件直後には開催中止の可能性さえ検討され、予定通り始まっても、最後まで安心できない状態でした。ですから関係者は今、「無事に終わってよかった」という実感をしみじみ抱いているはずです。
選手権自体に目を転じると、フェラーリとミハエル・シューマッハの強さばかりが目立った1年でした。締めくくりとなる日本GPも、ポール・トゥ・ウィン。これでシーズン最多勝タイ記録の9勝。そしてシーズン最多ポイント獲得の新記録を樹立しました。それ以前に4度目のタイトルを獲得し、生涯最多勝記録を更新し続けています。まさにシューマッハの前に敵なしの1年でした。
昨年までのライバル、ミカ・ハッキネンはスズカを最後に、少なくとも1年間の休養に入ります。「実はそれを考え始めたのは、開幕戦のメルボルンだった」と、鈴鹿のパドックで彼は明らかにしていました。予選でフェラーリに圧倒的な差を付けられ、レースはリタイヤ。あの時、張り詰めた気持ちが崩れ始めていったと。
ハッキネンのほかに、ジャン・アレジもこの世界から去っていきます。ドイツGP直後、プロスト・グランプリからジョーダン Hondaに電撃移籍。その後6戦をこのチームで戦い、入賞も果たしてきました。最終戦は残念ながら、事故でリタイヤ。しかし第2の故郷とも言うべき日本で最後のレースを戦えたことを、アレジは本当に喜んでいました。エディ・ジョーダンは、彼がチームに残って豊富な経験を生かしてくれることを望んでいます。来季デビューする佐藤琢磨の教育係になったら最高でしょう。どちらにしても、あれだけレースを愛した男ですから、まったくそこから縁を切った生活をすることはないはずです。
フェラーリとシューマッハの独壇場と冒頭で述べましたが、BMWウィリアムズの躍進は著しいものがありました。順当に行けば、来季のフェラーリのライバルはこのチームになると思います。「まだタイトルを狙えるレベルではない」と、BMWのゲルハルト・ベルガーは言います。確かにチーム全体の総合力、どんな性格のサーキットも苦にしないレベルの高さでは、フェラーリに一日の長がある。しかしかなり脅かす存在になるのではないか。それには今シーズン復帰した、ミシュランの貢献度も大です。このタイヤメーカーは来年はいっそう、戦闘力を増してくるでしょう。
さらにウィリアムズで言えば、ホアン・パブロ・モントーヤの成長もかなり楽しみです。デビュー1年目の今シーズンは1勝。しかし場所を選ばぬ速さや、卓抜したマシンコントロールは、ただものではありません。ハッキネンの去った後、シューマッハのライバルの最有力候補です。
もちろん彼以外にも、楽しみな新人はたくさんいる。来年マクラーレンに移籍するキミ・ライコネン。彼以上と評価する人もいる、フェルナンド・アロンソ。そして来年ザウバーからデビューする弱冠20歳のブラジル人、フェリペ・マッサもかなりの逸材のようです。そして佐藤琢磨。久々の日本人ドライバー。しかもこれまでで最高の才能と、期待されている。
その彼がどこまで活躍できるかは、もちろんチームの力にもかかっている。Hondaの2チーム供給1年目となった今年、BARとジョーダンは期待外れのシーズンを送ることになってしまいました。原因はいろいろありますが、ひとことで言えば他チームほどの進歩ができなかったということです。開発能力、チーム運営能力、それらが問われた1年でした。最終戦の鈴鹿は、4台中3台が完走しながらノーポイント。残念ながら、今年の最終的な実力を忠実に反映した結果と言わざるを得ません。
しかしHondaは、もちろんこのまま引き下がるつもりはありません。来年は、大幅な開発力向上が期待されます。西澤さんの話にもあるように、すでにニューエンジンの開発は順調に進んでいる。BARとのシャシー開発も、質量ともに関与の度合いが大きくなるということでした。スズカの惨敗が、必ず飛躍へのバネになってくれることでしょう。