第14戦 ベルギーGP レビュー  9月3日(月) レポート:柴田久仁夫





 FIGPのレギュレーションが今シーズンから変わって、「スタート後3周目以降の赤旗中断は、その順位を基にしたグリッドで新たなレースを行う。ただしその前のレースでの順位のみ考慮され、タイムは加算されない」ということになりました。そして今回のベルギーGPが、その新ルールの初めて適用されたレースとなりました。
 プロスト・グランプリのリカルド・ブルチは、ほとんど減速しないまま、時速200km超のスピードでタイヤバリヤに激突。しかし幸い、骨折などの大怪我は避けられたようです。この事故による赤旗中断、そしてそれ以前のフレンツェンやモントーヤのグリッド上でのエンストなど、実に波乱の多いベルギーGPでした。2ヒート目のレースのフォーメーションラップが始まる際には、マシンが作業用の馬に乗ったままでラルフ・シューマッハが最後尾に転落するという、ウィリアムズらしからぬミスまで起きました。

 そんな混乱の中にあって、3番グリッドスタートのミハエル・シューマッハは、1周目であっさりトップに立つと、そのまま独走。今季8勝目、そして前回ハンガリーGPでアラン・プロストに並んでいた最多勝記録51をひとつ伸ばし、とうとう未踏の領域に入りました。今のフェラーリとシューマッハの安定感からすると、この記録はまだまだ伸びることになるでしょう。

 一方Honda勢は、移籍まもないジャン・アレジが初入賞。しかし彼が6位に入ったほかは、ジャック・ビルヌーブ8位、オリビエ・パニス11位、そしてヤルノ・トゥルーリは、ゴールまであと4周だった32周目にエンジントラブルでリタイヤと、不本意な結果に終わりました。
 この中では特に、今季自己最高の6番グリッドを獲得したビルヌーブが、レースで真価を発揮できなかったことが悔やまれます。
 初日から順調にクルマが仕上がり、ドライでもウェットでもかなりの速さを見せていた。それが決勝日のウォームアップでは、トップから3秒5落ちの17番手。かなり重い燃料を積んでの1回ストップ作戦を試したようです。最終的にはそれは採用しなかったものの、6番手という上位グリッドからスタートする際の作戦としては、保守的過ぎたように思います。
 そしてレース決勝でも、グリッドで雨がぱらぱらと落ちてきたことで、急いでウェット用のハイダウンフォースのセッティングに切り替えてしまいました。これが結果的には裏目に出て、ビルヌーブもパニスもハイペースの走りができませんでした。

 なかなか努力が結果に結びつかないうちに、ライバルたちは着実に力を付けつつあります。今回BMWウィリアムズやザウバーは自滅してしまいましたが、その代わりにルノーのジャンカルロ・フィジケラが今季初表彰台を獲得しました。争いは、今後いっそう苛烈さを増していくことでしょう。そこから頭ひとつ抜け出すためには、かなりの努力と技術の蓄積が必要でしょう。Hondaのエンジニア集団が1日も早くそれをやりとげてくれることを、祈るばかりです。