HONDA The Power of Dreams
HONDA The Power of Dreams
第12戦 ドイツGP
HRDテクニカル・ディレクター
西澤一俊のひとりごと
7月30日(月)
予選までは、正直言って暗い洞窟に入りかけてたような気持ちでしたからね。アタックの失敗や黄旗に邪魔されたこともあったにせよ、最高が10番グリッドというのはあまりにふがいなかった。エンジンも壊れましたしね。ですからこの結果には、素直に喜んでます。
ジャックは決勝当日のウォームアップで、違うセッティングのTカーに乗ったら、ハンドリングが見違えるように良かった。それでそのままこのクルマでレースに出たのが、成功の大きな要因でした。その後、レースではペースの伸びないトゥルーリに引っかかりましたが、それほどタイムロスしないで済んだ。逆に2回ストップでタイムを稼ごうとしていたパニスは、これで入賞の目はなくなってしまいましたが。
その後も上位陣が次々にトラブルで脱落する中、ジャックは安定して速かった。まったく危なげない走りでした。ただ、最後に若干ペースが落ちたのは、ガス欠の恐れがあったからです。給油後の燃料消費が、予想したより多かった。それで最後は、燃費走行をしてもらった。スムーズに走れるギリギリまで回転数を落としましたが、さすがにうまかった。後ろのフィジケッラ(ベネトン)にも、追いつかれるような危うさは見せなかったし。
ここは全17戦を通じて、エンジンに最も厳しいサーキットなんです。そして今年は、それがさらにレベルが高くなっている。今まではエンジンの全開率が60%強だったんですが、今回計測してみたら、なんと70%まで上がっていた。主にトラクション・コントロールの導入と、タイヤの性能が上がったことが、その理由です。1分40秒ほどのタイムのうち、70%がエンジン全開なんですからね。壊れるエンジンも出てくるはずです。
ジャックも、初表彰台だったスペインGPに比べて、こっちの方がずっとうれしそうだった。それはそうでしょう。クルマも良かったし、戦って勝ち取った3位ですから。確かに上位陣のリタイヤにも助けられました。でもサバイバルレースをちゃんと生き残るのも、実力のうちですからね。次回もこの勢いに乗って、ぜひ上位入賞を果たしたいと思います。