HONDA The Power of Dreams
HONDA The Power of Dreams
第11戦 イギリスGP レビュー
7月17日(火) レポート:柴田久仁夫
今回のイギリスGPは、次の3つのポイントが印象に残りました。まず、きわめて珍しいフェラーリの作戦ミス。そしてBMW・ウィリアムズ・ミシュラン連合が、オールマイティではなかったこと。最後に、今季3度目のHonda勢のノーポイントレースです。
フェラーリが1回ストップ作戦を取ったことは、まさに不可解でした。シミュレーションでも1回の不利は明らかだったし、実際のレースでも、重いマシンのミハエル・シューマッハは、まったく精彩がなかったからです。シューマッハ自身はレース後の会見で、「もし2回ストップにしていたとしても、結果はどうなったかわからない」と言っていました。確かにその通りです。しかし6位スタートのルーベンス・バリッチェロが1回作戦を取ったのはまだ理解できるにしても、ポールポジションのシューマッハにとって、1回ストップのメリットはなかったはず。完全な作戦ミスでしょう。ロス・ブラウンもそれを認めるような発言をしています。彼には珍しい、明らかなミスでした。
そして開幕以来ここまで、素晴らしい速さを発揮してきたBMW・ウィリアムズが、イギリスGPでは完全に脇役でした。すでに金曜の時点で、「このサーキットでは、成功は期待できない」と早々と白旗を掲げています。実際、予選まではまったく精彩がなく、モントーヤ8番手、ラルフ10番手のグリッドが精一杯。レースでは、ウィリアムズマシンの加速の鋭さを活かして、モントーヤが一気に3番手にジャンプアップ。最終的に4位に入賞したのは、立派です。しかしあれが精一杯でした。ミシュランも、ブリヂストンのニュータイヤに太刀打ちできなかった。土曜日午前のウェット路面では、レインタイヤの性能がまだかなり見劣りすることも露呈してしまいました。BMW・ウィリアムズ+ミシュラン連合軍は、まだあらゆるサーキットで強い、というレベルまで行っていないと言うことでしょう。
というわけで、ハッキネンの今季初優勝は、彼らしいぶっちぎりの勝利ではあったけれども、状況に助けられた部分も少なからずあります。これをもって「ハッキネン復活!」というのは、まだちょっと早いでしょう。
最後に今回のHonda勢・・。ジョーダン Hondaは予選、レース直前のウォームアップ走行と終始一貫して速く、マシンにトラブルさえ出なければ、上位入賞はほぼ間違いないものと期待していました。そしてトラブルは出なかった。しかしヤルノ・トゥルーリは他車と絡んで、早々に姿を消してしまいました。そして5番手のフレンツェンは、スタートの出遅れが響いて前に出られなかった。ピットインのタイミングも悪かった。BAR Hondaの方は、パニスがやはり1周目でリタイヤ。そしてビルヌーブは1回ストップという作戦もあって、走りに精彩が感じられませんでした。西澤さんも言っていましたが、マシンは着実に進歩している。それだけに結果が出ないのは、特に今回のようにそのチャンスがかなり大きかった場面でそれを逃してしまったのは、残念としか言いようがありません。
最後の最後に余談ですが、明るい話も入れましょう。日曜午前のサポートレースで行なわれた国際F3。そこで佐藤琢磨選手が、ぶっちぎりの速さを見せてくれました。シルバーストンで、多くのF1関係者の前でのポール・トゥ・ウィン。BARのテストドライバーとしての評価も高いと聞きます。彼のような逸材が少しでも早くF1にステップアップできるよう、周囲はもっとプッシュすべきではないかと思います。