第10戦 フランスGP レビュー  7月2日(月) レポート:柴田久仁夫





 2週連続のGPを、ミハエル・シューマッハが2戦とも制しました。これでシューマッハは通算50勝。アラン・プロストの持つ生涯最多勝記録に、あとひとつまで迫りました。このまま行けば、7月中に新記録が生まれる可能性すらあります。本人は、「記録なんて全然意識していない」と言っていますが、やはりシューマッハはF1の歴史上屈指のドライバーと言えるでしょう。

 そしてその弟ラルフも、今年になって大化けしつつあります。この2連戦、今回のフランスGPはシューマッハの堂々たる勝利でしたが、前回はラルフが勝っても全然おかしくなかった。今シーズン、ラルフはすでに2勝を上げ、そしてフランスでは初めてポールポジションを獲得している。ウィリアムズとBMW、そしてミシュランの総合力が彼をここまで押し上げていることは間違いありませんが、しかしラルフ自身も1レースごとにぐんぐん伸びている感じです。兄弟の互角の争いは、今後も続くのではないでしょうか。

 一方マクラーレン・メルセデスは、このままだと「かつての2強」という形容詞が付いてしまうでしょう。ハッキネンは、またも1周もできずにリタイヤ。この10戦で、マクラーレンがグリッド上に立ち往生したのは、なんと二人合わせて5回です。そしてクルサードも、10秒ペナルティというハプニングはあったにせよ、表彰台に上がれずに終わった。さらにここ数戦の予選で、マクラーレンはつねにBMWウィリアムズの後塵を拝している。カナダ、ニュルブルグリング、マニクールと、それぞれ性格の違うサーキットでまんべんなくマクラーレンより速かったウィリアムズ。獲得ポイントこそまだマクラーレンの方が多いですが、これも遠からず抜かれてしまうでしょう。

 フランスGPが期待外れに終わったのは、Hondaも同じです。前週ヨーロッパGPのような3台リタイヤはなかったものの、ヤルノ・トゥルーリの5位入賞が最高位だった。しかも4位以上ははるか先を行き、シューマッハに周回遅れにされる寸前のチェッカーだった。
 すでに何度も言っていますが、今年のジョーダン Hondaはレースになると、予選の速さがウソのように影を潜めてしまう。もうずいぶん前からその対策を講ずるべく努力しているのに、まだ効果は上がっていません。予選5番手。ポールとの差もコンマ3秒しかなかったトゥルーリが、レースになると1秒以上も遅くなってしまう。この症状は、かなり深刻です。
 一方、モナコからカナダにかけて、調子が上向きに見えたBAR Hondaも、この2戦は失速気味です。両チームとも、出口がはっきり見えてない状況と言っていいかもしれません。どう打破したらいいのか。地道なテストを繰り返すしかないのでしょうか。細かな改良パーツは今後も次々に投入されますから、そのうちに復活の兆しがつかめるのかもしれませんが。
 しかし今のままでは、コンストラクターズ選手権3位という目標は、きわめて達成が難しいと、言わざるを得ないでしょう。