第8戦 カナダGP レビュー  6月13日(火) レポート:柴田久仁夫





 ラルフ・シューマッハが、今シーズン2勝目を挙げました。今年のBMW・ウィリアムズは、コーナーからの立ち上がりとストレートの速さにかけては、フェラーリやマクラーレンに負けないマシンといわれています。カナダGPの舞台となったジル・ビルヌーブサーキットはまさしくそんな彼ら向きのコースで、上位入賞が予想されていました。
 にしても、ぶっちぎりと言ってもいい勝利。終盤は兄のミハエル・シューマッハ、そして3位を走るミカ・ハッキネンも、まったくラルフのペースに付いていけませんでした。メルセデスのノルベルト・ハウグは、「今回に関しては、BMW・ウィリアムズとミシュランのパッケージに、われわれは劣っていた」と完敗を認めています。

 ブリヂストン陣営の衝撃も大きかった。カナダでのラルフはミシュランのハードタイヤを選択したのですが、これが予選・レースともに素晴らしい安定性と速さを発揮した。路面温度によってタイムのバラツキがあったようですが、予選とレース時のコンディションがちょうどピッタリ合うという幸運にも恵まれた。いずれにしても、これまでは慎重なタイヤ投入をしてきたミシュランでしたが、ここに来て大胆な選択をする余裕も出てきたといえるでしょう。
 また今回ブリヂストンは勝利をさらわれただけでなく、5、6位にもミシュラン勢に入られてしまった。その結果1レースでの獲得ポイントで初めて、13点ずつで並ばれてしまいました。レース後、ブリヂストンのエンジニアたちは長い間ミーティングを続けていて、報道陣の前に姿を現しませんでした。やはり相当のショックだったようです。

 Hondaにとっても、厳しいレースとなってしまいました。ヤルノ・トゥルーリが2列目4番手、オリビエ・パニスが3列目6番手。いずれも今シーズン最高の予選順位を獲得。さらにパニスは決勝日のウォーム・アップで、フルタンクでトップタイムを記録。かなり意気上がっていました。
 ところがレースで、Honda勢は次々に脱落してしまいます。まずジャック・ビルヌーブ、続いてパニス、トゥルーリ。体調不良で休んだハインツ・ハラルド・フレンツェンの代わりに、急遽レースに出場したリカルド・ゾンタだけが、チェッカーを受けました。
 ビルヌーブは駆動系、パニスとトゥルーリはブレーキ、そして完走したゾンタも、終盤は同じブレーキトラブルを抱えて、ペースが上がらなかった。ビルヌーブにも同じような症状が出ていたといいます。結局Honda勢は今シーズン初めて、ノーポイントに終わってしまいました。

 このサーキットは、確かにブレーキに非常に過酷なレイアウトです。他にも同じようなブレーキトラブルで、少なからぬマシンがリタイヤしました。にしても、Honda勢の4台がほぼ同じようなトラブルに見舞われて、せっかくの予選のパフォーマンスがフイになってしまったのは、残念というほかありません。
 今回Hondaは、新しいエンジンをカナダに持ち込み、一定以上の成果を上げています。西澤さんも言っていますが、ドライバーが十分に体感できるほどのパワーアップに成功した。さらに信頼性にもまったく問題が出なかった。それだけにカナダの自滅は残念というほかないのですが、しかしHondaがいよいよ王道のパワーアップ路線に出てきた。それが今後に向けての、一番の明るい材料でしょう。