第6戦 オーストリアGP レビュー  5月15日(火) レポート:柴田久仁夫





 波乱のレースでした。スタートからして、ミカ・ハッキネンを始め、4台ものクルマがグリッド上に立ち往生してしまう。そして優勝候補の一角が次々と崩れ、最後はピットインをギリギリまで遅らせたマクラーレンの作戦勝ち。2、3位のフェラーリは、ルーベンス・バリッチェロが2位を譲るのを最後まで拒否して、チーム内のゴタゴタが垣間見えました。

 止まってしまった4台の中にジョーダン Hondaの2台が含まれ、Honda勢はあっという間に戦力が半分になってしまいました。しかもジャガーを追いかけていたジャック・ビルヌーブは、接触して順位を落とし、さらに後半にはピットロードのスピード違反で10秒ペナルティを受ける。頼みの綱は、オリビエ・パニスだけになってしまいました。
 そのオリビエは7周目にはエディ・アーバインを抜き、11周目には最速タイムを叩き出します。その後9周にわたってミハエル・シューマッハとバトルを繰り広げるなど、かなり速いペースで快走を続けました。
結局2セット目のタイヤで挙動がおかしくなったこともあって、5位でゴール。それでもチームは前回のビルヌーブの表彰台に続いて、連続入賞を果たしました。
 ひとりごとでパニス自身が言っているように、フェラーリやウィリアムズとの差はまだ少なからずある。しかしコンスタントにポイントを獲得できたのは、評価すべきでしょう。これまた彼が言っているように、予選グリッドが後ろだったことも今回の結果に響いている。次回のモナコGPは、全17戦の中でも屈指の「抜けないサーキット」ですから、グリッド位置がいっそう重要になるのは言うまでもありません。レースでの速さが報いられるような予選に、期待したいものです。
 一方のジョーダン勢は、特にトゥルーリは、せっかくの5番手グリッドがまったく報いられない展開。ここまで彼は、開幕以来すべての予選で3列目と4列目グリッドを獲得してきたのですが、それがほとんど結果に繋がっていない。ここ2戦は、チーム自体入賞からも遠ざかっています。これをどう打開していくか。
たんなる予感ですが、次のモナコでそろそろトゥルーリはブレイクしてくれそうな気がするのですが・・。

 辛くもチャンピオン争いでトップを守ったシューマッハ。チームはバリッチェロのことは、「何でもない」と火消しに務めています。しかし彼があそこまであからさまに逆らったということは、すでに来年以降の契約更改に、彼に不利な結論が出ているのではないでしょうか。たとえば放出が決まったとか。そうでないと、あの態度はあまりにも不可解です。
 マクラーレンのデビッド・クルサードは、今回の優勝でシューマッハに4点差に迫りました。彼のこれまでのドライバー人生で、最高のシーズンになるかもしれません。一方ミカ・ハッキネンは、よほどの奇跡がない限りチャンピオンの芽はほぼなくなりました。しかしチームは依然として、チームオーダー発令は否定しています。フェラーリと全くの好対照です。それがチャンピオン争いに、最後にどんな影響を与えるのか。ハッキネンの脱落で主役は交代しましたが、フェラーリとマクラーレンのタイトル争いは、終盤までもつれることは間違いないでしょう。
 そしてリタイヤはしましたが、フアン・パブロ・モントーヤがまたもやシューマッハ相手に、一歩も引かないバトルを繰り広げました。90年代初めにシューマッハがアイルトン・セナに対してしたことの、まさに再現。世代交代、そして新たなチャンピオンの登場にわれわれが立ち会いつつあることは、間違いないでしょう。