HONDA The Power of Dreams
HONDA The Power of Dreams
第5戦 スペインGP レビュー
5月2日(水) レポート:柴田久仁夫
前回のレビューを、「せめて今のうちに一度表彰台に上がれると、ずいぶん勢いが出て、流れが変わったりするんですが」という言葉で結びましたが、はたしてその祈りが通じたのか、スペインGPでついに表彰台を獲得しました。HondaがF1に復帰して、22戦目。とりあえず晴れ舞台の一番下の場所ですが、最初のステップには到達したといえます。
ずいぶん苦労した末の初表彰台。「ようやく」という思いのHondaファンも多いかもしれません。それはたとえば、同じ時期に復帰したBMWが第1戦目に表彰台に上がっていることを思うと、よけいその感は強いでしょう。しかし向こうは、名門ウィリアムズをパートナーに選んでいます。一方こちらは、あえて新興チームと組む道を選びました。確かに長い道のりで、回り道もしたかもしれません。過去に何度か、あわや表彰台というレースも逃してきました。ここは素直に、この3位入賞を喜びたいと思います。
西澤一俊さんが「ひとりごと」で、「(初表彰台が)ジャックでよかった」としみじみ言っていましたが、僕もまったく同感です。BARとジョーダンなら、やはり1年目から苦労をともしてきたBAR。そしてBARの中では、ジャックが表彰台を獲得することがチームの意思だったと思うのです。彼自身、「チームにとって本当によかったと思っている」と、何度も繰り返して語っていました。ジャックにしてみれば、表彰台の一番上でないことは不満だろうし、ましてや今回の3位が実力で勝ち取ったことでないことも十分承知している。
チームがまだクリアしなければならない課題は、山のようにある。しかし一方で、たとえタナボタであったとしても、そのボタモチが落ちてきた時に拾えるようなポジションにいたことも確かです。それだけの進歩はしている。再び冒頭の言葉に戻りますが、これがチームの勢いを取り戻すきっかけになってくれるのではないかと、期待しています。
タイトル争いに目を転じると、この第5戦はミカ・ハッキネンにとって致命傷に近い打撃を与えてしまったかもしれません。まだシーズンは3分の1も終わっていないのですが、気になるのはこのチャレンジャーの「迫力のなさ」です。この1、2戦、どこか満ち足りてしまったような印象なのです。ぜがひでもタイトルを奪回するという気迫が、話を聞いていても気迫です。リタイヤ直後にシューマッハが駆け寄っていったときも、笑顔を返している。そこが彼の人柄の良さでもあるのですが、いかにも悔しそうな表情を見せていたエリヤ夫人とは実に対照的でした。
もちろんマクラーレンが、このままズルズルと勝てないままでいるはずはない。しかしミカがこの調子のままだと、チームはクルサードの方に主力を注ぐようなことになるかもしれません。
ただしフェラーリにしても、満身創痍の勝利でした。トラブル原因は明らかにしていないものの、今回から導入されたハイテクデバイスが直接間接に関係していた可能性は十分にある。トラブル以前に、レース本番にシステムを使わないチームもかなりありました。まだ今後数戦は、いろいろな混乱が生じることでしょう。Honda勢でいうと、BARマシンの挙動改善にトラクションコントロールが予想以上の効果を発揮したようです。予選とレースの双方で、BARがジョーダンを上回る速さを見せたのは、その辺にも秘密がありそうです。
一方のジョーダンは、やはりレース時になると別のクルマのように精彩がなくなってしまう。満タンにするとバランスが悪くなってしまうとか色々言われていますが、今のままではせっかくの予選の速さがレースでまったく活かされない。「Hondaの初表彰台は、ぜひ僕の手で」と、トゥルーリは言い続けていました。残念ながら彼の望み通りにはいきませんでしたが、予選でかなりの速さを見せるヤルノの、レースでの活躍もぜひ見たいものです。