第5戦 スペインGP

HRDテクニカル・ディレクター
西澤一俊のひとりごと 4月30日(月)





「ジャックの表彰台は、素直にうれしいですよ」
 とりあえず復帰後初めての表彰台ですからね。素直に、よかったと思ってます。うれしいのと、安心したのと、両方の気持ちですね。ただしこれが我々の目標でないことは、言うまでもありません。表彰台の一番上、そして年間タイトルが目標ですから、これはあくまでそのための最初の一歩に過ぎません。今回のレースでも、反省すべきことはたくさんありますしね。ただチームはすごく喜んでいたし、これが開発の弾みになってくれるんじゃないでしょうか。

 今回のレースでは、エンジンも安定して回って、トラブルフリーでした。今回から採用したトラクション・コントロールも、たとえばオリビエ・パニスは、「非常に役に立った」と言っています。たとえば低速コーナーの立ち上がりとかスタートで、ホイールスピンを防いで最大のトラクションを稼ぐ。そういう面に目が行きがちなんですが、オリビエの場合は「高速コーナーでのオーバー挙動が、大幅に改善された」と言ってる。そういう効果もあるんですね。オリビエは残念ながらクラッチトラブルで遅れてしまいましたが、ジャック以上のハイペースで走ってましたから、それさえなかったら当然入賞圏内に入っていました。
 自動スタートシステムは、二人とも使いませんでした。一方、ジョーダンの二人は採用しています。それから自動シフトアップは、オリビエだけが使いました。それを見てもわかるように、まだすべてのドライバーが無条件でハイテクデバイスを使うようなレベルには、達していません。サーキットごとのチューニングもしなければなりませんし。しかしかなりいろんな分野で、使える武器になりそうですね。

 初表彰台までは、長かったですね。去年も何度かそんなチャンスがあったんですが、結局逃してきたし。結果的に、ジャックが表彰台に最初に上がってくれて、よかったと思っています。もちろんオリビエを始め、他のドライバーがそうなっていてもうれしいことに変わりはありません。でもジャックは、BAR立ち上げのときからずっと苦労してきましたからね。そして今年は、去年のような元気がちょっと見られなかった。だから彼にとってもチームにとっても、これが勢いを掴むいいきっかけになってくれるんじゃないかと、そう思ってます。

 エンジンの差は、トップの間でそれほど著しい差はないと思います。しかしエンジン屋の心意気としては、やはりエンジンで圧倒的な差をつけてやりたいという気持ちがある。シャシーで勝てないなら、エンジンでやっつけてやれという。もちろん今のレギュレーションでは、それが非常にむずかしいことはよくわかっています。でも不可能ではない。やっていくしかない。新しい技術開発の努力を絶え間なく続けて、パワーを増やしていくつもりです。