HONDA The Power of Dreams
HONDA The Power of Dreams
第3戦 ブラジルGP
HRDテクニカル・ディレクター
西澤一俊のひとりごと
4月3日(火)
「悔しいのと残念なのと、申し訳ないのと」
悔しいのと残念なのと、申し訳ないのと。悔しいのは、何と言ってもオリビエが表彰台を逃したことですね。あくまでチームの戦略に関わることなんですが、あの状況では上位を走っているオリビエの方を、ジャックに優先させるべきでしたよね。ジャックをもう1周走らせるとか、そういうチームオーダーがなかった。
しかもジャックはインターメディエイトを無線で要求しながら入ってきたのに、ウォーマーを開いてみたらフルウェットだった。大慌てでタイヤを換えてる間に40秒も50秒も時間がかかった。その間オリビエは後ろで待たされてたわけですから。
最初の作戦では、ジャック1ストップ、オリビエ2ストップでした。朝のウォームアップでも、最終コーナーからストレートの高速区間で最速を記録したし、ガンガン抜いていけば何とかなるかなと。ところがスタートで止まってしまったハッキネンを避けるために、順位を大きく落としてしまった。これで2回ストップはきついなと思っていたんですが、ちょうどいいタイミングで雨が降ってきた。あれでハンデが帳消しになると喜んだんですけどね・・。上の二人にももっと近づいていたでしょう。
タイヤについて言えば、結果的にはオリビエの履いたノーマルウェットが正解でしたね。ヤルノの履いたフルウェットは、ノーマルと同じパターンなんですが溝が深い。特にリヤがグニャグニャの感触でオーバーがひどくて、まったくペースが上がらなかった。それでハイドフェルドに抜かれてしまったんです。ヤルノも、タイヤ選択を誤っていなければ確実に表彰台に上がれた。
ジャックの早過ぎた最初のピットインは、デフトラブルでした。今のデフは油圧で制御しているんですが、その油圧が抜けてしまって挙動がおかしくなった。それでジャックはパンクチャーか何かだと思って、緊急ピットインしたんです。結局はフェイルセイフ機能を作動させて、その後は何とかゴールまで走れましたが。
それから申し訳ないのは、ハインツ・ハラルドのリタイヤです。電気系のトラブルでミスファイヤが起きて、エンジンが止まってしまった。フリー走行でヤルノのエンジンに起こったのと同じ故障で、サンマリノ用のエンジンをこれから大急ぎで見直すつもりです。ひょっとしたら振動とか熱とかが関係あるのかもしれないんですが、原因はこれから調べます。ジョーダンマシンに集中してエンジントラブルが起きてるんですが、でもシャシーとの関係はないと思います。たとえば去年までのジャックのような固い足回りだと、どうしてもマシンに負担がかかりやすい。でもジョーダンは二人とも、そういうことはないですしね。
今回は、復帰してからもっとも表彰台に近かった。ハインツとヤルノとオリビエと、4人のドライバーのうち3人の誰が表彰台に上がってもおかしくなかったんですから。それだけの力が付いたと考えれば少しは慰められますが、そうは言っても悔しいですよね。やはりレースは厳しいですね。それにちゃんと信頼性を確立させて、フィニッシュできなければゼロなんですから。
前半上位を走っていたモントーヤ、クルサード、シューマッハ。あの3人とわれわれのタイムを比べると、ほぼ1秒遅い。わずかに2回ストップのオリビエだけが、なんとか同じペースで走れた。その違いは、やはり大きいですね。
BARはレースセッティングだと速い。ウォームアップのタイムを見ても、たとえば7番手のオリビエ・パニスは、トップのミハエル・シューマッハからコンマ8秒以内ですしね。でもグリッドが後ろのために、せっかくの速さが活かせない。ここに限らず、そういうパターンですよね。ジョーダンとの差は、やはり経験とデータだと思います。それらに基づいて、クルマを煮詰めていくわけですから。
次のサンマリノに向けては、BARは空力足回りでいろんな改良を施してくる予定です。エンジンに関しては区切りをつけてエボリューションモデルを出すとかじゃなくて、入れられるものを順次入れて戦闘力をアップしていくつもりです。