藤波貴久が本来の実力を発揮して優勝!
チャンピオンの行方は最終戦へ

ステアケースを越えてゆく藤波
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藤波貴久(ホンダ)と黒山健一(ベータ)の一騎打ちの2000年シーズンである。両者が2勝ずつしたあと黒山が2連勝、ふたりのポイント差が6点差となって迎えた中部大会。ふたりの実力は肉薄しているため、残り2戦にしてこの点差は大きい。全日本3連覇を目指す藤波には、あとがない状況での1戦となった。
セクションは、急勾配に多くのセクションが配置され、国際A級スーパークラスのトップライダーでも、一歩まちがえれば下まで一気に転落の厳しいものだった。
前半のセクション群は、テクニカルだがクリーンが可能で、藤波はクリーンを連発していく。ライバル黒山はクリーンするもののあわや減点のシーンも多く、はたして第7セクションで減点3。その後9、10とヒルクライムに失敗して連続5点となった。藤波は第9でこの日初めての減点3。そして10セクションでは5点となるも、1ラップのトータルで15点の黒山に対して9点と、黒山に対して好調の様子を見せている。
しかし1ラップ目にトップに立ったのは、小川友幸(ベータ)だった。小川は藤波が登りそこねて3点となった第9セクションを見事にクリーンし、1ラップのトータルは8点。藤波を1点リードした。
小川のトップを知ってか知らずか、藤波は2ラップ目も前半セクションでクリーンを連発。今度は第9セクションも華麗にクリーンした。さらに1ラップ目に入り口でスタックして動けなくなった第10セクションを、強引に3点で走り抜けた。この10セクションは難攻不落で、藤波以外は抜けることさえできなかったのだ。
この第10セクションで、黒山健一をアクシデントが襲った。最後の登りからマシンが転落し、全開となったエンジンは焼きつきを起こして止まってしまったのだ。残り1時間5分。黒山は動かないマシンをかかえるようにパドックへ持ち帰って、傷ついたシリンダーやピストンを交換、作業時間30分で、ふたたび戦列に復帰した。

クリーン連発の藤波
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残り時間25分。5時間半の持ち時間に遅れた場合は、1分につき1点のタイムペナルティが加算される。しかしそれも、20分をすぎたら失格となる。黒山は、45分で1ラップと2セクションを残した黒山は失格となってしまう計算だ。失格になれば、黒山はチャンピオン争いからは事実上脱落することになる。
モトクロスばりの超特急で第11セクションに戻ってきた黒山は、即座にセクショントライを開始。むずかしいポイントは躊躇なく足をつき、だめだと思ったらその瞬間にマシンの向きを換え次のセクションへ向かうという徹底した時間節約走法。2ラップ目を1ラップと同じ15点で終えた黒山は、そのまま残り時間15分で3ラップ目に向かった。
この3ラップ目、黒山はこの日自己最高のラップ8点を叩きだした。焼きつきから再生したエンジンで、しかも時間が極端にない中での成績だから、これは最高のできばえだった。
一方藤波は、黒山がエンジントラブルで視界から消え、のびのびとトライ。2ラップ目には、この日のベストスコアの7点を叩き出して、小川からトップの座を奪いとっていた。
結局、藤波は26点で優勝。調子のいいときには中盤から終盤にかけて崩れてしまう傾向のある小川はよくふんばって33点。猛ダッシュで3ラップ目を駆け抜けた黒山は、減点8ながら8分のタイムオーバーをおかしてしまい、減点38点にタイム減点8点、トータル減点46点で3位となった。
ランキングポイントは、トップ黒山129点に対して藤波128点。わずか1点黒山リードで最終戦を迎えることになったが、これは最終戦で優勝したほうがチャンピオンを獲得することを意味している。稀に見る実力拮抗の今シーズン。最終戦東北大会は、宮城県菅生スポーツランドで、10月22日に開催される。
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表彰台の中央に優勝の藤波
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観衆が藤波の走りを見ようと追いかけた
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藤波 貴久(優勝)
自分の実力を発揮できたと思います。前回の近畿大会で勝てなくて、今年のチャンピオン争いの崖っぷちに立たされました。それで練習方法もトレーニングの方法も、もう一度見なおしてやってきました。その成果が、きちんと出せたと思います。健ちゃんが2ラップ目にエンジントラブルを起こしてからは、正直ほっとしたのは事実です。それで気持ちもリラックスして、いい走りができたと思います。1ラップ目にトップだった小川さんのことは、マークしてはいましたが、小川さんの点数が思ったよりもいいのは、試合が終わってから初めて知りました。
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