今季一番の難セクション
藤波貴久はリズムにのれず、黒山健一に惜敗

急斜面を上ってジャンプする2位の藤波
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2000年全日本選手権も終盤戦に突入した。世界選手権の全スケジュールが終了し、藤波貴久を始め、ライバルの黒山健一(ベータ)らは、全日本に専念できる体制が整って迎えた近畿大会。ここは、黒山健一の地元でもある。
前日から早朝にかけて、激しい雨に見舞われはしたものの、当日朝には雨もあがって、国際A級スーパークラスのトップライダーがトライを始めるころには、雨あがりの太陽がまぶしいほどの好天気になった。しかし地面は、それまでに降った雨でたっぷり水気を含んでいて、おまけにスーパークラスのラインはそれまでに誰も走ったことがないラインが多く、岩も苔むしたものが多く、ライダーたちの苦戦が予想された。
しかしスーパークラスのトップライダーたちの走破力は、さすがに高い。セクションを設定した山本昌也(元HRC契約ライダー・1982〜1986年5年連続全日本チャンピオン)も「このセクション設定では誰も抜けられないのではないか」と心配するほどだったが、藤波貴久らのトップライダーは、こんな難セクションをすいすいとクリーンしていく。
いつもなら、このまま藤波と黒山のクリーン合戦となるのだが、しかし今回は様子がちがった。フカフカの土の斜面は、一瞬タイミングをはずしただけでマシンの前進を阻んでしまう。セクションには、そのフカフカ斜面の先に大岩が待ちかまえている。斜面で一瞬グリップを失うということは、岩に登れずセクション失敗を意味する。

難易度の高いセクションを下見中
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トップライダーが、最初に減点を喫したのは、沢に入っての第3セクションだった。湿った斜面を登り降りするこのセクションは、スーパークラスのほとんどすべてのライダーが5点。黒山がようやく3点で抜けたと思えば、藤波はここを1点で通過する。しかし続く第4セクションを藤波1点、黒山クリーンで通過した後、この日のターニングポイントである、第5セクションとなった。前半の険しい三段岩からいったん沢に降り、直角にそそり立つ大岩に飛びつく。黒山はここで3点を喫するが、なんと藤波は最後の岩にのることができず転落してしまった。
その後黒山にも5点減点があり、1ラップを終えた時点では藤波16点、黒山17点。この減点は、3点や5点をとりながらも、ふたりが真向かう、し裂なトップ争いを現わしていた。
藤波の不幸は、2ラップ目も5セクションで訪れた。ここでふたたび岩に登りそこね、藤波は減点5。さらに藤波は、ヒルクライムの第7セクションでも登りきれずに減点5となり、2ラップ目に23点を数えてしまった。このラップ、黒山はまたも17点、藤波は5点のリードを許して最終ラップに突入することになった。
3ラップ目、藤波のペースはまだ元どおりにはなっていない。第3セクションでも5点を喫したうえ、最後の第5セクションでまた失敗。さらにこのときには、マシンがもんどり打ってひっくりかえり、しかもマシンが沢底までころげ落ちた。3ラップのすべてで、同じセクションの同じポイントが通過できずというこの失敗は、藤波の必勝ペースに微妙に狂いを生じさせていた。
3ラップ目、ふたつの5点をはじめ、藤波の減点は16点。後半、藤波の視界の中でトライするのをきらった黒山は、なんと13点と、さらにスコアを縮めてきた。トータルでは黒山47点に対して藤波55点。藤波の、完全な敗北だった。
黒山はこれで2連勝。シーソーゲームの均衡が、初めて破れた。全日本ランキングでも黒山は藤波を6点リードした。このふたりをおびやかすライダーは皆無であることを考えると、6点のランキングポイント差は残る2戦で藤波が2連勝した場合に両者が同点となるものだ。ポイントが同点の場合は、最終戦で成績のよかったものがチャンピオンとなる。藤波は、もう負けるわけにはいかない。
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グリップの悪い沢のセクションを行く藤波
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表彰式、2位の藤波貴久(中央)
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藤波 貴久(2位)
なさけないとしかいいようがないです。調子はけっして悪くなかったのですが、試合のリズムをつくろうというときに第5セクションで失敗してしまい減点5。これでリズムを崩して、また復活してきたと思ったら今度も第5セクションで減点5。第5セクションは結局3回とも5点となり、3ラップ目にはマシンも落としてしまい、これですべてが終わったという感じです。これでランキングもリードされて、崖っぷちに立たされてしまいました。残る2戦はもう勝つしかないし、必ず勝ちます。
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