藤波貴久、惜しくもオールクリーンと優勝を逃す

大橋の下、最終セクションでテクニックを披露する藤波
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第4戦北海道大会からわずか2週間後、広島県三次市に近い吉舎町で、全日本第5戦中国大会は開催された。会場は、まもなく完成するという灰塚ダム地域を舞台としていて、大会は吉舎町と建設省江の川総合開発事務所を後援とする。
かつて町の人の生活があったと思われる地域に、10個のセクションが比較的コンパクトに設営されていた。前回関東大会とは一変、観客の移動距離も少なく、観戦は容易だった。反面、トライアルらしいダイナミックな自然との戦いの場面が、少々物足りなかった傾向も見られた。
いつものように多くの観客をひきつれて、藤波貴久(ホンダ)と黒山健一(ベータ)ら、トップライダーがセクションをこなしていく。藤波、黒山、そして成田匠(ヤマハ)、小川友幸(ベータ)は、そろって第5セクションまでをクリーンする。トライアル・デ・ナシオン出場が決まっている田中太一(ベータ)が3セクションと4セクションでイージーミス、2点を失い、好調の16歳、渋谷勲(ガスガス)が5セクションで1点減点。勝負は、1点の減点が致命的となる極端な神経戦で争われていた。
第6セクション。最初に崩れたのは成田だった。崩れたといっても、ほんの少しのミスとアンラッキー。しかしそれで失った3点は、勝利を失うに充分な減点だった。この6セクションでは渋谷がさらに1点減点を喫した。

第4セクションをいく藤波
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そしてなんと、藤波貴久がここで減点! それも、最初のオブザーバーの判定では5点という大失点。藤波の申し出に判定は2点と改められたが、それでも2点減点の意味するところは大きい。これで、オールクリーンを続けるのは黒山と小川のふたりのみ。藤波は、3戦続けて1ラップ目のミスでライバルを追う展開を強いられる。ライバルを追うといっても、藤波はオールクリーンを続ける以外に策はなく、ライバルの減点待ちという戦況だ。
1ラップ目第8セクション。長い長いヒルクライムで、小川のエンジンがトラブル。トップライダーの中では唯一といっていい第8セクションでの減点5、しかもトラブルを起こしたエンジンを修復して、だましだましのトライとなるだけに、小川はここで優勝争いから脱落していったといっていい。
1ラップを終えて、黒山がオールクリーンで0、藤波と渋谷が減点2、4位に減点3の田中が続き、減点5の小川が5位。成田はさらに減点5を加えて8点と、1ラップ目を終えた時点では6位に沈んでいた。
しかし2ラップ目以降、トップライダーは軒並みオールクリーン。黒山、藤波、田中、成田の4人が、2ラップ、3ラップをともにオールクリーンで終えてしまった。こうなると、勝負は1ラップ目の減点だけで決まってしまう。渋谷は細かいミスと、2段岩でのミスで手痛い減点5を喫して、3位の座からラップを追うごとにポジションを落とし、最後には5位に落ちついた。小川は、3ラップ目の第2セクション、ほとんどのライダーがクリーンしているポイントで減点5。この日の小川は、歯車が完全に狂っていたようだ。
早めに試合を終えていた藤波に届いたのは、黒山のオールクリーン達成のニュース。それはもちろん藤波の敗北を意味するのだが、それは1ラップ目の第6セクションで、すでに決定されていたといってもよかった。
この結果、前回北海道で同ポイントに並んだ藤波と黒山は、三度順位が変わることになり、現在は91点の藤波が94点の黒山を追う状況となっている。
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デ・ナシオン資金の基金のためのサイン会
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最大のライバルにして良き友人の3人
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藤波 貴久(2位)
なさけないです。2点減点となってしまったところは、百回いって百回クリーンする自信があります。でも、試合でできなければなんにもならない。簡単なところで、気持ちを極限まで集中させることと、1ラップ目にミスを出さないこと、それがぼくの課題ですね。今回は、負けたから言うわけではないですが、セクションが簡単すぎました。
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