黒山健一が藤波貴久の連勝をストップ
藤波はわずかな気の乱れで初戦を落とす

ヤマメの住む清流を大岩をつたって渡っていく藤波
|
ここ数年恒例となった九州での全日本初戦。会場となった矢谷渓谷は緑に包まれたキャンプ場で、深い森と美しい沢がトライアルの舞台となっていた。会場には地元のアナウンスや雑誌の紹介記事でトライアル大会を初めて知った観客が1000名あまり集まり、日本のトップクラスのライディングに見いっていた。
1999年に全勝優勝して2年連続チャンピオンとなった藤波貴久は、その8連勝記録をさらに伸ばし、勝ち続けることに意欲を燃やしていた。一方ライバル黒山健一は、昨年1月に負った両手首骨折の療養(最初の手術のあと、ボルトを抜くなどの手術でシーズン前半と後半の2度に渡って欠場があった)から復帰。試合への出場は約半年ぶりだが、練習では以前の力量を上まわっているという黒山と、ナンバーワンの座を防衛すべき藤波との対決が、大きなハイライトとなった。

滑る斜面と苔むした大岩に挑む藤波 |
土曜日の雨でコンディションが悪化したことなどが考慮され、3ラップが2ラップに変更された今大会、1ラップは10セクションだから、比較的セクション数は少ない部類となる。
1ラップ目、第2セクションで黒山はあわや転倒の3点を喫す。ここを藤波は1回の停止で切り抜け1点。クリーン合戦のこのふたりにとっては、この点差は試合の流れをかなり決定づけるものといってよかった。彼らふたりの戦いに割って入るべき小川友幸は最初のふたつのセクションを連続5点で優勝争いから後退、田中太一も好調ながら、細かい減点があって、やはりふたりの戦いには、徐々に点差をつけられていった。
藤波は3セクションから6セクションまでを続けてクリーン。対する黒山は1点と3点があり、いよいよ勝敗は決定的かに思えた。しかし、今大会の運命を決定づけたのは、その後の第7セクションだった。ここで藤波は、滑る木の根にラインを乱され、ステップに木の枝をひっかけ、突然前進を止めてしまって5点。あとで思えば本人も認めるように、まったくのケアレスミスの失敗だった。

小学生時代から遊んだ仲のいい3人
|
この5点で、藤波と黒山の差は、一気に縮まった。とはいえ、わずかながら藤波リード。ところが藤波は、ここで“負ける”と思ってしまった。それが、その後の藤波をがらりと変えてしまった。最終10セクションから2ラップ目の5セクションまで、なんと6セクション連続で1点の減点を喫した藤波は、これで黒山に逆転を許してしまった。
6セクションでクリーンし、やや調子をとり戻した藤波は、先を急ぐ黒山を先行させてじっくり自分のトライをしながら、最逆転のチャンスをうかがう。しかしリズムをつかんだ黒山は1ラップ目に見せたあわや失敗のトライも見せず、手堅く2ラップ目をまとめてゴール。
終わってみれば、たった1点の差ではあるが、黒山健一の優勝ということになっていた。
藤波 貴久(2位)
1ラップ目の9セクションの5点がすべてでした。あれで負けを意識してしまって、しかもそこで気持ちを入れかえることもできず、そのまま調子を崩してしまった。採点などに若干の不満もありましたが、それより、本来なら完全な勝ちパターンだった試合で負けてしまったことがくやしい。もうこんなことは2度とないようにします。あぁ、しかしくやしい。
|