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レポート:柴田久仁夫     

 
 
第15戦 アメリカGP

(株)本田技術研究所 マネージング ダイレクター
保坂武文のひとりごと 

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 9年ぶりのアメリカGPは、BARとジョーダンが見せ場を作ってくれましたね。トップはシューマッハの独走でしたが、3位争いは最後まで激しいバトルが続きましたから。20万人以上の大観衆の前で、ホンダエンジンを積むマシン同士があれだけのパフォーマンスを見せてくれて、たいへん満足しています。

 もちろんBARホンダとしては、すぐ目の前に見えていた表彰台に結局届かなかったことは、悔しいですよ。直線スピードが伸びずに、唯一のオーバーテイクポイントであるあそこで抜くことができなかった。BARとジョーダンとの、セッティングに対する考え方の差が出たということでしょうね。

 BARは、レース中に必ず雨が降ると見ていた。あるいは少なくとも、レース中盤までは路面がウェットと見ていた。そのためダウンフォースを増して、インフィールド重視のレインセッティングでレースに臨んだんです。結局その予想は外れてしまいましたが、そんなハンデキャップにもめげず、ジャック・ビルヌーブは本当に果敢に攻めましたね。結局コースオフしたために、フレンツェンを抜き去ることはできませんでしたが、あの65周目のブレーキングはまさにジャックならではの、ファイティングスピリットを感じました。

 ジャックはやはり、かつて自分が500マイルレースを制したサーキットということで、かなり燃えてましたね。レース中2回もスピンしたりして、「あまり攻めすぎるな」とピットから静めたくらいでした。でも観客は満足してくれたでしょう。来年も同じように超満員になるといいんですが。でも正直言って、最初からここまでお客さんが来てくれるとは思いませんでしたよ。

 ジャックの4位入賞は、当然うれしいです。でもそれと同じくらい、リカルドが完走してくれたことを喜んでいます。実はスタートして5周目に、彼のクルマのECU(電子制御ユニット)が突然止まってしまったんです。モンツァの決勝でのジャックや、今回土曜日にリカルドのクルマに起きたトラブルとほぼ同じ種類のものでした。

 万が一に備えて、土曜の晩にうちのスタッフがバックアップシステムを強化していた。そのおかげで、トラブルが起きた瞬間そちらのシステムに切り替わって、走りつづけることができたんです。あっという間でしたから、リカルドは気付いていないでしょう。ただそれがレース序盤だったので、ひょっとしたらその後も再発するんじゃないかと、気が気じゃなかった。それだけに、彼の6位入賞がいっそううれしいんです。

 電気系のトラブルというのは、実にやっかいでしてね。原因を突き止めようと同じ条件で再現を試みても、全然なんともなかったりするんです。おそらくECU内のハンダ付けの部分に問題があるんじゃないかと踏んでるんですが、その部分だけでも1500箇所くらいのチェックポイントがある。それをひとつずつ潰していくのは、気の遠くなるような作業です。でも絶対にやらなければならないことですからね。

 次のレースがスズカだから、なおさらです。我々にとってこのGPはやはり特別なレースです。信頼性、パフォーマンス、それをできるだけ高いレベルで両立させて、最高の成績を上げたい。そのためにエンジンはスズカ用のスペシャルバージョンを投入しますし、シャシーもいくつか改良パーツがデビューするはずです。

 残りあと2戦となって、来年のマシン開発もすでに始まっている今は、多忙を極める時期です。でもBARとの1年目に、ぜひ有終の美を飾りたいですね。