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CB1100

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CB1100 耐久1000km試乗
自然体で味わえる懐かしい回転感
IMPRESSION

表情豊かな低回転フィール

 高性能を追い求めず、常用域での性能を自然体で味わう。外観は、ヘッドライトからタンク、エンジン、スチールのリヤフェンダーやテールランプに至るまで、それぞれが存在感を持つ、スタンダードなバイク然としている。そうした方向性で造られたのは、既存のビッグネイキッドも同様かもしれないが、CB1100はどこかが違う。今までありそうでなかった何かがある。それはどこかと実物を見ると、まずは端正なのに主張の強い空冷エンジンの造形に感じられるし、またがってみてさらに実感できるものだった。
 全体的に低重心にまとめられた車体は、引き起こしの苦労はなく、またがれば両足はべったりと接地する。そしてハンドルは自然に手を伸ばした位置にあるのに、威風堂々とした雰囲気を味わわせる形状だ。ステップの位置も適性で、ヒザの曲がり具合もちょうどよく、スポーティにもリラックスムードで走ることもできる。なによりCBが独特だと感心するのは、1100ccもあるバイクなのに大きさを主張しないことだ。シートの低さや堂々としているのに大柄でないハンドル、燃料タンクが意外にスリムなことなどが、乗り手を威圧しないせいだろう。
 3月初旬の試乗会でチョイ乗り程度はしたが、それでは本質がつかめない。早速本誌お得意の耐久1000km試乗に連れ出すことになったが、前述のようなわけで何ら気兼ねなく出発した。チャキチャキと気持ちよく動かせる節度のあるシフトペダル、適度な握り代があってジワジワと効力の立ち上がっていくブレーキはコントロールしやすく、適度な反力のクラッチレバーをミートすると、空冷直4のエンジンは乗り手を驚かさない程度に頼もしくジワッと立ち上がり、車体をスルッと進ませる。すべてがなじみやすく、これなら扱える、上手く操れるという気分を乗り手に感じさせてくれるのだ。
 いつもの耐久試乗のように、早速首都高に乗る。目指すはおなじみの伊勢方面だが、今回は少し距離を多めに稼ぐべく中央道経由で行くことにする。天候は優れず、4月というのに気温はひとケタ(途中の諏訪で雪もパラつく始末)。重量級高性能モデルだと疎ましくもなる状況下だが、CBではそうした気分にならない。低中速重視のトルク特性という88psの直4は、悪天候下でも乗り手を安心させるように回り続ける。トップ5速のメーター読みで100km/h≒3400rpm、120km/h≒4100rpmと増速するエンジンは十分な粘りを持ち、トップギヤの2000rpmそこそこからでも実用加速を開始する。
 そして特筆すべきは2500〜3500rpmの間の柔らかな感触の回転感とジワッとしたパワーの立ち上がり方だ。少し大きめの開度を持つスロットルをグッと開けるのと同時に、弛緩していたゴムがピーンと張られてから解き放たれたかのように、エンジンがレスポンスする。たとえが難しいが、一瞬の間があってから立ち上がるような低回転からの回転上昇が、レスポンスが至上のバイクばかりとなった現在の直4にない絶妙な味わいだ。そして、前述の回転域で感じられる、どこかサラッともザラッともつかない懐かしい直4の回転感も、ゆったりとした昔の直4風を演出していて、乗り手をほっとさせる。
 トルクピークの5000rpmから最高出力発生回転数の7500rpmまではフラットに回り続けるだけで、ドラマチックな盛り上がりを見せるわけではないが、無理のない回り切り感で速度リミッターのかかる領域まで到達しそうだ。高速制限速度を上回るような速度域での車体も、直進安定性は不満がなく、着座位置がそもそも低いせいか風圧もそんなに苦ではない。大きな継ぎ目や凹凸のうねりを通過するときなど、高速であればあるほど、リヤショックから割と大きな突き上げを感じる場面はあるが、それも許容できるレベルだ。つまり80〜120km/hといった、日本の高速道路で突出しない巡航速度で、CBはストレスを感じさせず流し続けられるのだが、出発から170kmを超えたところで燃料残量が気になり初めて給油休憩となった。

日本の長旅に向く潜在力

 再び走り出しても、CBは淡々と巡航でき、飽きない。一般道でも高速でも、路面を滑るように流す。排気音は十分に消音されていて風切り音のほうが上回るくらいだが、スロットルを開ければジワッと反応しながら十分以上に車速を上げ、その中に微妙に懐かしいザラっとした成分が混じってエンジンが「ここに居ますよ」と、存在を主張するかのようだ。前後18インチ径のホイールも軽やかだが安心感のあるもので、時折周囲の風景を目にしつつそこはかとない直4の味わいにひたって距離を稼げる。悪天候の中でも、鼻歌が出てくるような平穏さが常にあり、目を三角にして走るのでも、もくもくと耐えて走るのでもない、こういう耐久1000kmも久しぶりのように思った。
 2日目の伊勢志摩スカイラインのワインディングは降り始めの小雨で、路面はわずかに濡れ始めていた。タイトコーナーと中速コーナーで組み合わされるアップダウンの多いルートだが、そこでもCBは度を超えない速度で、十分な刺激と味わいを見せる。低中回転のジワッとしたパワーの立ち上がりに追従するおっとりした自然なハンドリングで、切り返しは十分素直ながら軽い手応えがあり、リヤステアで前輪の舵角が自然と決まるような乗り味がまた懐かしい。

 自分の体格(173cm)だと、あと2〜3cm高くても具合がいいかなと感じる着座位置だが、前述のようなリヤステア感のあるハンドリングゆえ、シートが低くても旋回性に疑問を感じることはない。そこにはよく練られたパワー感の空冷直4と、素直でどこか懐かしいハンドリングを味わう、ゆったりとしたスポーツ性があるのみだ。
 帰路はいつものように、間もなく運行終了となる伊勢湾フェリーを利用し、伊良湖から国道42号線を淡々と流して東名高速経由で東京へ向かった。
 耐久1000kmがつらくもなく飽きもせずこなせる、そんな性能をCBは常に味わわせてくれたが、私の唯一の疑問は、給油回数の多くならざるを得ない燃料タンク容量だった。リッタークラスの直4モデルに14Lでは、仲間とツーリングに行けばひとりだけ先に給油せねばならない場面もあるだろうし、雨で止まるのがおっくうな今回の状況下では、200kmに満たない距離で残量警告が出ることが少々恨めしかった。
 エンジンの存在感とソリッドなフォルムのバランスを吟味し、タンクの造形(容量)を決めたことに疑いはないが、ロングライドで飽きない性能を持つ同車にとって、この容量は残念だ。タンク幅や高さをあと20〜30mm拡大したところで(容量的には最低でも+3Lは欲しい)、CB全体のフォルムを損なうことにならないと思うし、それによってツーリングのための使い勝手が上がるならば、何も問題はない。そう思えるほどにCB1100は空冷スタンダードの格好よさだけでなく、どんな状況下でも日本の土壌に見合ったツーリング性能を味わえる中身のよさを持っているのだから。

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