思い出の名車コーナートップへS800トップへ

タイトル

S800物語

HONDA SPORTS S800

アイコン

クルマ好きなら誰でも知っている、
いまや伝説のスポーツカー。
それがホンダS800。

「世界に類の無いものをつくろう」───これは、いつも、ホンダのスローガンだった。 ホンダが自動車メーカーとして最初につくった乗用車は、まさにそんなクルマだった。 それは、日本ばかりか、世界にも例の無いメカニズムを持つ小型スポーツカーだった。 そしてホンダS800は、このホンダスポーツ・シリーズの究極というべきモデルである。

■S800の生い立ち。
フルネームは、ホンダS800。でも、このクルマを知る人は、そんな呼び方はしない。 もっと親しみをこめて「エスハチ」と愛称される。だが、この「エスハチ」の前に、 「エスゴ」と「エスロク」についても語らねばなるまい。

1962年の10月、第9回全日本自動車ショーに、ホンダスポーツ360/500が、センセー ショナルなデビューをとげた。 排気量は僅か356cc/531ccながら、 グランプリカーを 思わせる精密そのものの4気筒DOHCエンジンを搭載していた。そして、翌1963年7月 のスポーツ500の新聞広告“価格当てクイズ”には全国から573万通余りの応募があり、 当選発表時の広告に掲載された価格は、おおかたの予想をはるかに下廻る459,000円。 スポーツ500は、 画期的な低価格で日本中の話題をさらったのだ。 1963年末の発表時には、正式呼称がホンダスポーツ500から「ホンダS500」に改称されて いる。軽自動車規格のスポーツ360は市販に至らなかった。

翌1964年3月、早くもその発展型のホンダスポーツS600が発売された。この年の5月 に鈴鹿 サーキットで開催された<第2回日本グランプリ>のGT-1レースで優勝したS600は、 そ の性能でさらに人気を集め、 当時の若者のあこがれのクルマになって行く。 同じ1964年の9月、S600はドイツの<ニュルブルクリンク500km>耐久レースに初出場し、 並みいるヨーロッパの強豪車を破って1000ccクラスで優勝、 ホンダスポーツの評判は 自動車先進国に広まった。 2輪車ばかりか、4輪車でもホンダの名は世界に高まった。

続いて、 いよいよ「エスハチ」が登場する。

1966年1月、Sシリーズはついに「ホンダS800」へと進化し、絶頂期を迎える。路上だけ でなく、モータースポーツの恰好の入門車としても圧倒的な支持を集め、数々の国内 レースで大活躍を続けた。当時発展途上にあった日本のモータースポーツを底辺から 支える役も果たしていた。

そして1970年5月、最後のS800が生産ラインを離れるまで、すばらしいスポーツカー であり続け、現在なお世界中に熱烈なファンを持つ伝説のスポーツカーとなったのだ。

■S800のテクノロジーとパフォーマンス。
何と言っても、エンジンである。このような量産小型スポーツカーで、これほど凝り に凝ったエンジンを搭載するクルマは、当時どこにも無かった。モーターサイクルの 世界グランプリを制覇していたホンダが、ホンダスポーツのエンジンに注いだ技術は ケタ外れに高度なものだったのだ。ボンネットを開いた時のエンジンルームの眺めは 今の眼にも魅力に溢れる。水冷4気筒DOHC。見るからに、精緻で美しく高性能を思わ せる。そして4連キャブレター。4本のエキゾーストマニフォールド。 組立式のクラ ンクシャフト。これを支持するニードルローラーベアリング。ホンダが得意としてい た高回転高出力のための技術がぞんぶんに駆使されたこのエンジンは、 排気量791cc で70PS/8,000rpmというずばぬけたパワーを発揮した。

フロントサスペンションは、ダブルウイッシュボーンにトーションバー・スプリング。 リアサスペンションは、S500からS800の初期まではチェーンドライブ機構のケースに トレーリングアームを兼ねさせるユニークなもの。のちにこれはライブアクスルへと 変更された。

スタイリングもS800の魅力だった。しかも、小柄ながら、そのコックピットは不思議 なほどどんな体格のドライバーにもピッタリだった。3本スポークのスポーティなス テアリングホイール、大きなタコメーターとスピードメーター、 セミバケットシート、 全てにスポーツフィーリングいっぱいだった。 S500時代にはオープンボディのみだっ たが、S600時代にクーペが加わり、 S800もオープンとクーペが用意されていた。

さらに、 その走り。 ホンダスポーツで、 初めてスポーツカーのハンドリングを知って 目のさめる思いをした人が、 当時、 どれほど多かったことか。 間髪を入れずアクセル ワークに反応し、 際限ないかのようにいっきに吹き上がるエンジン。 カチカチと小気 味よく決まるギアシフト。 キビキビ感そのものの操縦性。 どれもがそれまでの日本車 にない、 新鮮なパフォーマンスだった。 S800の0〜400mは16.9秒。 最高速度は160km/h 。
この頃の世界の小型スポーツカーに比べても排気量は最も小さかったが、 その性能は 断然トップクラスにあった。

ホンダスポーツは、 日本のみならず世界の自動車史に残るヒストリックカーであろう。

■ホンダS800諸元表

L×W×H(mm) 3,335×1,400×1,200
WHEELBASE(mm) 2,000
TREAD(mm) 1,150(F) 1,128(R)
CURB WEIGHT(kg) 720
ENGINE water cooled inline 4
VALVE/CAM DRIVE chain train DOHC
DISPLACEMENT(cc) 791
BORE×STROKE(mm) 60.0×70.0
MAX POWER(PS/r.p.m) 70/8,000
MAX TORQUE(kg-m/r.p.m) 6.7/6,000
CARBURETION SYSTEM CVB36N30A1 4 carb
LUBRICATION SYSTEM circulate & splash pumpted
TRANSMISSION 4 speed & reverse
FRAME TYPE ladder
SUSPENSION(F) double-wishbone torsion-bar
SUSPENSION(R) live axle coil-spring
TIRE SIZE(F) 6.15-13
TIRE SIZE(R) 6.15-13
BRAKES(F/R) leading trailing drum
PRICE \653,000


思い出の名車コーナートップへS800トップへ